マイラーへの道〜KOUMI100完走!
マイラー
トレイルランナーはリスペクトを込めて100マイル(160km)を完走した人のことをそう呼ぶ。トレイルランニングの世界に足を踏み入れたなら誰しも憧れ、そしてそれを目指したくなる。なぜだかこの言葉にはそんな引力があるのだ。100マイルという距離は知らないわけじゃ無い。ジャーニーランなら一度に200km以上を走って完走したこともある。だけどやっぱりオフィシャルなトレランレースで100マイルを完走してこそマイラーを名乗れるのだ。御多分に洩れず自分もマイラーを目指してウルトラトレランレースを走ってきた過去がある。過去があるという言い方には訳があって、一度その熱が冷めた時期がある。
2016年9月 ULTRA-TRAIL Mt.FUJI →悪天候により160km→47km
2017年9月 信越五岳トレイルランニングレース →悪天候により160km→102km
地球温暖化のせいで秋の天候が不安定で悉くコース短縮になる。3万円を軽く超える高いエントリーフィーを払って、交通費や前泊の宿泊費やら相当なコストを掛けて参加してるので、中止になるよりは良かったんだけどマイラーへの道は閉ざされる。
毎年こんなんじゃたまらんわ。レースなんか出なくても好きなトレイルを好きに走ればいいや。そのうちマイラー熱も冷めいった。
その後は天候が安定する12月開催の地元千葉県の房総横断トレイルランニングレース(70km)を走るくらい。そのレースも9月の台風や大雨でトレイルが崩壊して中止に。ますますレースから遠ざかる。その頃から田んぼで米作りを始めたこともあって週末が忙しくなり月間走行距離も減っていく。それなりに超長距離ランニングの経験を積んできたこともあって、月間100kmも走らないけどいつでも100km以上走れるという妙な自信もあるのでランニングはライフワークの一つとして日常生活の中にあればそれでいいと思うようになる。
ライスワーク(お米作り)とライフワーク(身体作り)はとても相性が良い。
そんな時にKOUMI100を知る。と言うか知ってたけど周回レースは好みじゃないので選択肢として全く考えてなかった。
一周35kmを5周=175km。
100マイルより長いやん(^_^;)
なんだかゾッとする。
※実測したログでは172km、累積標高7200mでした。
それでもエントリーしたのは理由がある。
①参加資格が緩い
以下、1~3の項目の条件を全て満たす方
1. 18歳以上の健康な男女
2. レースの全コースを迷うことなく、制限時間内に完走の自信がある人
3. 開催地への宿泊・商店をなどの利用を通じて地域振興にご協力いただける方(任意)
むっちゃ定性的。有って無いような条件だな。メジャーなトレランレースだと「過去○年間のITRAポイントが○○以上」とか書いてあってしばらくレースを出てないとそもそも参加資格を満たさない。つまりゼロ次関門に引っ掛かる。
②開催場所が近い
自宅から260kmくらい。175kmを自分の脚で走ることに比べたら「ちょっとそこのコンビニへ行ってくるわ」程度やね。(言い過ぎ)
③距離の割に安い
正直なところ安くないけど3万円に近い2万円台。メジャー大会は4万円に近い3万円台だから少しマシと言うだけ。だけど中止リスクを考えると少しでも安い方がいい。
※ちなみに草レース的なジャーニランだと200km超で数千円くらいなので破格に安い。
④身体性維持のバロメーターとして年に1回は100km以上の長距離を走る。
以前参加してた草レース的な春のジャーニーラン(200km超)は主催者の事情で開催されなくなってしまって長距離を走る機会が減った。単独で勝手に走ればいいのだけどそれなりに覚悟がいる。農作業も忙しいしな・・・(意志が弱いだけ)
なんだかんだ言って④が一番の理由だと思う。“Born to run“を読んで、速くではなく長く走れることは人間の身体性の中で重要な要素だと考えている。AIだのロボティクスだのシンギュラリティだの科学技術がどうなろうと最後に人間が人間であるためには身体性は必要不可欠たのだ。
こうして再びマイラーを目指すことを決意し、昨年、初めてのKOUMIに参戦したけど、結果は3.5周ほどでリタイヤ。その顛末は昨年ブログに書いたのでここでは語りませんが激烈な体験でした。
で、今年はそのリベンジというわけ。昨年同様、絶大に信頼を置くタッキーにペーサーをお願いしたいところだけど、今年はハセツネ安全走行会に参加していて同日開催のハセツネCUPで選手マーシャルとして走ることになっており断念。誰にでも頼めるわけでもなくペーサー無しでやるしかないなと不安ながら覚悟してたら、なんとコロナ禍のためハセツネCUPが中止となる。もしかしてペーサー頼めるかもと思いエントリーサイトを確認したらペーサー追加のエントリーは終了してた。残念。ところがその後、KOUMIが追加エントリーを募集することに。事務局にペーサー追加も可能か確認したらOKとのこと。こうして今年もタッキーにペーサーをやってもらうことになり俄然モチベーションUP!
