4630万円を失って、得られた価値 2022年5月18日
最近何かと世間を騒がしていた〝4630万円の男〟が逮捕された。これまで実名報道には慎重だった各放送局であったが、逮捕されたことをきっかけにタガが外れたのか、実名はおろか、卒アルや卒業文集、口座の出金記録まで大々的に報じている。
いくら法を犯したとは言え、元はと言えば役所の不手際が原因なので、ここまで個人情報を晒されるのは気の毒だと思う。が、やはり色々とキャッチーな要素が多いこのニュースに対し、久しぶりに前のめりになって、ワイドショーを見ている下衆な自分がいる。
まず口座に665円しか無い超貧困状態の時に、ある日突然謎の大金が振り込まれるという奇跡が面白い。一番やっちゃいけないタイプの人間に誤送金してしまった役所側の〝引きの強さ〟には同情する。たぶん所謂〝普通の人〟なら、回収はもっと容易だっただろう。
そして、そんな役所の〝引きの強さ〟に対し、逮捕された彼は10日ほどで4630万円のほとんどをオンラインカジノで溶かしてしまったようだ。このカモられっぷりもお見事で、その時の心境をいつか聞いてみたいものだ。彼が今どんなメンタリティなのか、すごく知りたい。
おそらく彼はこれまで社会の底辺に生きてきたであろう。なにせ、口座に665円しかなかったのだ。この少なすぎる金額も並みでない。
あるインターネットに詳しい著名人が「YouTubeとかやれば元はとれる」みたいなことを言っていたが、ここ数日の報道のされ方を見るに、彼にはもうすでに4630万円以上の価値はあるように思う。
しかしそれを享受しているのは彼を新しいおもちゃとばかりに根掘り葉掘り生い立ちなどの個人情報を掘り下げている大手マスメディアなのはなんとも皮肉な話だ。彼には一銭も入らないどころか、肖像権さえも実質的に握られている。
逮捕されてしまって色々と大変だろうがもう元の生活には戻れないと思う。だからこそできることなら彼の人生を賭けたギャンブルの続きを見てみたい。
だがまことしやかに囁かれているネットカジノでボロ負けしたのは詭弁で、実は大金をどこかに隠してあるのだしたら話は別だ。そんな狡賢い小悪党に何も魅力は感じない。
今後もこの事件は報道され続けると思うが、「頼むから、カジノで使ってしまったのが事実であってくれ〜」と、歪んだ見方でこのニュースを注目していきたい。