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50歳からはじめるデジタルモデリング 第0話「これまでのあらすじ」
まずは、もともとはTwitter(現X)に拙いプラモをアップして肥大した承認欲求を満たしていた中年が、なぜデジタルモデリングに挑戦しようと思ったのかを記しておく。
そもそもの発端は創作サークル「SwampWorks」に勧誘された事である。SwampWorksとは、ホビー界の現人神•モデリズム小林和史さんが生み出した「メカトロウィーゴ」のカスタムパーツ等を製作しワンダーフェスティバルで販売する事を目標として立ち上がったサークルで、主にTwitter上に作品をアップしていたモデラーたちがそのメンバーであった。
結成当時は全員が手探り状態。失敗しながらシリコンで型取りをしてレジンを流して複製したりしてた。スタートラインは横一線だったのだ。
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たがこのSwampWorksのメンバーは実は一騎当千の猛者ばかりで、最初期こそアナログ製作だったものの、あっという間に3Dプリンターを導入してオリジナル作品をバンバン発表したり、作品が製品化されてガチャになって全国で販売されたり、アナログ造形を極めて市販の製品並のトゥルトゥルの原型を作って複製販売したり、オリジナル作品のソフビ化を目論んで色んな準備を着々と進めてたり。
えらいところに所属してしまったと気づいた時にはもう遅かった。言うといてや。「自分たち天才ですけどアンタ大丈夫ですか?」って加入時に言うといてや。商店街の野球好きのおっさんが誘われて入ったチームが、蓋を開けてみたら大谷率いるドジャースだったみたいなものである。
一方私はというと、パソコンがまともに使えないのでデジタルモデリングへの移行は絶望的な上、モデラーとしての腕も大した事無く、神にも匹敵する超絶スキルを持つ原型師たちとアナログ造形で戦うのも無理。Twitter(現X)にアップしたプラモの写真だけではいいねが稼げず、私生活を切り売りするかのように日常の出来事をつぶやいて何とかバズろうとSNSの最底辺でみっともなくもがく日々を過ごしていた。
こんなんじゃダメだ! と思いながらも重くなった腰が上がらず、CADソフトのAutodesk Fusion360をインストールまではしたものの、何も作らず気がつけば数年が経過していた。自宅のノートパソコンが激重になったのだけが我が家に起こった変化だった。
そのままサークルを脱退するという選択肢もあったのだが、現実世界では友達が一人もおらず、広大なネットの世界でも居場所はSwampWorksのみ。自分の居場所を守るためには他メンバー並の作品を作るしかなく、そのためにはデジタルモデリングの技術習得が必須だったのである。
つづく
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