KOUMIは周回毎にスタート/フィニッシュ地点に戻って自前のテントで補給や着替えをするのでサポートの有る無しで精神的にも肉体的にも負担が大きく異なる。昨年はランナー2人、サポーター2人(内1名は4周目からペーサー)とこじんまりだったけど、今年はランナー5人、サポーター5人(内1名は4周目からペーサー)となかなかの大所帯。サポーターは人数が増えて楽なようで5人のランナーがバラバラに昼夜を関係なく戻ってくるので決して楽ではない。サポーターもタフでなければ務まらないのたが、裸足で山を平気で歩く野人系の人達なので安心して託すことに。そして今回のサポーターの1人はなんと地元小海町在住の小池さん。会場近くの空家や自家製補給食の提供など地の利を活かした手厚いサポートに感謝感激。
ランナー・ペーサー・サポーターの共走!
これこそがKOUMIならではの魅力と言っても過言ではない。
前夜、昨年の経験を活かしてベストな場所にチームのテントを設営する。無秩序にテントが立ち並ぶのでサイトの真ん中や奥だと真っ直ぐにテントに辿り着けない上にペグダウンしたテントの張り綱に足を引っ掛けたりして危なっかしい。今回はスタート/フィニッシュゲート側の端っこなのでサイトの中を通らずに直接アクセスできる。5回も出入りするし周回毎に思考力も低下するから、こんなちょっとしたことも大事。人数も増えたので昨年よりかなり立派。
MANSADALs裸足最強チーム!
どんなトレランでも小型のミラーレス一眼レフをザックのポケットに入れて、景色が良いと必ず脚を止めて写真を撮る。時間ロスになるので、その分、速く走って時間を稼ぐ。旅するように走るのが自分のスタイル。しかし、KOUMIは完走することを第一に考えて大好きな写真を封印する。なので写真はペーサー、サポーター、スタッフとして参加している仲間が撮ってくれたものだ。
【1周目スタート】(10月9日5:00)
500人くらいのレースなので前にいても後ろにいてもさほど変わらない。最初の2キロはロード、その後は林道なので渋滞で立ち止まることもない。先は長い。とにかく自分のペースで走る。
ペースを制する者は100マイルを制す!
