六甲山キャノンボールランは究極の草レースだ!
関西のノリでトレランやったらどうなるん?
それが六甲山キャノンボールランだ。
冗談のようなホンマ。
<ルール>※一部抜粋
・エンジン以外何でもあり。人力、MTB、馬、ミニチュアポニー・ウィングスーツ、グライダー、スケボーなどなど、とにかく六甲縦走路を一番早くゴールした者が勝者です。
・死なない。
・酒に飲まれない。
・自己責任のうえ参加し、事前にリスクを回避する能力があること。怪我や事故等が発生しても自ら対処してください。
・誘導係はおりません。道に迷いそうな人は必ず地図やGPSを持参し自身で走れるよう準備する事。
・あまり文句を言わない。
さすがに馬はないやろうけどMTB参加の人はいて険しい岩場をMTB担ぎ上げて登ってる。信じられへん。
なんでトレランで酒に飲まれるんや?
それはエイドで酒が出るから。いやいやキャノンボールではそれは酒やなくてエナジードリンクって呼ぶらしい。ちなみに大会が用意する公式エイドは無くて全て何でもありの私設エイドのみ。エロ本エイドとか意味不明な・・・それは後ほど。
誘導灯も誘導係も一切無し。主催者が提供するコースマップも無し。市販の六甲山全山縦走路の地図、ネットで誰かがアップしてるGPXデータを自力でゲットする。あとはポピュラーな登山ルートなので「六甲山全山縦走路」の看板がところどころ設置されているので見落とさないように走ればなんとかなるやろ。後はよろしく!
あげくにあまり文句を言うなってか。
記録は自己申告。当然ICタグなんか無い。
ITRAポイントとは無縁の世界。
だから草レース。
草レースだけどヤワじゃない。
<種目>
■SPEED
距離:56km(→実測ログ換算42km)
スタート&フィニッシュ:宝塚(塩平寺下の広場)→須磨浦公園
参加費:3,800円(保険料含)
■NIGHT SPEED
距離:56km (→実測ログ換算42km)
スタート&フィニッシュ:須磨浦公園→宝塚(塩平寺下の広場)
参加費:3,800円(保険料含)
■POWER
距離:112km (→実測ログ換算84km)
スタート&フィニッシュ:須磨浦公園→宝塚(塩平寺下の広場)→須磨浦公園
参加費:3,800円(保険料含)
■TEAM(女性2人を含む5人1組)
距離:112km (→実測ログ換算84km)
スタート&フィニッシュ:須磨浦公園→宝塚(塩平寺下の広場)→須磨浦公園
参加費:19,000円(保険料含)
■BUDDY(男女ペア)
距離:112km (→実測ログ換算84km)
スタート&フィニッシュ:須磨浦公園→宝塚(塩平寺下の広場)→須磨浦公園
参加費:7,600円(保険料含)
■GAY(男ペア)
距離:168km (→実測ログ換算126km)
スタート&フィニッシュ:宝塚(塩平寺下の広場)→須磨浦公園→宝塚(塩平寺下の広場)→須磨浦公園
参加費:7,600円(保険料含)
■STAIRWAY TO HEAVEN(女性ペア)
距離:112km (→実測ログ換算84km)
スタート&フィニッシュ:須磨浦公園→宝塚(塩平寺下の広場)→須磨浦公園
参加費:7,600円(保険料含)
■RAINBOW(一人1.5往復)
距離:168km (→実測ログ換算126km)
スタート&フィニッシュ:宝塚(塩平寺下の広場)→須磨浦公園→宝塚(塩平寺下の広場)→須磨浦公園
参加費:3,800円(保険料含)
参加費安っ! 主催者が用意する誘導もエイドも無いとそんなもんなのかな。近頃のウルトラトレイルランニングレースだと2万円、3万円当たり前。コスパ最高なのだ。言うまでもないことだけど、何が起ころうと自力で生還するのが山行の基本。そのために最低限必要な装備や食糧、水、ファーストエイドは自分で判断して背負う。軽けりゃええってもんじゃない。私設エイドは楽しむものであってそれをあてにして走ることのないようにしよう。
参戦する種目はPOWER。実は4年前にも走った。往復84km程だしなんとかなるわと舐めて掛かったら地味にキツいコースで往路でバテた。復路は遅れを取り戻そうと焦る割にペース上がらず、メンタルの余裕の無さで補給が疎かになってハンガーノック。息が切れるし脚が動かないのでますます遅れるという悪循環。完走はしたけど19時の門限から遅れること30分。真っ暗で人影少ない須磨浦公園で 、サポートしてくれた友達が1人出迎えてくれて嬉しくもあり寂しくもあったフィニッシュを今でも覚えてる。
あれから4年。その間、それなりに超長距離の場数を踏んで経験値はかなり上がってるはず。
(過去ブログは長いので読み飛ばして下さい)
2018年5月 中山道“風の旅”(463km)
