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【短編小説】百秒のひとりごと

567文字/目安1分


 歩く時、最初に右足を出すか左足を出すか迷う時がある。誰も見ちゃいないのに、周りの目線がやたら気になる。休むことも大事だともっともらしい理由をつけて、今日の残りの予定を全部すっぽかす。
 やることは多いのに、まるで手につかない。時間はたっぷりあるはずなのに、いつの間にか一日が終わっている。
 すべてを無駄にせずにいられたら、もっといろいろと手に入れられるのだろうか。

 忘れるつもりで酒を飲んだのに、忘れたかったものがやたらと騒ぐ。浸りたいと思うと泥沼にはまって後悔する。
 頑張ったら頑張った分だけ疲れが残る。
 言われるがまま、起こるがまま、されるがまま、静かにいた方がよっぽど気力も体力も使わずにすむ。

 お金がほしいわけじゃない。
 休みがほしいわけでもない。
 もちろんあるに越したことはない。

 心配ごとを一つ落とすと、波紋のように広がっていく。同じことを二度三度と繰り返してしまう。思ったところで、ろくなことにはならない。というか、何にもならない。結論はいつも、考えても仕方がない。できることをやるだけなんだ。

 体が温まれば、冷えて凝り固まったものがささいなことに変わる。そうすれば何もかもいつものこと。あがろう。のぼせないうちに。冷めないうちに、今日はもう寝よう。

 日々のあれこれは全部置いといていい。また明日の自分がなんとかするさ。




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