とにかく完走さえすればいいという人はこのブログ記事をぜひ読みましょう。
A1(本沢温泉)へ向かう林道は谷筋なので湿っぽいが昨年に比べたら格段に乾いてる。幸先が良い。登りは基本的に歩くのだが1周目は脚が軽いので傾斜が緩いところはゆっくり走る。今回はスタートからポールを使って脚をなるべく踏ん張らないようにする。早朝は気温も低く水分もほとんど取らないのでA1はスルー。A2(稲子湯)へ向かうロードの下りはオーバーペース要注意。脚に負担を掛けないように早過ぎず遅過ぎずのペースで走る。A2では残りの水を飲み干しておいてボトルの水を満タンにし、ここから始まるニューへの急峻な登りに備える。
尾根筋のトレイルに入る。1周目なので足取りは軽い。だからと言って無駄に脚に負担を掛けてはいけないのでストックを使って負荷分散する。延々と登り詰めてようやく山頂(ニューの山頂ではなくコース上の最高地点のこと)に辿り着く。予定時刻より10分ほど早い。さほど無理せずこのくらいの余裕を持てたならと一安心。余裕があるからと長居はせず下りに入る。下りの前半は急峻で木の根やら岩やらで足場も悪くコースの中でも最も脚を使うセクションだ。シューズランナーとのタイム差が最も出るセクションでもある。後ろから足音が聴こえたら「遅いですからどうぞ」と迷わず道を譲る。それにしても昨年の泥沼コンディションのことを思うと滑らないので脚への負担は随分と少ない。下りの後半になって斜度が緩くなると走りやすいシングルトラックの極楽トレイルが続く。コースの中ので一番好きなセクションだ。一つの下りの中で一番嫌なセクションと一番好きなセクションが同居してる。先に嫌なのがあって後に好きなのがあって帳消し。メンタル的には助かる。
トレイル区間が終わってA3(往路A2)まではアップダウンのあるロード。とにかく登りは歩き、下りは走る。A3からA4(往路A1)は往路の長い下りを逆向きに登る。登りはしんどいのかと言うと実は走らないのでそんなにしんどくはない。むしろ休憩タイム。歩いてると時間もそれなりに掛かるので行動食を食べるには絶好のタイミングでもある。だからロードの登りを“モグモグタイム”と呼ぶことにしてる。
今回の行動食は、
①無印良品のバウム、ワッフル、ナッツバー、ミニラーメン
トレラン向けのブランド物のパワーバーとか味が好みじゃなかったりするし値段も張る。無印良品は意外とコスパが高い。食べ慣れてるので美味しい。
②粉飴パワージェル
即効性があるのでニューの登りの前にぶち込む。これもブランド物のジェルに比べ味にクセが無くてコスパが高い。
③神寶塩、竹塩
精製塩(塩化ナトリウム)ではなくミネラル豊富な自然塩。水を飲む前に舐める。塩熱サプリとか甘ったるくて飽きるし塩舐めてるのか砂糖舐めてるのか分かったもんじゃない。
④セブンイレブンの安納芋羊羹
季節商品なので9月、10月にしか売っていない。
柔らかくて食べやすく絶妙な食感。
56g、148kcal、127円。コスパ良し。
⑤小さく握ったおにぎり
サポーターが用意してくれて周回毎に4〜5個ポケットに突っ込んでおく。餅米とうるち米を混ぜて炊いたご飯にカリカリ梅を混ぜて握ったもの。適度にモチモチしてて喉の通りが良くて普通のお握りより断然食べやすい。
実際のところどうだったかと言うと、
安定して食べたのは、おにぎり、粉飴ジェル、安納芋羊羹、塩。他は後半になるほど食べる意欲が減退して思ったほど口にせずほとんど持ち帰った感じ。
餅米入りおにぎりが最強!
