[妄想タイム] 山陰に新幹線はいらない

山陰新幹線について

山陰新幹線は昭和48年(1973年)に告示された「全国新幹線鉄道整備法」による「基本計画路線」です。
あくまで「計画路線」であって、令和元年(2019年)の現時点では何も動いていない路線です。一応。

現在までの経緯は以下みたいです(簡単に)
 昭和45年(1970年)山陰新幹線建設促進期成同盟会が発足
 昭和48年(1973年)全国新幹線鉄道整備法告示
 平成25年(2013年)山陰縦貫・超高速鉄道整備推進市町村会議が発足
 平成28年(2016年)山陰新幹線を実現する国会議員の会が発足

ここにきて急に動きがあった感じですね。これはおそらく平成27年(2015年)に北陸新幹線が金沢まで延伸したこととか、平成26年(2014年)にリニア中央新幹線が着工されたことが影響しているものと思われます。
そして、山陰新幹線の通る経路ですが、大阪から山陰(鳥取、島根)を通って下関までのようです。
現在の山陰線をなぞる感じですかね。
それから、「中国横断新幹線」というのも計画としてあるみたいで、こちらは松江から岡山まで、現在の伯備線をなぞる感じで計画されています。

平成30年(2018年)に決起大会があったようで、その中で山陰新幹線の整備費は約3兆円との発言があったらしい。整備新幹線に当てる予算はここ数年は3000億円前後で推移しています。また費用がかかるなら「単線で」とかっていう発言もあったらしいですが、単線で新幹線とかありえないですから。一本の線路に複数しかも方向が真逆の高速鉄道を走らせるなんて、運用と安全面にどれだけコストがかかるのか!

平行在来線問題

新幹線が開通すると、それに平行する在来線はJRから分離され、廃止されるか第三セクターで運営されることになっています。実際に北陸新幹線が金沢まで延伸したときには、JR西日本の幹線の一つである北陸本線も直江津駅ー金沢駅間はいくつかの第三セクターへ移管されました。

ちなみにJR西日本の新幹線の売り上げは平成29年度(2017年度)は約4, 470億円です。これは山陽新幹線と北陸新幹線を合わせた売り上げになります。北陸新幹線のみだと約420億円ちょっとという感じです。
では、北陸新幹線が金沢まで延伸する前の平成25年度(2013年度)を調べてみると、北陸本線の売り上げは 約460億円(直江津ー米原)。区間が違うので一概には比較できませんが、ほぼ北陸本線の売り上げが北陸新幹線に移った感じです。
実際には第三セクターへ移管されたので、平成29年度(2017年度)の移管区間の売り上げを見てみましょう。
北陸本線(直江津ー米原)は北陸新幹線の開通で次の3つに移管されました。
直江津ー市振は「えちごトキめき鉄道」へ、越中宮崎ー石動は「あいの風とやま鉄道」へ、倶利伽羅ー金沢は「IRいしかわ鉄道」です。
  IRいしかわ鉄道の29年度の旅客運輸収入は 約12億6千万円
  あいの風とやまの29年度の旅客運輸収入は 約29億7千万円
  えちごトキめき鉄道の29年度の旅客運輸収入は 約7億1千4百万円
3社合計すると 約49億5千万円で、北陸新幹線の11.8%(8分の1くらい)です。

山陰本線の場合

山陰本線は京都から山口県幡生までの676kmととても長い距離があります。この中には都市部があったりそうでない地域もあったりします。平成28年(2017年)の輸送密度は以下のようになっています。
  京都ー園部    34.2km  44251人/日
  園部ー福知山   54.3km  6159人/日
  福知山ー城崎温泉 69.5km  3644人/日
  城崎温泉ー浜坂  39.9km  801人/日
  浜坂ー鳥取    32.4km  965人/日
  鳥取ー米子    92.7km  4296人/日
  米子ー出雲市   61.6km  6186人/日
  出雲市ー益田   129.9km 1292人/日
  益田ー長門市   85.1km  296人/日
  長門市ー小串   52.8km  362人/日
  小串ー幡生    23.6km  2879人/日

