【スイクラ】09:ファンブック感想
闇しか見えないお祝いイラストに箔の使い方がエグすぎる表紙に綴じられたスイクラ読本『スイートナイトメア』、誇張抜きで女王様ことファンの必携書でした。こんな素敵な本を作ってくれてありがとうTAKUYO! 好き! という感想文です。
購入を迷ってる方向けの中身説明(ネタバレ小)、古橋だいすきな私のざっくり感想(ネタバレ中)、それから書き下ろしSSへの感想(ネタバレ大)の3本立てです。ご自身の許容範囲、許容量をご確認の上で読み進めてください。
■内容紹介(という名の宣伝)
構成としては、まずキャラごとに
・キャッチフレーズとプロフィール
・私服/盛装の全身絵、表情集、鍵となる台詞
・スチルと共に送るストーリーダイジェスト
・そのキャラの負う“おとぎ話”
があり、それから
・各キャラの初期設定ラフ画
・背景画集
・書き下ろしSS『廃忘する半身の憂い』
・ライターお三方のコメント
でフィニッシュです。ざっくり。
追うのが難しいTwitterネタや、今となっては入手が難しい(できなくはない)雑誌掲載のプロフィールに見開きイラストやピンナップ、クリアファイルになったイメージイラスト、現在は閉鎖されていて確認できないブログ内容など貴重な要素はもちろん「それは初出では……?」という情報が上質な紙と印刷で散りばめられていて、まさしく『スイクラ』の集大成でした。
Vita版だけやった人もSwitch版で初めて招待された人も両方やった強火勢も、書き下ろしSSで明けない夜を踊ろうね!(心から血を噴き出しながら)
■SS以外の感想(主に古橋)
初めて見る気がする私服のお足元と口を開けたにっこり笑顔ありがとうございますありがとうございますこれだけでお値段以上ありがとうございます(五体投地)
ブーツ……紐……自分で結べたのかな大丈夫かな実は毎朝格闘してたのかな尊…………跪いて結んで差し上げることを許される栄誉に浴したい……(ここでいきなり泣き出す信者)
笑ったお顔は珍しく歯を見せている無防備さもありながら口の開け方はそれでも控えめで品が良く、このかわいさと美しさを兼ね備えてるところまさしく古橋旺一郎でぐうの音も出ない好き。ずるいお人だ……ずるいお人だ……。
古橋の金緑目はマリス由来では、とかいうところから先日ちょろちょろ考えてましたけど「ピンクに乗った血の色を反転させるとシアンに乗った黄緑になるよ!」というダイレクトアンサーも頂き感謝しかない。やっぱりマリスが薄れると彼本来の持つ水色が出てくるとかそういうことなんじゃないか……今度CGソフトでじっくり検証します……。
サブキャラのプロフィールも初出だと思うんですけど、
・道化師様181cm61kgでお前は本当に元の体を手放して来たのかそれとも子供の体を乗っ取るたびまずは181cm61kgに“改変”したのかどっちだ。あと好きな色についてちょっと話し合おう。というかあなたのお話をお聞かせください。いいからそこにお座りください頼むから。
・ケイファの好きなものはロッサ、嫌いなものはグラナダを差してるんだろうか。私としてはその評価は逆なんだが?(グラナダについては一歩も引かないし絶対に負けないぞの顔)
・クランが上のきょうだいラズが下のきょうだいと確信しましたありがとうございます。報われぬ弟妹の一方通行……!(本編のあれこれを思い出しながら)
あと日之世編はやっぱり自喰で“魔”が降りることから始まるとかケイファとガートの馴れ初めとか真井はお茶会のナイフだよとか、重要な情報をしれっとさらっと書いてくるTAKUYOほんと好きだなって思いました(呆然としながら)。
モチーフの童話は“どの”それなのか明記してくれて大感謝。でも記載されてる以外の話もいっぱい練り込まれてるでしょちょっと詳しく聞かせてくれませんか。いや考える楽しみも残してくれてありがたいけど答え合わせ……。
あ。答え合わせといえば、扉ページのテキストはSwitch版をやりながら考えてた解釈がさほど間違ってなさそうな解答を頂けてガッツポーズでした。怖いなぁスイクラ城!(嬉々としながら)
で、他のキャラのモチーフをぼんやり見て思ったんですけど。
密原は支配、久瀬は独占、日之世はシャーデンフロイデ(メシウマ)……だけど改変された彼のテーマは「愛する人とふたりで生きること」。で、それぞれのモチーフが満たされることで「めでたしめでたし」だったと思うんですが。
古橋は支配欲、独占欲、生存欲のすべてを強烈に持ちつつそれらをデストルドー(死の本能)が覆ってるので、どうしても満たそうとすると赤い服の王様まっしぐらになってしまう。だから彼の仕合わせって、常に満たされない状況なのかな。狼が赤ずきんを愛するってそういうことだよな……と思ったらなんか悲しくなってしまったし性癖ド真ん中でどうしたらいいかわからない。どうしてこの人は発売7年目にしてどんどん好きにしてくるの。
■書き下ろしSS感想
という流れで『廃忘する半身の憂い』ラストでぶん殴られたのたまらないんですが。ええ、知己と知也の話だろうと思ってて完全に油断していたところを殴られたんですが。
やっぱり本編(特にSwitch版というか2周目以降)は目に止まったその辺の少女に女王様≒橿野柘榴を降ろす生贄の儀式と解して良いのでは? って冷静に考えようとしても古橋古橋古橋あーーーーーーーーーーーーーーーー(号泣)ってなってだめです。
バンドネオンの練習をしたがってた彼は見せかけの「紛い物」で本当はこうして苦しみ続けてたということなのか…………。
たしかに真相における柘榴ちゃんが真井以外の生い立ちを知るべくもなく、真井以外の幸せについて願ってるはずもない。「真井知己さんの幸せな世界」には城での体験と自身への否定も含まれるだろうから具体的には「城に来る前の状態に戻す」だろうことは肯けて、なら古橋は“匣”の中、日之世は荒れた生活、密原は女の子たちとの楽しい生活()に逆戻り、久瀬に至っては消滅でそんな馬鹿なことがあってたまるか。
何がきついって結局「誰かを犠牲にしてまで城を出ようとは思わない」という知己の思いは踏みにじられてるし、知己が柘榴ちゃんを求めてすべて捨てた時点で「真井知己さんの幸せ」を願った柘榴ちゃんの気持ちも踏みにじられるんですよ。何してるのこのふたり。真相深愛グッドとは?