やっぱ日本人は米だな。
レースに戻る。
A4を通過すると真っ直ぐな林道をひたすら下る。最初は斜度もややキツくガレているので脚へ負担を掛けないようゆっくり慎重に下るがしばらくすると斜度が緩やかになり路面も土っぽく滑らかで走りやすくなるのでペースを上げていく。
ロードに出たらサポートチームにメッセージを入れておく。昨年は悪天候だったこともあるがサポートテントに長居しすぎた。今年は10分に抑える。10分でも4回だと40分になってばかにならない。10分休んだかと言って脚がリカバリーするわけじゃない。F1レースさながらに燃料?補給と装備入れ替えが終わったらさっさと出発するつもり。
スタート地点が見えてきた。最後の坂道を歩いて登り会場に入る。そしてフィニッシュゲートを潜る。
やっと一周。先は長い。
サポートメンバーが「お帰りぃ〜」と出迎えてくれる。
家に帰って来たみたいでホッとする。
【1周目フィニッシュ】(10月9日10:39:45)
LAP 5:39:45(予定6:00:00)
予定より20分早いペース。オーバーペースというほどではなかったと思うが、2周目は飛ばし過ぎないよう気をつけよう。
サポートテントでの補給は、
①豆乳甘酒
甘酒は自家製。砂糖とは違って胃に優しい甘さ。
②お粥
自家製梅干し入り。1周目だからご飯でも食べられるが周回を重ねると固形物を食べる元気がなくなる。お粥ならお腹に流し込んででも食べられる。
③豚汁
地元在住のサポーターの自家製。具だくさんで美味しくてどんなに疲れていても食べられた。塩分補給にもなる。ほんとありがたい。
④珈琲
濃いめの珈琲の苦味で頭に刺激入れ。
⑤その他フルーツやら盛り沢山。その時の食欲次第で。
サポートチームの至れり尽くせりの最高のおもてなし。
自分はただ椅子に座って食べるだけ。食べてる間に行動食の入れ替えまでサポートチームがやってくれる。やっぱ独りで走ってるんじゃない。“共走”なんだと思う。
【2周目スタート】(10月9日10:47:49)
3週間前に2周の試走をした時よりも身体は楽に感じる。2周目の予定LAPは+30分の6時間半。1周目で20分ほど貯金があるのでペースは抑えても大丈夫そう。路面状態が極めて良いので、これで完走できなかったら言い訳できない。マイラーに相応しい実力が無かったってことだ。
淡々と前へ進む。昨年と違って平和な気分。もうちょっとドラマチックでもいいのになとか贅沢なことを考えてしまう。ワラーチ履いてると「ワラーチで凄いですね」とか時々声を掛けられる。ワラーチであることはもう空気みたいなもんで、ことさら意識することもない。凄いことしてるとは全く思わないし、それが一番快適で楽だからそれを履いているだけ。ただし、足の置き場や岩とかに足をぶつけないように慎重になるのでシューズよりペースは遅い。昨年のような泥沼の悪コンディションだとはっきり言って不利。だけど誰かと競っているわけではないのでそんなデメリットはデメリットにはならない。自分と向き合い完走目指して前進あるのみ。
晴れているのでもっと暑くなるかと思いきや林間は涼しくて快適。試走の2周目はしんどくてペースガタ落ちで自信失くすくらいだったのにそんなに疲れも感じないで2周目終了。
【2周目フィニッシュ】(10月9日17:10:59)
LAP 6:23:10(予定6:30:00)
ほぼ予定通りのLAPで20分の貯金をキープ。
速やかに補給を済ませ、汗でベタベタするTシャツを着替えてリフレッシュ。気温はさほど低くないし脚もまだ大丈夫。それなりに走れそうなので長袖ではなく半袖にする。間もなく陽が暮れるのでヘッドライトを装着しておく。昨年はヘッドライトで大失態をしでかしたので今年は万全の備え。
【3周目スタート】(10月9日17:26:04)
滞在時間15分で貯金が5分減って15分。さすがに脚に疲労を感じているがまだ走れる。林道に入る頃には辺りは真っ暗。ヘッドライトを点灯する。1年ぶりのナイトトレイル。新しく買ったヘッドランプ(レッドレンザーNE010R)が明るくて超快適。明るさ“中“でも十分。日の入から日の出までと長いので電池節約のためずっと“中“で使う。足元の安定したロードや林道は遠くまで見たいので焦点を絞る。シングルトラックの細いトレイルや急な山道は足元周辺の広い範囲を見たいので焦点を拡げる。ライトで照らされた範囲以外は漆黒の闇。視覚情報が減った分、聴覚は敏感になる。動物の鳴き声や動き、沢の流れ、風に揺れる木々の葉音。野生が目覚めるせいなのか、この非日常感に快感を覚える。