山陰本線の売り上げは約167億円です。年間の輸送人キロで計算すると各路線の売り上げは以下のようになります。#単純に割合で分けてみました。
  京都ー園部    47.0% 78.5億 → 8分の1にすると  9.81億
  園部ー福知山   10.4% 17.4億            2.18億
  福知山ー城崎温泉 7.86% 13.1億            1.64億
  城崎温泉ー浜坂  0.99% 1.65億            0.21億
  浜坂ー鳥取    0.97% 1.62億            0.20億
  鳥取ー米子    12.4% 20.7億            2.59億
  米子ー出雲市   11.7% 19.5億            2.44億
  出雲市ー益田   5.21% 8.70億            1.09億
  益田ー長門市   0.78% 1.30億            0.16億
  長門市ー小串   0.59% 0.98億            0.12億
  小串ー幡生    2.11% 3.52億            0.44億

山陰新幹線ができたなら

北陸新幹線と同じになることはないですが、参考として仮に同様な傾向になった場合、現在の山陰本線はいくつかの第三セクターへ切り替わることになります。またその時には、現在の山陰本線の売り上げは全て新幹線が持っていくことになり、そして経営分離された各路線の売り上げは新幹線の8分の1程度となると。。

国鉄がJRへ民営化されるときに、廃線かバス等への転換の目安として、輸送密度 4000人/日 というのがありました。これを下回っている場合が対象になります。
山陰本線の場合、京都ー城崎温泉、鳥取ー出雲市がギリギリ路線として残る限度になります。
売り上げをみても1億少しでは保守メンテなど不可能かと思われます。
だからといって自治体がいつまでも補助はできません。自治体だって予算がないのです。

つまり山陰に新幹線が通った場合、城崎温泉ー鳥取間と出雲市以西は切り捨てられる、ということになります。もちろん伯備線も輸送人員の大半を新幹線に持って行かれる可能性があるため、廃線を逃れることはできないでしょう。

豊かな鉄道環境

何年か前に青春18切符を使って旅行をしたことがあります。山陰本線から伯備線、山陽本線、智頭急行、因美線、山陰本線で一周したことがあるのですが、岡山から姫路に行くことが大変だったことを覚えています。
山陽本線といえば、多くの電車が走っている印象ですが、実際には姫路以西は各駅停車の列車しかなく、本数も案外少ないのです。#その代わり貨物列車が多い。
それに比べると山陰本線には普通列車はもちろん、日本で唯一の寝台特急が走っていたり、特急列車の種類も多く、観光列車も「瑞風」と「あめつち」が走っており、とても豊かな鉄道環境が残っています。
日本海沿岸をのんびり走る列車からの車窓はとても旅情があってよいものです。

というわけで、山陰に新幹線は要りません!

要りません。はい。

ちなみに個人的には山陰新幹線を作る代わりに、まずは伯備線の全線複線化を希望したいところです。
#中国横断新幹線は費用対効果が薄いので諦めてください 。その代わりに複線化です!
すれ違い待ちの停車がなくなるだけでも随分短縮されると思います。
そういう意味では、米子ー出雲市間の複線化も合わせてですね。
米子ー出雲市間は輸送密度も6000人/日を超えてるので、頑張ってほしいです。

参考資料

ウィキぺディア 「山陰新幹線」 https://ja.wikipedia.org/wiki/山陰新幹線
鳥取市ホームページ 「山陰新幹線の早期実現に向けて」 http://www.city.tottori.lg.jp/www/contents/1468477763551/index.html

ぽぽぽにゅーす 「石破茂氏 山陰新幹線は、単線での建設も考えるべき」 http://www.axis-cube.com/2018/02/13/16577/
北山敏和の鉄道いまむかし 「25 新幹線発達史 整備新幹線関連資料」  http://ktymtskz.my.coocan.jp/sinkansen/nozawa2.htm
ウィキべディア 「整備新幹線」 https://ja.wikipedia.org/wiki/整備新幹線

JR西日本 「データで見るJR西日本 鉄道事業 P.56-59」  https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/data/pdf/data2018_08.pdf

IRいしかわ鉄道 「会社案内 経営状況」 http://www.ishikawa-railway.jp/company/conditions.html
あいの風とやま鉄道 「会社情報 決算情報」 http://ainokaze.co.jp/company/management
えちごトキめき鉄道 「経営計画・決算情報」 https://www.echigo-tokimeki.co.jp/company/management-plan/

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