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17年前にもらった一通の手紙

「この手紙は岡田君に対してさしでがましいことかもしれないし、和田先生に対しても失礼かもしれない、と思いつつ書いている。」

中学時代の話です。

和田先生とは、母校・牛込二中時代の恩師です。
手紙の差出人は、「とある中学校の先生」です。

「君は何に遠慮しているのだろうか。チームスポーツだから一人でやってはいけない、自分が目立ってはいけない、と考えているのだろうか。もしそうであるならばその考えを変えて、『岡田のワンマンチーム』と言われるほど積極的なプレーをすべきだと思う。君がチームの全得点を取ってもいいんだ。『非難されるべきワンマンプレー』とは、敵が何人も待ち構えているところに強引に攻め込む無理なプレーや、ノーマークの味方がいるのにパスをしないでシュートにいくプレーのことだ。常にボールを欲しがり、ボールを持ったらすぐに攻撃をしようとするプレーは、むしろ『賞賛されるべきワンマンプレー』なんだよ。」

この手紙を受け取ったのは、中学3年の春。都大会に繋がるブロック大会を勝ち抜けず敗退し、現役最後の夏の大会に挑む直前の時期だったと思います。

当時僕のチームメイトにも良い選手がいましたが、たまたま自分だけが東京都選抜の代表に選ばれ高いレベルで経験を積んだことで、逆に自チームでのプレーに迷いがあったと思います。

手紙の差出人は、意外な人物。僕と同じ地区で教えている他校の先生でした。

手紙の内容は2枚にわたり、まだ続きます。

「それとも、東京代表で『これがフォワードの動きだ』という指導を受けて、それを守っているのだろうか。もしそうだとしたら、チーム事情が違うと言いたい。牛込二中には専門のセンターはいない。勝つためには、チームに最も貢献ができるプレーを選択するべきだ。今の君は、外からの仕掛けが多すぎて、以前ほどの破壊力と恐怖感が失われている。君の運動能力であれば、ドライブでもインサイドでのポストプレーもなんなくこなせるだろう。中からも外からも誰も止めることの出来ない選手になれば、君のチームは都大会も勝ち上がることができるだろう。」

僕は中学3年時には既に180センチあって、一般的には身長が高く、通常であればインサイドの選手、センターのポジションだったはずです。

ですが、将来はアウトサイドで活躍したいという思いが強かったあまり、必要以上に外のシュートにこだわっていたのです。

それはおそらく周りから見れば一目瞭然だったのだと思いますし、東京代表でフォワードのポジションでプレーさせてもらった経験が、さらにその傾向に拍車をかけたのです。

14才の僕は、何度も何度も手紙を読み返し、言葉の意味を感じ取りました。

「誤解しないで欲しいのは、牛込二中とは無関係の僕が偉そうに作戦を授けているのではないということだ。先日の負けた試合を見て『岡田は持てる能力の半分も発揮できていない、勿体無い。』と感じたからで、それを伝えたいだけなんだ。
(中略)以上に述べたことは、本来、和田先生に直接言うのがいいのかもしれないが、そうすることはチームの指導方針に関わるので、失礼じゃないかと思っている。だから君に対して、君が変わればチームも変わってもっと強くなるんじゃないかと、要らぬおせっかいとは知りつつも、伝えてしまっている。」

実は、恩師の和田先生からも同じことを言われていました。

「外からシュートを打つことは構わない。お前には先があるから、自由にやりなさい。ただし、リバウンドに行きなさい。背の高いお前が外から打ったら誰がリバウンドを取るんだ?」

この通り、指摘されていない訳ではなかったのです。でも、僕が頑固なだけで聞き入れていなかった。若いながら自分の頭で考え、なんとか自分だけで解決してやると意固地になっていたのでしょう。

でも今回、全く別のチームの先生にも言われ、やっと変わることになったのです。それだけ、この手紙に心を打たれたことを覚えています。

僕の中学校が勝ってもこの先生にはメリットが無いし、むしろ敵チームのライバルです。それにも関わらず、僕の将来を考え、こんなに長い文章を丁寧に書いてくださり、送ってくださった。

そんなことを思いながら僕は本当に感動し、「明日の練習から変わろう!」と決心したことをはっきりと覚えています。チームが勝つための最善の取り組みをしていこうと考えるようになりました。

手紙の最後に、このような言葉を書いてくださっています。

「君の能力を実際に見て、その可能性を信じ、君の人柄の立派さを人づてに聞くにつれ、君には大きく羽ばたいてほしいと思うから、この手紙を書いている。君の恵まれた素晴らしい能力を開花させる人生を生きてほしいと強く願っている。」

僕はつくづく、たくさんの素晴らしい出会いがあったおかげで、これまでの人生を歩んでこれたのだなぁと実感します。

この手紙をくださった先生が退任されるという話を人づてに聞き、このエピソードを書きたくなりました。

17年前の手紙が今でも僕の心に響き、今でも何かを教えてくれます。

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