3周目になるとニュウへの登りがやたらと長く感じ始める。夜なので景色の変化が乏しいせいだろうか。脚もかなり疲れていて重い。ポールの助けが無いとキツい。ようやく山頂に着く。夜は気温が下がるので立ち止まって低体温になる可能性があるので長居せず下る。登りより下りがさらにキツい。酷使した大腿四頭筋が痛む。痛みに身体が緊張して強張るから余計に大腿四頭筋に負荷を掛けるという悪循環に陥る。とにかくゆっくり下るしかない。シューズランナーが背後に近づいてきたら早めに道を譲って絶対に無理しない。とにかく脚を温存することを最優先にする。
トレイルを抜けロードに入るが、だいぶ脚を使ったので依然として足取りが重い。下りは一応走るものの大腿四頭筋が痛むのでペースは上がらない。むしろ登りの方が走らなくて良いという安心と大腿四頭筋を使わないで済むので気分的に楽だ。登りは休憩タイムみたいなもの。適当に登りと下りが交互にあるからメンタルも維持できているのかもしれない。
100kmくらい走ってるのだから、いつもなら脚攣りを起こしてもおかしくないが今回は全く攣らない。水分、塩分、ミネラルの補給が上手くいってるせいかもしれない。昨年のような雨だと補給が億劫になり不足しがち。天候が良いというのは補給面でも有利なんだろう。大腿四頭筋は痛むがスタミナが不足してる感じではなく脚を前へ振り出すことに支障はない。だから走れる。A4からの林道、ロードをゆっくりと走り3周目終了。
【3周目フィニッシュ】(10月10日0:38:19)
LAP 7:12:15(予定7:00:00)
予定LAPを12分ほどオーバー。貯金があったので予定時刻より遅れたわけではないが、ペースがガタ落ちしたのはちょっと不安。脚がかなり疲れているのは確か。昨年は4周目に入ると、ペーサーがついたにもかかわらず急速に気力を失い、脚が止まったことを覚えている。今年はまだ余力を残しているので大丈夫だと思うが、あとはペーサーに引っ張って行ってもらうしかない。
【4周目スタート】(10月10日0:57:42)
予定より3分ほど遅れのスタート。4周目の関門9:00まで8時間。予定LAP7:30なのでペースがガタ落ちしなければ間に合うはずだが3周目が7時間12分掛かったことを思うと余裕無しに近い。100km超えてからが本当のマイルレースと言うが正にそんな局面にいる。4周目こそが勝敗を決すると言っても過言ではない。なのでこのタイミングでペーサーがついてくれることは本当に心強い。それも数々の苦楽を共にして絶大に信頼してるタッキーだからなおさらだ。
いざ出陣!
ペーシングも、ランナーの前を走って引っ張っていく、ランナーの後ろからプッシュしていく、あるいは中間的に並走するなどスタイルは色々あるだろうが、時間勝負なら前で引っ張って行って欲しい。離れないように食らいついていく。とは言え登り坂は基本歩くのでリラックスして世間話もする。究極の非日常の中の日常。心身がちゃんとしてれば、いついかなる時も非日常と日常を行き来できる。過酷だけど深刻ではない。その状況を楽しむことができなければこの長い道のりを乗り越えてゴールに辿り着くことはできないだろうと思う。
人生も然り。
ニューの登りに入る。キツい。キツいけど脚は止めない。去年はこの辺りから脚の痛みが酷くなって、休んでは進み、進んでは休むだったことを思うと脚は動いてる。とにかくペーサーについて行く。相変わらず嫌になる程長い登り坂だけどなんとか山頂へ登り詰める。またここを登るのかと思うと気が遠くなるが考えないようにしよう。
山頂では長居せず身体が冷える前にさっさと下り始める。大腿四頭筋を痛みに耐えつつ慎重に足場を確保しながらゆっくり降りる。
途中、夜明けを迎える。
薄明から朝焼けに向かうマジックアワー。いつもなら写真を撮りまくるところだけど今回は我慢。これはタッキーが撮った写真。
斜度が緩やかになって極楽トレイルに入るとペーサーを追いかけて走る。トレイルからロードに出る。
モルゲンロートに癒さながら前へ進む。
登りはしっかり歩く、下りは痛みを無視して重力に任せて走る。
脚を止めることはない。
A4からは林道を下る。斜度が緩くなるとだんだん調子づいてきて激走。
あれ?走れる。
まだこんなに脚が残ってたっけ?
