動物を引き取った後の想像は難しい
前回、動物を引き取らない理由を書きました。
今回は更にプラスして書いておくべきことを記します。
前回の記事はこちら
ケアマネさんの視点
引き取って欲しいと依頼をしてくれる福祉従事者さん(主にケアマネさん)は、動物がいなくなれば問題は解決すると考えています。
動物がいなければ入院がスムーズにいく、引っ越しできる、家がきれいになる等。
確かに私よりも飼い主とその生活について把握しているのはケアマネさんです。そのうえで動物を手放せばうまくいくように思うのはよくあることです。
ただ、動物がいなくなったあとに何が起こるかを知っているのは私です。
やまがたの責務
では何が起こるのでしょうか。
精神的ショックと身体の衰えです。
ペットがいなくなることの喪失感は、予想以上に大きいです。
それが野良猫だったとしても、自分で引き取って欲しいと依頼したとしても、その喪失感は本人の予想以上に大きいものです。
結果的に生きがいを失ったといっても過言ではない状態まで落ち込んでしまいます。
脳や身体を動かすことも極端に減ります。
特に高齢者の場合、動物の世話をして、動物を撫でるというルーチンワークがなくなると運動機能が極端に落ちます。筋肉も落ち、筋肉の衰えは身体機能の衰えと健康寿命の短縮の原因になります。
エサを買わなければ、散歩をしなければと考えることはなんだかんだ頭の体操にもなっています。それも減ります。
心身の衰えにより認知症は進み、覇気もなくなってしまいます。
まさにQOLの低下になります。これは担当ケアマネさんも飼い主本人も予測できていない未来です。
まさか動物がいなくなるだけでこんなに変わってしまうとは。
なので、引き取り依頼の相談があった場合はこの話を必ずさせていただきます。
それが「動物がいなくなった後に何が起こるか」を知っている私の責務だと考えているからです。
ではどうするか
もう飼えないと宣言する飼い主に無理して飼わせることは、人も動物も不幸になります。なので私は原則引き取り依頼は受けるべきと考えています。
ただ、私が介入することでもう少し上手に飼うことができるようになることがあります。手放すしかないと考えていたけど、こうやればいいんだとわかってもらえることがあるということです。
こうなると動物も人もQOLがあがります。
介入して飼い方等を改善していく中で、本当に飼うことができなくなった時の話をしておくようにもしています。
ここまで来てから引取りの話をすることで、引き取ったあとのことについても話すことができます。
ケースバイケース
実際にはどっちが正解かはケースバイケースです。
すぐに引き取って動物が福祉現場からいなくなることが正解のこともあります。
私が介入して助言することで、動物を適正に飼い続けることができるようになる可能性もあります。
どちらが正解かは、福祉現場をみて、飼い主の心情を読み、飼い主とケアマネと私で話しあわないと見えてきません。
相談をくれるケアマネさんの中には、猫を飼うことがストレスになっていることもありますよね!?と少し切れ気味で引き取ってもらえないことに納得できない方もいます。
そのような方にも私の経験からくる提案を理解していただけるように私も成長しなければなりませんね。
実例
入院するから犬を引き取って欲しいとケアマネさんから相談のあったケースを紹介します。
初見で引き取りの相談だったので、すぐに引き取らずにいました。
その後、入院中は近所の方が世話をしてくれることになっていました。(入院中の犬をどうにかしたいという相談なら当院も力になれます)
入院中の飼い主は「早く退院して犬と生活がしたい」と口にして入院生活を頑張っていることがわかりました。
ケアマネさん最初の相談で私が犬を引き取っていたら、飼い主はどうなっていたでしょうか。
一応言っておきますが、これはケアマネさんが悪いわけではありません。動物がいて入院ができないからどうにかしたいと思って相談をいただいたので、それも飼い主の健康福祉を考えたうえでの行動だったはずです。
ただ、このケースにおいてその要求は結果的に不正解だったのは間違いないです。
動物がいなくなった先になにが起こるかを想像するのは難しいです。
飼い主が退院してきたときには、次に飼うのが難しくなった場合の準備をするように促すことが重要です。
入院という有事の際に、飼い主もこれからのことを改めて考えているからです。
次、何かあったら山形さんよろしく、となるかもしれない。
実は一緒に可愛がってくれていた近所の人がいるかもしれない。
そうやって準備を進めることも可能になるのです。