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自分語りな自己紹介~少年期3~

「ヨーシ!オメー等よく来た!何だその面!笑。ボコボコじゃねーか笑。今日から正式に、うちら○○○のメンバーだから~、他の族に負けねー様に気合い入れてやってけやっ!」・・・いや、殴ったのあんたでしょ(汗)
特攻隊長と呼ばれる”H君”が仕切ります。
「うちら○○○は、イケイケどんどんだから~、ふざけた奴、なめた奴、端から潰して行くんでよろしく!あと○○○は女人禁制、薬物厳禁、黒髪短髪なんでよろしく~!」・・・何それ?

*チーム名、個人名は伏せ字とフェイクをいれて書いて行きますので悪しからず・・・

よりにもよって地元に幾つもある”暴走族”の中でも何代も引き継がれている
ガチガチの名門硬派軍団に入ってしまったのです・・・。

H君のチーム説明が終わると遂に”あの男”が動きます。そうです。
○○○総長”M君”です。小柄ながらガッチリした体格、ケンカでできたであろう口元の傷、鋭い眼差し。”特攻服”をまとったその人がゆっくり口を開きます。「ヨッ。いい顔してんな。今日から俺達とお前等は兄弟だ。兄弟助け合い楽しくやって行こうな。よろしく。」・・・あれ?もっとこうH君みたいにガンガン来ないの?しかも優しい笑顔で・・あれ?H君とのギャップがありすぎて拍子抜けした中1の夏でした。

【属する】 ある範囲内に、入る。また、はいっている
・従う、従属する。
・区分・種類・集団等の系統に繋がる。

チームに入った僕は人が変わった様に”悪”の道に嵌りこんで行きます。
”あの時”と同じ”答え”も解らないまま只々”悪”の道へ・・・

「オマエ、単車乗れるか?」チームのお調子者”Y君”が僕に聞いてきます。
「いつもバイクは原チャリだったので単車はちょっと・・・」
「よ~し笑、俺の単車で練習してみるか?大丈夫大丈夫!すぐに乗れる様になるから笑。いいか~、ここをこうして・・・」一通り操作手順を教えてくれます。
「ほら笑、もう分かったよな。んじゃ乗ってみろ笑!」・・・無理でしょ。
ピカピカに磨き上げたパールホワイトの単車を跨ぎます。”こかしたら”人生終了待った無しです。保育園の頃初めて自転車に乗った時と同じ気持ちです。”ドキドキ”単車のセルを震える親指で押します。

「キュルキュルキュルキュル!ブォン!」鼓膜が破れそうな爆音です。
「よ~し、クラッチ握ったまま、ギア1速に落として、ゆっくりアクセル回して~ゆっくりクラッチ開きながら~・・・」
「プスン!」ね。言ったでしょ。無理だって。この日から僕は、Y君の家に眠っていたボロボロの”ゼファー”で猛特訓を始めます。僕の愛車になるその”ゼファー”で。

ほとんど毎日練習、練習、こかしては起こし、こかしては起こし。1ヶ月程経過したある日の土曜日でした。Y君の家でゼファーを磨いていると、
「なぁ、その単車好きか?」とY君。「はい!大好きです!まだまだですけど、やっと少しずついう事きいてくれる様になってきてくれてますから笑。」
「そっか。じゃあさ、その単車オマエにやるよ。」
「え!本当ですか!」
「うん。でもさ・・・Mには俺から”貰った”じゃなくて”買った”って事にしてもらいてぇんだ。」
「・・・あ、はいそれは別に。」
「ヨシ!決まり!その単車、今日からオマエの単車だ!大切に乗れよ!特にMの前ではな!」
「はい!ありがとうございます!大切に乗らせて頂きます!」・・・だけど僕まだ中学生だし、免許無いし、働いてないから”買った”って言っても大丈夫かな・・・。しかもM君の事、やけに気にしてたけど・・。