前方にユカさん発見!
追いつこうとさらにペースが上がる。
ユカさんに追いついてもペースは落ちない。
そのまま林道を駆け降りてロードへ。
5周目のことなんか考えないでロードも走る。
そして4周目終了!
【4周目フィニッシュ】(10月10日7:45:42)
LAP 6:48:00(予定7:30:00)
あら⁈
3周目よりLAPが25分も縮んだ(-。-;
そんなことあり得るのか?
さてはタッキーが俺に魔法を掛けたか?
独りで走ってたら起こり得ないことだけは確かだ。
身体の限界って分からんな。頭の限界の方が常に低い。
そうやって身体を守ってるんだから無視はしないけど、身体の声を直接聴いて自由に、身体をコントロールできたらいいのになと思う。
最後の補給を済ませていよいよ最終周へ。
【5周目スタート】(10月10日8:06:00)
制限時間まで9時間ほどある。よほどのことがない限り完走できるだろうが何が起こるか分からないので油断大敵。4周目で追い込み過ぎたので脚はかなり重いが走れないほどではない。4周目をセーブして5周目で時間に追われるか、4周目に追い込んで5周目で時間に余裕を持つか。考えてそうしたわけではないが4周目に追い込めたのは正解だったと思う。
KOUMIは4周目が命運を分ける。
無理してペースを上げることはないが、何が起こるか分からないからのんびりはできない。4周目よりペースは落ちるが走るべきところはゆっくりでも走る。歩くところもしっかりと歩く。
林道に入ってすぐのところでサポートチームの湯本さんが撮ってくれた。笑顔で疲れを吹き飛ばす。どんな過酷な状況にあっても笑える自分でありたい。
A1からの長いロードの下りもそこそこのペースで走れて一安心。だけどニューを越えるまでは完走の確信は持てない。
5回目のニューを登る。回を重ねるほどに長い。まだかまだかと思うほどに長い。でもこれで最後だと思うとなんだか嬉しい。
トレイルが平坦になりようやく山頂に着くとびっくり。サポートチームが立って歓声を上げてるではないか! それも裸足❗️
あり得ない。一晩中寝ずに走ってついに幻覚でも見たか? ウルトラトレイルで幻覚を見るという話は聴くが自分は見たことない。一度は幻覚を見るくらいの極限の挑戦したいと思ってるが、どうやら今回もそこまでには至ってなくて現実だった。
裸足サポートチーム最強‼
苦手なニューからの下りもこれで最後。とにかく怪我のないよう慎重に下る。極楽トレイルを駆け抜けロードへ出る。難所が終わり完走が近づく。それでもまだ確信があるわけではない。かと言って不安なわけではない。要するに朦朧として思考力がない。どの区間にどれくらい掛かるから間に合うとか間に合わないとかそういうことを考える気力が出ない。そんなことはペーサー任せておこう。行動食もあまり取らなった。食べるのも面倒臭いのだ。歩くところは歩き、走るところは遅くても走る。ただそれだけだ。A4に着いて、時計を見てようやく完走を確信した。ゆっくり走って1時間。計算しなくても分かる。
最後の林道の下りは、重力に身を任せて棒のようになった脚を棒のように使って走る。思いの外、ハイペースで走れた。痛みも慣れたら苦痛ではなく単なる痛みという感覚に過ぎないのだろう。こんな時、いつも村上春樹のあの言葉を思い出す。
Pain is inevitable.
