2021年10月に読んだ本まとめ
寝る前にポップインアラジンでたき火の映像を映しながら本を読んでいます。集中して読めるし寝付きも良くなるので良い感じです。
地下シェルターに閉じ込められた男女4人。追い詰められた彼らは、3か月前に起きた事件の真相を話し合う――。
ユニークな設定と綿密なプロットにグイグイ引き込まれて、後半は睡眠時間を削って一気に読んじゃいました。こういうクローズドな空間で今ある情報だけを頼りに真相を明らかにしていく作品、大好きなんですよね。今年読んだ本の中で2番目に面白かったです。(1番は「どちらかが彼女を殺した」)
アベプラでイケてるコメントをしてくれる若新雄純さんの本。
古い社会システムを「合理的正しさ」で一気に変えることは難しいし、争いも生まれる。それなら、システムを「ゆるめる」ような実験的活動(ゆるい就職・NEET株式会社・鯖江市役所JK課…等)によって、新しい解決策を模索してみようよーという提案が書かれています。
考え方がめちゃくちゃ好きだったので、自分なりに要約してまとめてみました。力まずに世の中を変えていけたら良いですよねー。
幸福の正体は、セロトニン(心と体の健康)、オキシトシン(つながり・愛)、ドーパミン(成功・お金)という3つの脳内物質で、この3つを順番に手に入れていくことが安定した幸福に繋がると主張する本です。
「今の幸福に気付こう」「自分からコミュニケーションを取ろう」「結果ではなく、プロセスにあるちょっとした幸せを噛み締めよう」「ドーパミン的幸福は、適度に制限しよう」みたいな、一見当たり前のことが3つのカテゴリに分けられて説明されているので分かりやすかったです。「幸せに気付く能力」はトレーニングで高められるっぽいので、今日あった良かったことを振り返るよう意識してみたいと思います。
『「読まなくてもいい本」の読書案内』で、脳科学を理解するのにオススメの本としてこちらが挙がっていました。興味深かったポイントをいくつか書いてみます。
・生まれながらに指が4本の人がいた。その人の脳は指4本分の神経しか形成されていない。しかし、分離手術で指が5本になると、1週間後には5本目の指に対応する場所ができていた。脳は体に合わせて発達することができる。人間の体がもっと複雑なら、人間の脳はもっと違う使われ方をしていたのかもしれない。
・人間は「体を動かそう」と意識するより前に、脳が無意識に「体を動かそう」としている。(「意識」より先に「運動前野」が反応することが実験で分かっている。)人間は自分の体を自分の意識でコントロールしているつもりになっているだけで、自由意志は潜在意識の奴隷にすぎない。
・危険があると「偏桃体」によって回避できる。危険を見て「こわい」と思うのは「大脳皮質」の領域。つまり、「こわい」から逃げるのではなく、危険があることを「偏桃体」が判断して逃げている。
「危険→こわい→逃げる」は間違いで、「危険→逃げる」「危険→こわい」が並列で行われているのが正解。
・人間の記憶は「あいまい」だから、物事の共通点を見つけ出せる。記憶が完璧だと物事を1枚の絵として捉えてしまい、少しでも変化するとそれの同一性を見失ってしまう。Aさんを正面から見ても右から見ても、無表情でも笑っていても、昨日と違う服を着ていてもAさんだと分かるのは、Aさんの重要な特徴だけを覚えていて、それ以外は忘れてしまっているから。
「人間の脳すげー!」という驚きと、人間らしさ(自由意志や感情)って結構あいまいなものなんだ…というスリリングな知的興奮がありました。
そういえば、少し前に読んだ「息吹」という小説はこのあたりのテーマに深く切り込んでいたんだなーと今になって気付きました。こういう、点と点が繋がって線になる感覚があるから、読書って楽しいんですよね。
格差拡大、AIによる雇用の消失が話題になる近年。解決策としてベーシックインカムの導入が議論されるようになってきました。その辺りのことをもう少し詳しく知っておこうと思い、チョイス。
制度、財源、貨幣、思想の観点からベーシックインカムの利点と導入時の障壁となるポイントがよくまとめられていて、勉強になりました。
第4章では、AIの普及により中間層の仕事が減って貧困層が一番のボリュームゾーンとなるというショッキングな予測が書かれていますが、ベーシックインカムによって経済成長しつつ貧困を救うことが可能であると説明されています。
第5章では、日本にベーシックインカムを導入する際の障壁として、「社会のために~すべき」という「儒教的エートス」の存在が挙げられています。みんなにお金を配るのが合理的な政策だったとしても、怠け者が働かずに暮らしていくことを日本社会が許容出来るのか? というクリティカルな問いが投げかけられ、筆者は次のように反論しています。
「労働意欲の欠如は、ハンディキャップ(障害)の一種として捉えられないだろうか。怠け者になるかどうかはほとんど遺伝と環境で決定される。ならば、障害者や重い病気の人と同様に怠け者にも最低限の救済がなされるべきではないだろうか。
哲学者ジョン・ロールズは”無知のヴェール”という思考実験を行った。あなたが生まれる前の魂だったとして、どの妊婦の胎内に宿るか分からないとする。金持ちの元に天才として生まれるかもしれないし、貧乏家庭の元に無能として生まれるかもしれない。その場合、生まれた先の社会がどんな制度だったら良いだろうか? という思考実験だ。こう考えると、苦しい境遇(労働意欲の欠如を含む)に生まれたときのために、最低限の社会保障が必要だということにならないだろうか。」
私は以前に「能力は運で決まる」問題を考えるで書いたように、遺伝と環境が人に与える影響がめちゃくちゃデカいことを知っています。なので、筆者の主張にはかなり賛成しました。
現状の社会制度だと条件に合致した人しか福祉を受けられないので、すごい不運が重なっているのにたまたまその時代の社会制度と合致しなかったために何の福祉も受けられないというケースが生まれます。社会から認められる障害は救済されて、社会から認められない障害は救済されないというのは、”無知のヴェール”で考えると理不尽な話ですよね。
あとがきのメッセージがなかなかユニークです。