知也の発言もどこまで信じて良いものやらですよ。
「一つになれた時点で良かった」「心は誰の物になっても良い」って言うけど柘榴ちゃんが本当にスイクラと一つになれるのって他のルート(歪愛か古橋深愛グッド)だし、古橋編では「心は誰の物にもならないだろうから体でどんなに欲を感じても良かった」と真逆のこと言ってるし、そもそも知也の願いは「結婚すること」だったはずで、ファンブックSSで言ってることはおかしいんですよ。
もちろん本編の発言の方が正しいなんて保証もないけど、これは知也というより知也の残滓を“悪用”した悪魔の虚言と考えた方が良いのでは。
さらに言うなら古橋の所に行って古橋の願いを叶えつつ古橋を共犯……言うなれば“対”にしようとしてる辺り、ロッサの残滓も感じる。
つまりふたりの弟を利用して悪魔が復活を果たすべく、宿主である知己を誘惑している可能性。けど真井家は「考えない」ことを是とするので可能性に気付けない。知己自身も、ストッパーになるべき家族も。
知己は物理的には「いつも家族がそばにいてくれた」と言うけど、精神的には橿野家と同様に放棄されてたと感じられて悲しい。そんな空虚な関係で「家族」をやってきたからこそ真相で無思慮に弟役を買って出ちゃえばすべてを捨てて別の誰かになっちゃうわけで、やはり彼についても「保護者何してんだふざけんな」案件だし、どれだけ苦しむ羽目になろうとも考え続けた先にしか“希望”は見出だせないのでは。だからこそ城に来た時点で思考力、判断力が奪われるんだよたぶん。
とまぁ……知に思いを馳せたところでどうしても古橋に戻ってきてしまうんですが……。
Switch版は古橋の表情が違うのなんでかふしぎだったんですけど、ファンブックSS後なら知に協力するため新たにマリスを宿して彼の在り方が変容したってことかな……フォントカラーも赤み(R値)が増してるもんな……。
それが知に与えられたマリスならロッサ成分も入ってるはずで、部分的ながら兄弟ひとつになった古橋がSwitch版と考えると動揺で挙動不審になります。あのやや明るく素直な表情はロッサ由来か、あるいは欠落が僅かなりとも埋められたためという。どうだろ。よくわからないけど泣きます。
欠落が埋められて表情に色が戻るなら柘榴ちゃんに選ばれた後は喜怒哀楽が素直に表現されるようになるんだよその一端が今年の誕生日とAGFツイートだ! 世界よありがとう古橋がどんどん美しい。というわけで私は早急に古橋深愛グッドに帰らなくてはならない。
完全新規マリスの場合はどう受け取るべきかもう少し考えます。テンション上がった結果の表情の変化ならちょっと心配。
そして欲しかった古橋新要素がこんな流れで実現したというなら私はどう受け止めるべきかひたすら考えたいと思います。結局のところ「あなたを苦しめたものを許すことはできないけれど、その苦しみすべてを内包したあなたの美しさは疑う余地がないし、私は何度だってあなたを青空の下に連れて行く」で変わらないのかな……。
■まとめ
井上さんの「(古橋は)はっきり言えば人殺し」という言葉が強烈に印象に残りまして。私はどうもその認識が薄いし、書き下ろしSSも含めて「だから苦しんで当然」と言うだろう古橋には「ふざけないで」と泣き怒りしたくなっちゃうんですよ。それはなぜなのか、それは“正しい”ことなのか。古橋好きである以上は、考えてかなきゃいけないことだなと沈痛な顔で本を眺めています。スイクラはつくづく自己と向き合わせてくれるので本当にありがたい。
Vita版が“姉”、Switch版が“弟”、本が姉と弟を繋ぐ糸で、『スイートクラウン』が円環の物語であるなら、今度こそこれで完全体で新しい動きはもう望めないかなぁ……と考えると寂しいものもあるのですが、まだまだ考えたいことは山ほどあるし、時を経ればまた違った見方ができるのは実証済みだし、これひとつで完成してると思ったVita版からSwitc版と本でさらに世界を広げてくれたので今後も何が起きるか読めなくて楽しみで、つまりまだまだ一緒にいられるのが嬉しいです。
最後に。本で一番笑ったのが白鳥さんの「“そうじゃないじゃん……?”」でした。相変わらず密原は場を和ませてくれるな!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?