見出し画像

パラサイトの流行ロジックを考えてみた。

 こんにちは!Yocchanです!今回から「トレンドロジック分析」といったものに取り組んでいこうかなと思います!(完全に思いつきです笑)
 現在政府からの外出自粛要請を受け、自宅でエンタメコンテンツを楽しむ人々が増えているのではないでしょうか?これからエンタメコンテンツを発信していくために感情的なものだけではなく数字で「これ何でこんなに流行ったんだろう?」を解説できたらかっけーやんと思ったのがきっかけでこの企画を始めることにしました(単純)
 主観交じりの拙い考察ではありますが、見ていただくだけでも幸いです😺

 今回分析していくのは「パラサイト 〜半地下の家族〜」です!!テレビなどでもすごく話題になっていて、アジアの映画作品で史上初めてアカデミー賞優秀作品賞にノミネートされたとか。そしてあのカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドール賞を受賞しているということで、かなり興味を持っていました。個人的にカンヌ国際映画祭に関わった映画が好きなのです。(まだ日本のものしか見ていないのであまり語れませんが...😅)「誰も知らない」、「そして父になる」、「万引き家族」。是枝監督の作品が好きなだけじゃないの?という声もあるかと思いますが、カンヌ国際映画祭には強い関心を抱いています。笑 何かオススメのカンヌ作品などありましたらコメントで教えていただければ嬉しいです!

パラサイトが何故流行したのか

 まず最初の分析テーマとしてみなさんご存知この映画を!

基本情報
監督:ポン・ジュノ氏
制作国:韓国
配給:ビターズ・エンド
公開日:韓国→2019年5月30日
    日本→2020年1月10日
興行収入:2億5351万523ドル(約265億9000万円)(2020年3月13日時点)
(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/パラサイト_半地下の家族
    https://movie.jorudan.co.jp/cinema/38042/
    https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200313-00253590-yonh-musi

映画を見た感想としては「圧巻」でした。映画のリアリティ、韓国の現状が浮いて見えて来るような描写、所々に散りばめられた生活の変化を表すパーツの全てが結びついて1つの作品を作っている感じ。僕自身あまり邦画以外の作品をみることはなかったのですが、話題になっているからという至極単純な理由でも見に行けて幸せでした。

映画界での評価

第72回カンヌ国際映画祭にてパルムドール賞受賞(最高賞・韓国映画初)
第92回アカデミー賞にて6部門にノミネートされ、作品賞を含む4部門を受賞。
これは非英語作品では史上初で、アカデミー賞とパルムドール賞の同時受賞は65年ぶり。

PEST分析

ここからそれぞれの数値について分析していきます。パラサイトという映画は私の印象では「韓国社会のリアルを突き詰めた映画」です。私自身韓国に行ったことはないのですが、韓国社会は大学受験で有名なように明確な格差が存在していると聞きます。成功と破綻が相容れない社会の中で生活を共にしていく姿を描いたところにこの映画の流行と面白さのミソがあるのではないかと考えています

P・・・Political
最初に政治的要因について。韓国の政治体制は以下のようになります。

大統領制を取り、再選禁止となっております。国民投票の元、大統領が5年間の任期を全うする・・という感じですね(そのまま)わかりやすい日本との相違点といえば以下のポイントじゃないですかね。

・立法:解散がない
・行政:再選禁止、直接選挙(大統領)
※政治については詳しくないのでここらへんで。

 韓国の政治について触れる上で、隣国である北朝鮮は欠かせないでしょう。この映画のサブタイトルにもなっている「半地下」というワードは1960年代に北朝鮮との関係が悪化していた時代に、北朝鮮からの襲撃に備えるために作られた建物の構造のことを指します(日本でいう戦時中の防空壕のようなもの)。今も多くの若者がソウル近郊の半地下アパートで暮らしているそうです。映画の中では「貧しい人の住む場所」という意味合いで用いられていますが、実際には節約して他のことにお金を使う方であったりその住居を利用して何かに取り組むといったように半地下アパートでの生活をポジティブに捉えている方もいるようです。以下のサイトにその例もありますのでご参照いただければと思います。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-51440581
 2019年には北朝鮮の大陸間弾道ミサイルの実験が複数回、そして新型兵器の実験が次々に行われたこともあり、韓国国内で国内情勢の不安なども高まっていたことが予想されます。もちろん2国間の関係が悪化し、戦闘が始まるということがあれば半地下アパートは身を守るための手段として使われることになるでしょう。こうした事態に対する人々の不安感も、半地下アパートとこの映画に関心が高まったのかもしれません。
 以上より、多くの人が北朝鮮との関係悪化とその時代からの名残とも言える半地下アパートの現状を肌で感じていて、その生活を一般の人に向けて発信したところに多くの韓国に住む人は共感を覚え、それ以外の人は韓国という国自体の現状に踏み込む機会になったのかなと一旦結論づけさせていただきます。

