還暦記念 北アルプス山旅2024〜DAY6(最終日)
DAY6(8/1)奥穂高岳山荘(テント泊)→上高地バスターミナル
ドラマチックなDAY5から一夜明けてとうとう最終日を迎える。長かったような短かったような。時間の流れが日常とは違うのでなんとも言い難い。クロノス時間(物理的時間)よりもカイロス時間(感覚的時間)が一日の大半を占める日々。
朝4時。まだ日の出前で暗い。空を見上げると星が瞬いてる。朝陽を拝む絶好のチャンスだ。山荘のテラスからでも拝めるが、どうせなら涸沢岳の山頂で拝もうとヘッドランプで足元を照らしながら登り始める。
地平線が橙色に染まり、空が白んでくる。
マジックアワーの始まりだ。
山頂に近づくと黒い影のような槍ヶ岳が忽然と姿を現す。昨日はガスで見えなかったけどハッキリと見える。
日の出が近づくにつれ微かに後光が差し込む。
橙から青へのグラデーションが刻一刻と変化していく。
満を持して太陽が顔を出す。
地平線から離れるにつれ光が強度を増す。
右の方に目を移すと前穂高岳の向こう、富士山が雲海に浮かんでいる。
奥穂高岳が赤く染まる。モルゲンロートだ。
きっと涸沢からはもっと壮大なモルゲンロートが見えてるだろうな。
八ヶ岳も雲海に浮かんでる。
太陽の光がその輝きを増していく。
槍ヶ岳も朝陽を浴びて輝き始めた。
昨日の夕焼け劇場が“動”だとしたら、日の出は“静”だ。静かに光が満ちて行く。
最終日にして最高の贈り物をもらった気分。
さて当初計画では槍ヶ岳から大キレット→北穂高岳経由で涸沢へ降りて、パノラマコースで上高地へ行くつもりだった。しかしパノラマコースは残雪でまだ開通していないことが判明。それと涸沢から登って来たのに涸沢へ降りるのも面白味に欠ける。なので奥穂高岳→前穂高岳→岳沢経由で上高地へ降りようと考えてた。ところが新卒で入社した時の会社の同期の女性が友人と涸沢小屋に泊まっていて、今日、奥穂高へ登るということが、昨日のお昼ぐらいに判明。20数年会ってない。会えるもんなら会いたいなぁ。涸沢を見下ろしながら、すぐそこなんだけど高低差がなぁ・・・と北アルプスならではの距離感を感じる。半日掛けてザイテングラートで涸沢を逆ピストンするとか一瞬頭をよぎったけど、さすがに無謀だなと思って諦めた。
で、昨日、思いついたのがこのプラン。
こっちは朝から涸沢へ降りる。向こうは朝から奥穂高へ上がる。さすれば途中で会えるはず。よくよく考えて見れば涸沢カールは雨でほとんど何も見えてなかった。晴れた日の涸沢カールを旅のフィナーレにしよう。
というわけで今日は涸沢から横尾経由で上高地へ向かうことに。
6:20に出発。
メジャールートだけあって朝早くから登る人と下る人が入り混じる。
メジャーだからと言って侮れないのがザイテングラート。途中の急峻な岩場は、登るにしても下るにしてもかなり注意が必要。
後で調べたところ、7月24日と25日にザイテングラートで滑落事故が発生してた。高齢者が多い。高齢な登山者ほど昔ながらの重い荷物を担いでたりするし、経験豊富でも身体能力が落ちてたりすると思わぬところで足滑せることもあるだろうな。身体能力は致し方ないが装備はお金を掛ければそれなりに軽量化はできる。命が掛かってるんだから多少無理をしてでも荷物は軽くした方が良い。
危険箇所を通り過ぎて振り返ると真っ青な空に穂高の稜線がくっきりと見える。登った時とはまるで別世界。
ザイテングラートを抜けて緩やかな斜面に入ったところでかつての同期と20数年ぶりに再会。タイムスリップしたかのよう。
まさか快晴の涸沢カールで再会するとは・・・
奇跡の再会と言っていいだろう。
縁は異なもの味なものだ。
積もる話はあるけど涸沢カールのど真ん中でゆっくり話仕込んでいる暇はないのでお預け。これを機にまた会おう、ということで別れる。
パノラマコースへ入ると広大なお花畑が広がっている。まるで極楽浄土のよう(行ったことないけど)。当初は岳沢へ降りようと考えてたけど、涸沢へ降りてきて良かった。
最高のフィナーレを飾る。
何度も振り返っては涸沢カールを眺める。
涸沢ヒュッテに到着。(8:15)
土砂降りの中、2杯飲んだ美味しい珈琲をまたいただく。今回はつぶあんぱん付きで。
これぞパノラマテラス!
同じ場所でも別世界。
涸沢を後にし横尾へ向かって沢沿いの山道を下る。
本谷橋を渡る。
沢音が心地良い。
断崖絶壁に圧倒される。
横尾到着。(10:00)
ここからは平坦で楽だけど単調で長い道のり。
速足で黙々と歩く。
時折り林間の木漏れ日に癒される。
徳沢園に到着。(10:55)
人が急に増えた。
上高地からここまでは観光コースなので登山者より観光客の方が目立つ。外国人も多い。
徳沢はもはや下界だ。
とは言え徳沢のキャンプ場は明るく広々としていて快適そう。機会があれば泊まってみたい。
梓川の向こうに明神岳を一望。
明神館に到着。(11:30)
一段と人が増える。
明神橋を渡り梓川の反対側へ。
反対側の方が景色に変化があって飽きない。
河童橋を渡る。(12:30)
大勢の人。
久しぶりにこんな人混みを見た。
上高地はかつてのような静かな避暑地ではないな。
上高地バスターミナルに到着。
沢渡へのシャトルバスに大行列。
途切れないバス。
山と比べたら、ここは都会の雑踏だ。
山が恋しい。
自分の乗る高速バスは16:50発。
まだ13時で時間がたっぷりあるので、荷物を預けて散歩がてらお風呂に入りにいく。
上高地温泉ホテルで汗を流す。上高地には何度も来てるけどここは初めて。露天風呂もあって気持ち良い温泉。汗を流してサッパリ。
せっかくここまで来たので田代池まで行ってみることに。大正池も考えたけど、遠いのと、何より人が多くてストレス感じるのでやめとく。
山の上に比べると気温が高くて暑いけど水辺は涼しくて良い。
それにしても昼間の上高地は上空をひっきりなしに飛び交うヘリコプターの音が騒々しい。山小屋へ大切な物資を運ぶのだからしょうがないとは思うけど、昔はこんなに頻繁じゃなかった。この30年で登山する人が増えたのだろう。高齢者とか外国人とか。わかっちゃいるけどなんだか上高地が色褪せて見える。
おそらく20数年ぶりの北アルプス。
変わらない景色(自然)に変わってしまった場所(人為)。
そんな時の流れを感じつつ5泊6日の山旅を終える。
完
〈参考〉
距離: 18.3 km
最大標高差: 1488 m
最高点: 2991 m
最低点: 1503 m
累積標高+: 151 m
累積標高ー: 1609 m
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?