現役宅配便業者がTwitterでバズっていた例の佐川急便の件に思うこと 2022年5月24日
Twitterを何気なく見ていると〝佐川急便〟のことを話題にしている投稿がちらほら目についた。やはり現役宅配便業者であり、かつては佐川急便で働いていた身からするとスルーするわけにはいかない。
少し探ってみるとこのツイート↓が大元のようだった。
正直言って〝デザフェス〟なるものをよく知らず、なんなら初めて耳にする言葉なのだが、投稿主がこの日のために精魂込めて作り上げたなんらかの作品が佐川急便の不手際によって破損させられたことが窺える。
このツイートに関して、投稿主の梱包を批判する意見が少なくない。たしかに宅配便業者からしたら、この写真だけ見ると梱包がマズいように思う。
ただ投稿主があくまでも被害者なことに変わりはないし、晴れの舞台を台無しにされたのだから佐川急便に対して怒りを表明する権利は当然ある。自分も今回起きてしまった悲劇は佐川急便に大きな過失があると考えている。
なぜなら、これは佐川急便だけではないが、基本的に宅配便は割れ物だろうが何だろうが、料金に差をつけてないのが問題あるように思う。あまり良くない言い方だが別に雑に扱ってもいいものもあるし、逆に慎重に扱わないといけないものなど様々な荷物が存在するのだが、それらは全て同じように扱われているのが現状だ。
ちなみにヤマト運輸では丁重に扱って欲しい美術品を専門スタッフが届ける『美術品輸送』というサービスが存在するみたいだが、HPに料金が掲載されておらず、専門スタッフを派遣することから考えるにかなり高額なサービスになると推測できる。おそらく基本的には法人向けのサービスだろう。
もちろんそのようなサービスも必要だと思うが、もっと個人でも使いやすいサービスで料金の差別化を進めていってもいいように思う。今の宅配便は言わば、エコノミークラスしかない飛行機のようなものになっている。
欧米に比べ、日本の宅配品質ひいては接客品質は高水準だと言われているが、もっとお金を取れる所からしっかりと取る工夫をする必要があるように感じる。そしてそのお金を労働者に還元できれば、生産性が低いと言われている日本社会が少しでも改善するのではないだろうか。
宅配便でいえば割れ物はより慎重かつ丁寧に扱うとか、時間帯指定を守るとか、再配達は何回もするとか、これらは全て無償で行われていて、現場の労働者は「お客様の満足度を上げるために」という名目にやり甲斐搾取をされている状態だ。
顧客満足度を上げることで、企業の利益に繋がり、結果的に労働者のためにもなっている。というロジックは理解できるが、それにしても神経や体力を使う割に〝割に合わない仕事〟が多過ぎるように思う。
少なくとも日本の宅配便企業は現場のマンパワーで回っている部分が大きく、経営側に優秀さはあまり感じない。だから近年、AmazonやUberなど、外資系企業の配達員になりたがる人が増えてきているし、自分もAmazonを経験してしまった結果、今更もう佐川やヤマトに戻れない体になってしまった。
話を戻すが、今回起きた事件は投稿主からすれば悲劇だし、佐川急便側からすれば割に合わない案件だっただろう。これではお互いに損でしかない。
今やどこもドライバー確保が困難になっている時代において、宅配便業界の持続可能性のためにも、今回Twitterでバズってしまった事件から学ぶことは多いように思う。だが、長年宅配便業界にいる自分からすれば、悲しいかな、あまり期待できないのも事実である。