2018年6月 TDT100(160km)
2019年6月 甲州道中“鳥の旅”(215km)
2020年10月 KOUMI100(DNF123km)
2021年10月 KOUMI100(完走175km)
振り返ってみれば“それなり”どころか“かなり”の場数なんだけど、季節、天気、地形、身体、心などシチュエーションは千差万別。どれだけ経験を積もうが何が起こるか分からないのが超長距離走の世界なのだ。今回は前回の最大の反省点である補給を怠らないことを特に意識して走ることにした。
今年の春大会は3月19日(土)、20日(日)。21日は祭日で3連休なのはありがたい。参加費が安くても神戸遠征となると交通費がバカにならないので夜行バスを使うことにした。金曜日の夜に出発して土曜日の朝に神戸に着く。せっかく関西まで行くのだから21日はどっかで遊んで帰るつもりで21日の夜行バスに乗って東京には22日の朝着。ありがたいことにリモートワークだから家に着けば即仕事に入れる。往路は金曜日のせいかやや高くて7500円。復路は破格の2500円!合わせて1万円也。
準備万端だったけど直前になって嫁さんも帰省を兼ねて同行することになったので夜行バスからマイカーに急遽変更。キャンセル料20%で2000円。元が安いから安いもんだ。夜行バスなら寝れるがマイカーだと運転しなきゃならないので寝る時間がないけど・・・
そして迎えた3月18日の夜。マイカーで自宅を出発して19日の朝に神戸に着く。
30年ほど前に今の会社に入社してしばらく垂水に住んでたのでとても懐かしい景色。その晩に嫁さんが宿泊するホテル舞子ヴィラにマイカーを駐車して、サポートを頼んだ友だちにピックアップしてもらう。久しぶりの神戸をたっぷり味わいたいところだけど夜通し車の運転して十分に睡眠を取ってないのでレース前に少しは仮眠もしたい。ということで友達のフルアテンドで、思い出深いビーナスブリッジに連れていってもらい、オシャレなカフェでランチを食べ、有馬温泉のスパで風呂入って仮眠という超贅沢プランで一日を過ごす。
しかし午後になって降り出した雨が一向に止まない。気温も低い。かなりの悪コンディションが予想されるがあるがままに受け入れるしかない。場数踏んでるとさほど動じることはない。
20時20分くらいにスタート地点の須磨浦公園に着くとコロナ対応のウェーブスタートで既にかなりの人が走り始めてるので少し焦る。雨の中、大急ぎで準備してる間に雨が止んだ。月明かりに星空が見える。もう雨は降りそうもないのでレインウェアを脱いでウィンドシェルに着替える。ほんま運がええわ。(自称晴れ男)
幸先の良いスタートだ。(20:32)
ウェーブスタートのお陰で渋滞が無いのはいいが前後に人影が無いとコースから外れてないか心配になる。こまめにgpxログをチェックしながら進むことにする。30分ほど上がると神戸の夜景が眼下に開ける。雨上がりで空気の透明度が高くて眩いくらいの夜景だ。大都会の夜景を拝めるトレランレースはそうあるもんじゃない。キャノンボールの醍醐味ここにありだ。(この夜景を見たいなら夜スタート片道のナイトSPEEDがおすすめ)
夜景が綺麗なのはいいがとにかく寒い。写真を撮るために脚を止めると身体が冷える。手がかじかむ。写真撮るくらいの時間ならまだしも休憩を取ると汗冷えして体温が下がる。身体がガタガタと震えるようなら低体温症の入口だ。なので休憩は最小限にして先を急ぐ。そのせいか想定タイムテーブルより30分程度早い。往路前半は、山から住宅街に降りてはまた上がったりと小刻みにアップダウンが続く。身体で感じてるより脚を使ってしまうのでハイペースにならないよう注意。
30分程度の貯金をキープしたまま摩耶山掬星台に到着。(2:17)ここからの夜景は格別だ。低体温症に気を付けながらもしっかりと目に焼き付ける。
摩耶山が往路の真ん中くらい。後半の最初は稜線上の車道を走ったりトレイルに入ったりを繰り返すが高低差は小さいので走り易い。ところどころで夜景を堪能できるのはいいが、稜線上はさらに気温が下がり何もかもが凍てついている。
ここまでの寒さを想定したウェアリングではないので走り続けないと体温を維持できない。特に東西に伸びる稜線の北側に入ると厳しい。冬にトレランを走ることはほとんどないし3月下旬の低山だからと甘く見てた。走れてるからいいけどもし故障で動けなかったらマジで低体温症がヤバい。
往路最後の10kmほどはダラダラと続く下り基調のトレイル。走れるところも多くて気持ち良いが長い。まだかまだかと走ってると空がピンク色に染まり始める。薄明の時だ。夜明けが近い。東へ移ったので広大な大阪平野を一望する。
