東京の田舎もんが落ち着く喫茶。原宿・竹下通りど真ん中「Repi Doll」
15時からの予定の前にランチがしたくて地下鉄で最近ハマっている喫茶店をググる。JR原宿駅から徒歩3分。竹下通りの中間あたりに喫茶店を見つけた。
竹下通りは筆者が初めて単身で東京に行ったときに訪れた場所であり、キラキラと華やかで東京の若者があふれている印象の場所。そんなところに落ち着いた喫茶店なんてあるんだろうかと思いつつ足を向ける。東京はもう5年目になるが、原宿を表面的にしか見てこなかったようだ。竹下通りのなかでもとりわけわたあめの甘~い香りがする場所にその喫茶店の看板を見つけた。
原宿の喫茶「Repi Doll」は2階にあり、隣には一時よくメディアに出ていたカラフルで巨大なわたあめ屋さんがある。最近は流行りが終わったのかあまり人が入っていないようだった。
誰もいない落ち着いた店内
店にはいると客は誰もいない。土曜日のお昼過ぎだし、竹下通りはにぎわっているというのに。店内は竹下通り側が一面窓になっていて日が入っていて明るい。壁には大きな鏡があり広々としている。奥から小柄な女性が「いらっしゃいませ」と出てきた。「1人です」というと、「どこでも好きな席に」とのことなので好きな席に座る。
店内が眺められそうな4人掛けの丸テーブル。テーブルには小さなコップにお花が生けられている。そっと庭から積んできたような小さなお花とミントのような葉。原宿という人が集まる場所にありながらこういう飾っていない雰囲気に好感が持てる。
メニューはドリンクが中心だが、おなかが空いているのでランチセットをいただいた。カレーやリゾットがあったので何となく気分で『シーフードリゾット』を注文。サラダとコーヒーもついてくるらしい。
お母さんの味?なんか懐かしいランチ
先日映画を観て大好きになった作品、山内マリコさんの『あのこは貴族』の文庫本を読みながらランチを待つ。田舎からでてきた女性が正月に帰省するときの憂鬱な感情にとてつもない共感を覚えた。誰もいない静かさは読書が進む。
最初に出てきたのはサラダ。普通のサラダだが、丁寧にフォークやナプキンを丁寧に並べられると少しぜいたくな気分になる。店員(店主?)の女性はとても丁寧な手つきで私の前にきれいに並べた。飲食店のバイトをしていた経験のある私は店員の手つきでだいたいの飲食慣れがわかる。かなりのやり手……のはずだ。
サラダのドレッシングを選べたからごまドレッシングを選択したのだが、まあしっかりとかかっている。喫茶店の飾らないこういうサラダは嫌いじゃない。レタスは少し茶色い部分も入っているけど、たぷたぷのごまドレがあれば全部ごまドレだから問題なしだ。
注文した『シーフードリゾット』がやってきた。運ばれてきて、「あれ?」と思う。注文したときリゾットをドリアだと勘違いしていたようだ。すっかりチーズがのってアツアツのものが出てくると思ったら、スープにひたひたになったご飯だった。
これに関しては自分があほだとしかいいようがない。まあいいやという気分で一口いただくとふっと笑顔になってしまった。大変申し訳ないが、とってもおいしいわけではない。ただ、食べたことのある味。母が作ったかのようなすこし薄味の洋風おじやという感じ。ぼやっとした味が何となく懐かしい気分になって悪い気はしなかった。
『シーフードリゾット』のはずだがゴロゴロとしたシーフードは見当たらない。これぐらいインパクトがない方が読書が進んでよい。あ、これは別に嫌味じゃなくて。食べ進めていくと赤いものを見つけたから食べてみるとカニだった。カニカマかなと思ったが、意外と味がしっかりカニでちょっと笑ってしまった。たぶん缶詰だけど、うん、悪くない。
そろそろ食べ終わるなと思っていたら、絶妙なタイミングでコーヒーを入れる音が聞こえてくる。単品のコーヒーはわからないが、セットのそれは小さめのマシンでいれるもののようだ。ちょうどスプーンを置いたタイミングで運ばれてきたそれは深入りの苦味しっかりめ。
小説を読み進めながらコーヒーを飲んでいると、一気に3組ほどのお客さんが入ってきた。BGMとコーヒーを入れると音しか聞こえていなかった店内が一気ににぎやかになる。常連さんもいるようで勝手にほっとした。
流行りのお店だけではなく、この何ともいえないおだやかな場所がだれかの居場所であることが勝手になんかうれしくて、また寄ろうかななんて思わせてくれる。ごちそうさまでした。