E・・・Economical
経済的要因の分析に移ります。韓国の実質GDPは1980年から2019年にかけてこのような推移をしています。

リーマンショックなど経済のマイナス局面で下がりはしているものの、基本的に上昇を続けています。2019年はコロナウィルスの影響を受けて下がっており、2020年も世界的な不況と同時に危ぶまれていますね...
 2018年には米中貿易摩擦による中国の景気後退がありました。韓国はアジア諸国の中でも輸出依存度が高く、(2019年で約37.5%、日本のおよそ3倍)最大の貿易相手国である中国の影響を受けていることは大きいかと思います。

これは2018年のデータになりますが、輸出割合の26.8%を中国が占めていることになります。韓国の企業として多くの人が浮かぶのはSAMSUNGやLGなどメーカー色の強い企業ではないでしょうか。対外輸出先のNo.1である中国の景気後退→韓国企業の輸出減という流れは容易に想像できるのではないでしょうか。こういった経済的な不況がある背景でも、パラサイトは韓国国内だけでなく全世界に広がり、爆発的なヒットとなりました。
「景気サイクルと映画産業受給推移の相関関係についての考察」(リンクは以下参照)によると、【イギリスのロイター通信は、「英国の劇場のチケット販売と景気サイクルは反比例する傾向がある」とし、その根拠として「英国のマルチプレックスチェーン(Multiplex Chain)のオデオン(Odeon)が作った ポップコーン指数」を紹介している】そうです。以下、ポップコーン指数の例となります。

金融危機直後の昨年第1四半期、国内総生産(GDP)が2.5%減少した時と2009年3月、失業者が20万人に達した時の映画館のポップコーンの販売は好調を維持している。また、US ニュースのワールド・レポートでは、2009年の世界的な景気低迷期に廉価な娯楽を求める人が増え、「アメリカ映画のチ ケット販売は前年に比べ16.5%上昇している」と書いてある。
(韓国経済[2010/01/12]「劇場ポップコーンが売れなくなるのは景気復活の 兆し」、朝鮮日報[209/03/18]「コンドーム...映画...不況だから好況」を参照。)

この論文内にある情報のように、「不況時は経済と映画の興行収入は反比例し、パラサイトのヒットもその例に習っている」という可能性が見えてきました。少し話はずれるかもしれませんが、確かに映画は一回日本だと約1,500円と安価で楽しめるエンターテインメントでもあり、現在では日本全国にシネコンやミニシアターが存在している点から見ても「手に入りやすく消費しやすいエンターテインメント」に思えますね...
 ここで結論づけるのは少し早計かもしれませんが、パラサイトのヒットの背景には最大の貿易相手国である中国経済の停滞によって韓国企業の輸出額が減少し、景気後退につながったことで韓国に住む人々の安価なエンターテインメントへの需要が高まり、多くの人が映画館に赴くという流れができたのかと思います。そしてここには「ポップコーン指数」の理論が適用できる、と言えるのではないでしょうか。少し長くなりましたね、次に行きましょう。

S・・・Socialogical
 ここに関して政治的要因と被ってしまうので割愛します。

T・・・Technological
 最後に技術的要因です。ここでは技術的というよりは撮影地・方法とか小道具とかに焦点を当ててみたいと思います。
 撮影は韓国ソウル市近郊で行われました。特に物語の中心となる豪邸と半地下アパートは全てセットで撮影されたそうです。セットで撮影されているとはいえ、僕自身はすごくこの映画にリアリティを感じ、実際に韓国にいったことがないのですが「こんな感じの街並みなのかな〜」というように思いました。
 ポン・ジュノ監督曰く、雨のシーンを撮るのにかなり工夫したそうです。雨を降らせるシーンでは周辺地域の人にお願いしてお土産を渡していたりしたそうです。特殊効果や撮影スタッフだけではなく、周辺地域の住民に協力を仰いでいたそうです。撮影に関して技術だけではなく周辺地域の人々など多くの人の協力のもと作品を作っていったことがわかります。監督のこだわりが強く見えますね。大雨のシーンは裕福な家庭と主人公家族の埋められない格差を表しているようで特に見入ったシーンです。このシーンから「何か起こるんじゃないか」という気配が徐々に高まってきて...ここからは観た人には伝わるんじゃないかな?観ていない人はこのシーンは個人的に1つのポイントになっていると思うので、参考程度に!