視界が開け、朝の柔らかい光に浮かぶ宝塚の街を見下ろすと間も無く往路折り返し地点の塩平寺休憩所に到着する。(6:26)
前回は関西在住の弟がここで温かい食べ物や飲み物を用意してサポートしてくれた。ファミリーエイドだ。今回は弟もSPEEDに参戦するため、サポート無しで折り返すことを前提に水と行動食を残しておいたが、早めにスタート地点に着いた弟がコンビニで水分やら行動食を買ってきてくれた。ベストタイミングで受け取る。有り難い。
たっぷりと補給し、30分ほど滞在して折り返す。(6:50)
往路のダラダラとした下りを今度は登る。斜面をトラバースしながら少しづつ高度を上げていく。フラットなところは走る。朝の林間トレイルは気持ちがいい。
トレイルから稜線の車道に出たところで15分遅れでスタートした弟に抜かれる。こっちは往復だからハンディキャップがあるのだけど、弟の走力が上がってると思うと抜かれて悔しいと言うより嬉しい。
稜線上は相変わらず気温が低くて夜間と同じく極寒の世界。夜はあまり見えなかったけど北側の木々は満開の桜のように雪の花が咲いて美しい。こういう景色は見ようとして見れるものではない。そう思うと寒さもありがたい。
そうこうしてると後から呼び声が。弟と同じSPEEDに参戦の関西在住のラン仲間、新川さんと濱田さんが30分ほど遅れてスタートして追いついてきた。新川さんとはリアルに会うのは何年振りだろう。濱田さんとは昨年秋のOMM以来。2人ともOMMではバディを組んだ仲。気心も走力も良く知ってる。近況など喋りながら久しぶりの共走を楽しむ。
新川さんは僕と会うために体調不良を押して参戦してくれたようで無理せずガーデンテラスの先で別れて六甲ケーブルでエスケープ。感謝!
いつかまたOMMでバディ組む日を楽しみにしてる。
その後は濱田さんと並走。僕の遅いペースだときっと物足りないだろうけど濱田さんはキャノン初参戦でコースも不慣れなので一緒に走ってた方が安心だろう。ところが三国池あたりの車道からトレイルに入るポイントを見落として六甲山牧場の方向へ下るというまさかのロスト。夜通し寝ずに走ってると思考力が低下して時々やらかす。こまめに刻んで地図を確認しなきゃと大いに反省。下った道を上がるのは辛い。
ようやく摩耶山掬星台へ到着。(10:16)
速くはないけどまずまずのペースだ。
夜景は圧巻だけど昼の景色も奥行きがあって素晴らしい。
摩耶山から先は全体としては下りつつもアップダウンの繰り返し。前回と違ってバテてはないが脚が痛い。特に下りは大腿前頭筋が悲鳴を上げるのでペースが上がらない。SPEEDのランナーは皆んな速いので道を譲ってばかりでなおペースが上がらない。キャノンボールは仲間で集団で走ってる人が多いので待ち時間が長かったりする。それはそれで休憩になるのだが・・・。日曜日の昼間なのでハイカーさんも多い。集団で走ってる人は集団心理もあるのかもしれないがハイカーさんに道を譲らない傾向がある。トレイルはレース専用ではないのだからレース中であってもなるべく道を譲った方がいいなと思う。
往路は寒いし真っ暗なので立ち止まっただけのキャノン名物エロ本エイドに着く。動画全盛時代に今や死後と言ってもいいくらいだが僕らにとっては懐かしい。看板に「走らんでもエエ!エロ本を最後まで読みきれ。」と書いてある。(笑)
せっかくなのでチラッと読む。
エイドスタッフの女子がワラーチに食いついて「素敵な履き物ですね」と声を掛けてきた。「どんな感じなんですか?」と聞かれたので本能とか野生とか適当に答えておいたけど、さすがにエロ本エイドなので「脱げばわかる」と言うのはやめといた。
最後の山、旗振山に着く。(17:28)
西陽に瀬戸内海がキラキラと輝いている。
須磨に帰って来たことを実感して安堵する。
もう着いたも同然だ。
脚に優しくない石の階段を痛みを堪えながら下ると須磨浦公園だ。
そしてついにフィニッシュ!(17:46)
前回と違ってまだ明るいし大勢の人で賑わってるのが嬉しい。感無量。脚はかなり逝っちゃってる。距離の割にキツいコースだなとあらためて思う。やっぱ六甲山縦走路を舐めたらあかんわ。復路は濱田さんが最後まで伴走してくれたのでメンタルはむっちゃ助かった。感謝!
草レースなのでICタグなんかなくて記録は自己申告だ。
往路 9時間54分
折り返し地点休憩 24分
復路 10時間56分
往路+復路 20時間50分
順位100位 ※出走186名、完走率69%
冬の間、走り込んでないので脚力不足は否めない。復路はかなりペースダウンしてしまった。
懐かしの神戸に行けるからまた参戦するつもりだけど、同じじゃつまんないし思い切ってRAINBOW(1.5往復)かなぁ〜などと懲りずに妄想中。
おしまい。