
50歳からはじめるデジタルモデリング 第5話「挿せないで」
バンブーラボA1 miniのあまりのチープさ…もといコンパクトさに驚きを隠せない私。これに約¥30000支払った自分の判断の正しさを誰かに担保してほしかったが、無論そんな相手は存在しない。世界で唯一いつでも無条件に私の味方になってくれていた祖母は、数年前に鬼籍に入っている。ばあちゃん、俺また失敗しちゃったかも。
晩飯の後再び自室に戻り、焦りによって血圧が上がるのを感じながら付属品と思しき細かいパーツや、ペラペラの冊子を取り出していく。冊子もちゃっちいな。これはいよいよやらかしたかも知れん。もう悪い予感しかしないではないか。ここから大逆転のパターンある?

いや、いやいやいや。大切なのはこのマシンからどんな素晴らしい造形物が生み出されるかだ。この機体は簡単操作で初心者にも優しく、それでいて従来のFDMとは比べ物にならない程の精密な出力が売り。
事前に記事を見つけておいた先輩A1 mini使いのブロガーさんによると、セットアップを始めてわずか20分で出力作業が出来るとか。セットアップ。とにかくセットアップさえすれば夢の3Dプリンター生活が始まるのだ。「セットアップ…セットアップ…」取り憑かれたようにブツブツと呟きながらビスを嵌めたり外したり。このビスも使い慣れたプラスドライバーを使うものではなく、付属の六角レンチを使うタイプ。めっきり酷くなってきた老眼がもどかしい。
慣れてないのでたかがビス止めに何度も失敗しつつ、やっと全てをねじ込み遂にスタンバイ完了。あとはコンセントを挿して電源をいれるだけというところまで漕ぎ着けた。
ちなみにここまでで約1時間が経過しており、約束の20分はとうに過ぎている。だが、まだ終わりではなかった。コンセントを挿し込もうとコードを手繰り寄せた私の目に飛び込んできたのは、衝撃的な映像だった。

「な、なんじゃこりゃあー!!?」と素で声に出てしまうくらいの驚愕。コンセントの差口が三叉に分かれているではないか。何これ。海神ポセイドンの主力武器である三叉の矛トライデント以外の物が三叉になってる事ある?
絶対無理じゃん! と脳内でセルフ突っ込みしつつ、ぶるぶると震える手で我が家のコンセントに挿し込もうと試みるも、当然真ん中の棒が邪魔して入らない。えっ!? ユニバーサルデザインじゃないの? 我が家のコンセント全部同じ形状なんだけど? つまりウチではA1 mini使えないってこと? 3Dプリンターのために家をリフォーム!?
叫び出しそうになるところをギリ踏みとどまりつつ、前述のA1 mini使いさんのブログを開く。並行して脳内でAmazonの返品プロセスを高速で思い描きながら、血走った目のまま画面をスクロールさせる。すると、ブログの一番下に驚くべき記述が。
事前に用意するもの•••コンセントが3口となっているため、2口へ変換するアダプターが必要になります
い、い、一番上に書けやああああああ!!!!!
つづく
