殺処分ゼロを訴えるなら~神奈川県警の事例から~
神奈川県警が押収した犬猫80匹が行方不明「ありえないことが起きている」
犬猫107匹中80匹が行方不明というニュースが入ってきました。
この事故で一番よろしくないのは、委託された動物愛護団体です。
それはみなさん一致だと思いますが、この事故に至った背景を考察します。
はじめに
まず最初に話しておきたいことが2つあります。
県警や神奈川県を批判しているわけではないし、このニュースや私の放送を聞いて、間違っても神奈川県警や神奈川県動物愛護行政に苦情を入れるようなことは絶対にしないでください。
そこで働いている人たちもむしろ被害者です。殺処分ゼロを強要された被害者とでもいいましょうか。なので苦情いうのはおかど違いです。
ふたつめは、これから話すことはあくまで憶測にすぎないということです。
県警と県動物愛護行政(愛護センターや保健所、主管課)でどのようなやり取りがあってこういう自体に陥ったかは明確になっていません。あくまで私の憶測にすぎないです。
その点はご理解したうえで読み進めてください。
ではなぜこんな発信をするのか?
それは私が今から話すようなことが明日起こるかもしれないのは間違いないからです。
今回は私の憶測と現実が違ったとしても、このまま殺処分ゼロを無理に続けていれば明日発生するリスクがあるのです。
だから憶測だとしてもここで書いて、無理な殺処分ゼロ達成の弊害を伝えたいと思ってます。
本題に入る前に前提となる先日の『神奈川県、大丈夫そ?』の放送を簡単におさらいします。つまりは神奈川県の動物愛護行政の実情です。
文字が希望の方は記事を読んでください。
神奈川県動物愛護センターは、犬75匹、猫90匹を収容キャパとしている施設です。
そこに猫がキャパの倍以上、200匹収容されているという報道がありました。
取材時と今では収容頭数は少し変わっていると思いますが、いきなり半分になったりはしてないと思います。
なぜこのようなことになっているかというと、殺処分ゼロを掲げて、寄付金を募っているからです。
殺処分ゼロにするためにやっていることは、民間動物愛護団体への譲渡と、自分のところでキャパオーバー収容ということです。
本件の概要
さていよいよ今回のニュースに入っていきます。
まず、動物虐待事案として警察が家宅捜索をして犬猫107匹を押収しました。
虐待事案として家宅捜索を実行したことはまず称賛に値すると思います。神奈川県警よくやりました!
しかし警察はそんな数の動物を収容できる施設をもっていません。このような場合、県の動物愛護センターと連携して、愛護センターが収容するのが普通だと思います。
普通といえどそもそもこの数を押収すること自体普通ではないのですが、拾得物扱いで警察に入った犬1頭を保健所や愛護センターが預かるというルートは普通にあります。
なので、県警と県愛護センターの連携でセンターに収容するのが、普通の公務員獣医師が考えるところです。
でもそれをやらずに、いち民間の動物愛護団体に警察は委託しました。
ここにはなんらかの理由があったことが想像されます。
原因のキャパオーバーとその源流「殺処分ゼロ」
その理由こそ、動物愛護センターの大幅なキャパオーバーです。
物理的に入らない。
前回の記事では猫が収容頭数キャパ2倍オーバーと言いました。
でも犬は収容頭数に達していないことから、おそらく猫が犬の施設を使っているような気がします。なので正直いうと実際には猫が密度2倍で収容施設に詰め込まれているということはないと思います。
でも犬はその分収容できません。
2021年にはひとりの飼育者から猫130匹の引取りもあったみたいですし、県の愛護センターも仕方ない部分はあったと思います。
こういう場合、キャパオーバーにならないように殺処分の判断がくだされます。
が、それをせずにキャパオーバー状態が続いていた。
こんなこと言いかたしたくないですが、飼い主依頼で所有権放棄の上引取った猫は法令上殺処分できます。
一方で警察の押収物は所有権放棄ではありませんし、殺処分はできません。
なにが言いたいかというと、これまで収容されてきた動物の殺処分を実行して、愛護センターがキャパを正常に保っていれば、今回のように警察が信用できない愛護団体を頼る必要もなかったということです。
愛護センターがキャパオーバーという異常自体になっていなければ、今回の事件は起こらなかったと私は思っています。
まして警察の家宅捜索なんて、ある日突発的に行われるものではありません。
捜査情報は秘密でしょうが、押収する前に県に相談があったはずです。
民間の団体に委託している結果をみると、押収前に民間に相談があったはずです。
家宅捜索から押収物の委託まで何日あったかはわかりませんが、家宅捜索して押収してから初めて委託の話をしたとは思えませんので。
民間に相談できるようなことを県に相談できないはずがないのです。
つまり県愛護センターには県警から相談があったけど、キャパオーバーを理由に断ったのではないかと思われます。
そしてなにより、キャパオーバーの源流は「殺処分ゼロ」です。
殺処分ができないからキャパオーバーになるのです。単純な話です。
これが私の憶測です。
悔しい
動物虐待を検挙して欲しい。
警察に動いて欲しい。
保健所や愛護センターと協働して、時には捜査に乗り出して欲しい。
私は普段からそう願っています。
保健所職員であったときは特にそう思うことも多かったです。
最近ようやく警察も動いてくれるようになりました。
やっと動物愛護行政と動いてくれるようになって時代が変わるフェーズに入ったと思ったら、今度は動いてくれた県警に動物愛護行政が協力できないという自体になってしまった。
本当に、悔しい。
全ては殺処分ゼロにこだわった結果です。
繰り返しますが、万が一憶測が間違っていたとしても、明日これが起こるかもしれないんです。
もういい加減殺処分ゼロなんて表面だけ見て主張しないでください。
殺処分ゼロとか言ってる愛護活動はもっと頭を使ってください。迷惑です。
神奈川県動物愛護行政で働いてる人たちだって可哀想すぎます。