STP分析

一通りPEST分析が済んだところで、次はSTP分析に移ります。
ここからはPEST分析と同様にデータに基づいて進めていきますがこれに関してはかなり主観的なものになるかと思いますが、何卒暖かい目で見守ってください(笑)

S・・・Segment
 どの記事からも特定のセグメントに向けた映画制作をしているような文言を見つけられませんでしたが、私の見解としてはこうです。

・韓国の現状を知らない世界中の老若男女
・韓国国内にて、自国の政治体制に対して不安を抱いている人々
・韓国に住む方の中でも、あまり社会問題について敏感ではない方々

映画が韓国国内の格差問題について触れていて、それを自国の人々も含めて全世界の人々に発信しています。ただ現状の韓国を伝えるだけでなくユーモアのある場面や各登場人物の奇天烈な発想、幸福場面に徐々に影が見え始めていくサスペンス性ががっちり結びついて全年代の人々が楽しみ考える映画になっているのではないかなと感じますね。

T・・・Targeting
年代の制限が12歳以上であり、内容的にも少し血など見づらい描写(言葉が見つからない)があるので若者向けではないかも...
どの年代・性別の人々を対象にしているのか書かれた資料については見つけられなかったのでここも割愛させていただきます。

P・・・Positioning
映画を見た所感としてドキュメンタリー感もありコメディ感もある流れの良い映画。以下のデータをご覧ください。

これは映画に関する情報の提供・シェアをする場であるアプリケーション、「Filmarks」の調査によるものです。(僕も愛用させていただいています)
このグラフで使用されている尺度である【累計Mark!数】とは、Filmarks内で使われている興味関心の数値です(レビューの数か単純な興味の指数なのかちょっとわかりません...)
ここに並んでいるのは「グレイテスト・ショーマン」や「ボヘミアン・ラプソディ」など近年流行した映画ばかりですが、10万累計Mark数に達するまでのスピードがえげつないです。

10万レビューに達するまでの日数を計算したランキングです。上記の名だたる名作品たちを抜いて1位となっていますね!この映画の注目度がいかに高いか、一目瞭然ですね。
(以上のデータは2020年3月28日時点、Filmarks社の資料を引用させていただきました。)
以上のデータをもとに検討すると、パラサイトのポジショニングは以下のように定義できると感じています。(基準は完全に自分の独断と偏見であり、もっとわかりやすい評価方法などあれば教えていただきたいです😅)

完全な主観ですが、話題性と実績ともに文句なしのトップレベルなのではないかと思います。日本での興行収入も45億円を超え、アカデミー賞とパルムドール賞の両方を取得し、名実ともに時代の映画となったのではないでしょうか。

結論

 パラサイトの流行の要因として、以下の点があげられました。
・米中貿易摩擦の影響を受け輸出業の停滞による国内経済の停滞
・北朝鮮との関係悪化による「半地下」というものへの関心の高まり
・世界中の人々の韓国についての関心
・国際映画祭での賞の受賞、それに伴う人々の興味関心の渦
 背景として作品の巧さは疑いの余地なく、国内情勢の変動などもこの作品のスマッシュヒットにつながったのではないかと思います。僕自身この映画を観て実際に韓国に行ってみたいと思い、またそこで観光地だけではなく半地下アパートのようにもっと実態に触れられる場所を訪れれてみたいなと思いました。韓国という国がどのような社会問題を抱えているのか、まだまだ分からないことも多いので...
 現在は中々日本を出ることも叶いませんが、その分映画のような文化作品に触れることで今のうちに各国の現状に触れていきたいですね!

 今回は以上になります!最後まで見てくださり、本当にありがとうございます。思いつきで始めてみたはいいものの、エンタメ作品って資料集めとか大変ですね...😅 定期的に続けて、考え方を広げて行きたいと思います!


参考文献
https://ecodb.net/country/KR/imf_gdp2.html
http://group.dai-ichi-life.co.jp/dlri/pdf/macro/2018/nishi190122korea.pdf
https://www.excite.co.jp/news/article/Searchina_20190722068/
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/gtir/2019/04.pdf
https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=2ahUKEwjPwuDYtt_oAhVkKqYKHVG0CuAQFjAAegQIARAB&url=https%3A%2F%2Ffukuoka-u.repo.nii.ac.jp%2F%3Faction%3Drepository_action_common_download%26item_id%3D672%26item_no%3D1%26attribute_id%3D22%26file_no%3D1&usg=AOvVaw25xP9-yK1sRtEA3mi0mH-1
https://www.rbbtoday.com/release/prtimes2-today/20200330/489624.html
https://www.nhk.or.jp/ohayou/digest/2020/02/0209_2.html


 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?