Suffering is optional.
林道が終わりロードへ出る。
フィニッシュじゃないけどフィニッシュした気分。
歩いても完走できるけど、走って完走したいから亀のように遅くても走る。
最後の花道を行く。
ついにフィニッシュゲートを潜り完走!
念願のマイラー達成!
【5周目フィニッシュ】(10月10日15:44:49)
LAP7:38:49(予定7:50:00)
最終周も予定LAPより速いペースで最後まで走り切った。
会心の走りと言って良いだろう。
もちろん自分独りの力ではない。
最高のチームの“共走“があってこそ勝ち得た完走なのだ。
ありがとう!
【完走後記】
かなり好条件だったとは言え完走できて当たり前と言うほど楽なレースではない。というか楽な100マイルなどない。しかし、近頃は月間200kmとか走り込んで鍛えてるわけではないけどこうして完走できたのは、それが単純に走る能力だけによるものではないということの証でもある。
ちなみに今年の月間走行距離は、
1月39km、2月72km、3月60km、4月56km、5月116km、
6月130km、7月48km、8月121km、9月228km
でした。(9月は試走70kmと直前のトレイル刺激入れ30kmを含む)
超長距離ランニングは総力戦である。
このセオリーはこれまでの数々の経験を通して身を持って確信していることだけど、今回は特にエネルギー源について再認識したことがある。長距離ランでは糖質の補給が必要不可欠だ。何キロ走ったらこのくらいのカロリーを消費するからこのくらいの補給食を用意しよう。1個当たりのカロリーを元に何個用意してどのタイミングで補給するかを考える。これは理屈としては正しいのだろうけど、実際のところは距離が伸びるほど食欲は減退し、食べ物が喉を通らなくなって計算通りにはいかないものだ。あるいは、どんなに走力が高くても胃腸をやられると一気に戦意を喪失してリタイアになってしまうことも超長距離ランニングあるあるだ。自分は胃腸が丈夫な方なので、やられるということはほとんどなくてその点は安心なんだけど、だからと言って食欲を維持できるというわけではない。味覚には亜鉛が大事とかで食欲減退予防にサプリで補給したりとかしているが本当に効いているのかは定かではない。今回も3周目辺りから食欲減退してかなりの行動食を持ち帰ることに。
糖質は足りてたのか?
帰宅して風呂に入った後、体重計で体組成を測りレース前と比べる。
体重 55kg → 53kg
あまり変わらんな。
体脂肪率 13%→6%
たったの2日間で体脂肪が半減!
レースの翌日からものすごくお腹が空いてたくさん食べるんだけど体脂肪はなかなか戻らない。1週間経ってようやく10%に。
これは、いわゆる脂肪燃焼、ケトン体回路というやつだろうか。
この半年くらい1日ほぼ2食生活(朝抜きで夕飯から昼ご飯まで16時間の空腹時間を作る)を続けているので体質的にも、より一層、脂肪燃焼し易い身体になっていたとも考えられる。
つまり、
身体を食べて走る!
ということなんじゃないかと思う。即効性の面では糖質も有効だけど、超がつくほどの長距離・長時間の移動を続けるためには脂肪燃焼し易い体質であることが総力戦の武器の一つとしてものすごく重要だと再認識。
もちろん脚を壊したらエネルギーがいくら足りてても走り続けることはできないので、言うまでもなく走力も大事。しかし速さを求めないなら過度に追い込む必要は無い。それよりも脚に負担を掛けない楽な走り方を身に付ける方が得策だと思う。
長距離ランナー体質は一夜にして成らず。
いつでも、いつまでも100マイル走れるだけの身体性を維持できるよう、日々の暮らしの中で、"食べること"、"走ること"を大事にしようと思う。
おしまい。
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