怪談師論6 研究家系怪談師
作家系とどう違うの?な枠ですが、作家系は怪談を収集してそれを「物語る」ことに主軸を置いている。それに対し、単に話すだけではなく、その歴史的な背景とか、民俗学的な考察なんかを加えて、「解釈」したり「分析」したりする方が軸足があるタイプの怪談師です。
それとは厳密に言えば違うんだけど、コレクター系の人もこの枠に入れました。
怪談の収集ではなく、呪物などのオカルト的な「モノ」をコレクションする人。大量に集められたそれらの「モノ」自体が何かを「モノ語る」という部分もあります。
本人も「集める」ということを極めていくと、呪物としての真贋を見浮く力もついてくるだろうし、その辺の、よく言えば「求道的」な感じが、研究家タイプに近いのではないかと思うのです。
ということで、まず研究家タイプとしては、
吉田悠軌
見るからに学究肌な感じ。長めの髪、黒縁眼鏡は大学の万年准教授っぽいですね。
就職氷河期の時期に大学を卒業。就職に失敗し、稲川淳二の影響を受け、怪談サークルとうもろこしの会を立ち上げる。その後、ライターや編集者を経て、怪談師に。
普通に就職できていたら、今日の吉田悠軌はいなかった!
早口で、性急な喋り方で、ところどころ滑舌は悪いけど、何だろう、この話をぜひ伝えたいという熱量がこもっています。
東京都内にいまも残る「忌み地」の研究や、地方に残る習俗など、割と『遠野物語』の柳田國男的な民俗学的アプローチに真骨頂があります。
https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=FZsFaXtJ_f8
川奈まり子
もともと女優で、「熟女ブーム」の先駆けだったそうな。いまでも和服が似合う美女です。
中田監督の名作『女優霊』にもあるように、映画の世界も怪談は多い。華やかでありながら、その分嫉妬や怨念などのどろどろが渦巻く世界だからかな。
しかし、川奈まり子は女優時代の体験談ではなく、取材や資料調査を重ねて怪談を「書く」作家としてスタート。その後、自らイベントなどで「語る」ようにもなった怪談師です。
さまざまな怪異を歴史的に検証し、解釈していく理知的な手つき。さらには古典怪談の深掘りなども、研究家ならでは。
聴くのもいいけど、ぜひ「読んで」ほしい階段作家です。
田中俊行
「怪談師論4」でも触れましたが、下駄華緒と一緒にYoutubeチャンネル「不思議大百科」をやっているオカルトコレクター。
地上波の露出(去年はテレ東『やりすぎ都市伝説』にまで出ていて、おっと思いました)も増え、大分認知度も上がったのではないでしょうか。
いわゆる呪物を中心に、怪異現象を起こした人形とか、とにかく薄気味悪いものを収集している。40代になるまで実家暮らしで、「オカンからお願いだから出て行ってくれと言われた」ので、現在は東京に部屋を借り、ひと部屋まるまる呪物置き場になっているらしいです。
この枠では、「怪談師論2」で紹介した都市ボーイズの早瀬康弘と双璧を成しています。たまに、メルカリに出た呪物を取り合うこともあったとか。そんなもん、そんなに欲しいのかなぁ。正直、「見たい」好奇心はあるけど、「所有したい」という気持ちには到底なれません(笑)。
風貌もいかにも怪しくて、ぼそぼそとした語り口。呪物がらみの体験談と、人から聞いた怪談を語ります。
https://www.youtube.com/watch?v=yaEUdbEPrNk
今回添付した動画は、いずれもいわゆる怪談ではなく、それぞれの「研究」や「収集」について語ったものを、敢えて選びました。
もちろん、いわゆる怪談もたくさんあるので、ぜひ探してみてください。
怪談師論は本稿で終了します。
この分類でもすべては網羅できていないでしょう。
また、ファンの方には「え、この枠でなんであの人が入ってないの?」と思われるかも。
それだけ、いまは活況にあるのだと思います。
また、若手怪談師を対象に、怖いと言うより「不思議な話」をコンセプトにした『怪談ニュージェネレーション』というコンテストもあり、まだまだ新しい異才が出て来る可能性があります。
夏に限らず、もはや通年の楽しみとなった「怪談」。
一層の盛り上がりを期待しています。
The end
https://note.com/ystk_tkys/n/n51881a669d2f
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