その日の夜でした。いつものたまり場にいると突然、H君がやってきます。
「今日これから集会すっから~M君ち集合な!原チャリあるだけ出せよ!んで、ysk!オマエ、Yからゼファー”買った”べ?それ乗って来いよ!んじゃ後で~。」・・・。いきなりデビューです。初暴走です。しかも僕単車。
皆がそれぞれのバイクに乗り、バイクが無い人は2ケツ(2人乗りの事です)でM君の家に向かうのでした。

M君の家は市街地から少し離れた場所にありました。自営業らしく、広い庭に建設現場でよくみる重機やダンプカーが何台もおいてありました。
僕達が到着すると既に色とりどりの単車がズラリと並んでいました。
全員が黒の”特攻服”をまとい暗闇から威圧を感じます。

その中に1人だけ”純白”の特攻服をまとったM君がいました。ギラギラと輝いて見えました。

M君がすーっと立ち上がり僕の元へやってきました。
「よっ。いよいよデビューだな。”ゼファー”乗ってくれてんだってな。大切に乗ってくれな。事故んなよ。絶対に。」何故か重く、そして寂し気な言葉の様に聞こえました。

「はい!大切に乗らせていただきます!ありがとうございます!」
ニコっと笑うM君が少しだけ涙目に見えました・・・

M君がくるっと回ると「集合!」いつもと全く違う声のM君。僕は一瞬”びくっ”となります。
「今日は新しい兄弟達が入って初の集会だ!○○○がどういう暴走すんのかビシっと見せてやれやっ!いいかっ!」
「押忍!!」足が、身体が、一気に震え始めるのが分かりました。
「ヨーシっ!今日のルートは!○○周りの・・・」緊張で言葉が聞き取れませんでした。(汗)

「ブォンブォン!ブォン!」物凄い爆音です。地面が揺れているかの様な轟音です。「ブォンブォンブォンブオーン、ブォンブォーン!!」
M君が先頭をきり走り出します。後を追うように全員が動き出します。
もたもたしていられません。僕達”新参者”が更に後を追います。

・・・?僕らの後ろにまだ誰かいる様です。”親衛隊長”のR君です。
「オラ!早よ行かんかい!ケツは俺が持つから心配すんなや!」
何て心強いんでしょう。素敵です。

”暴走族”ですから敵は別チームだけではないんですね。その通り!
天下桜の紋所”警察”です。こっちがメインと言ってもいいと思います。

暴走していますと必ず警察は登場します。100%です。当時、警察の暴走族取り締まりは容赦なく執り行われ、”今”の「無理な追走はしない」なんて事は殆ど無く、必ず”逮捕”してやるという執念といいますかとにかく凄いんですやり方も。

例えば後ろにつかれたとします。今ならせいぜいスピーカーマイクで
「前のバイク停まりなさい。おい!停まりなさい!・・停まれー!」くらいで追える所まで追って証拠映像などから後日に逮捕みたいな感じです。

当時は”現行犯逮捕”に燃えていたんですかね?笑。最初はスピーカーマイクで警告してきます。同じです。その後なんです怖いのは。
「停まれ」と言われて停まっていたら暴走族じゃないですね。ただのバイカーです。

警告を無視して走り続けていると”車間ギリギリまで詰めてきて怒鳴り散らします。「コラ!ガキ!停まらんとこのままケツ突っ込むどっ!」
それも無視したらきます。ドンです。平気でパトカーで突っ込んできます。
倒されまいと必死にハンドルを捌きますが2輪の弱いところ・・こけます。
こけたら最後、一斉に警察が群がりボコボコです。ハイエナそのものです。

検問を張られた時は殆ど逃げられません。万が一逃げ切ったとしても無傷では帰れません。愛車を捨ててダッシュで逃げる事もあります。
検問の場合、警察側は”全員”逮捕と意気込んで検問を張りますから警察官、警察車輌共に、数が半端ではありません。

検問突破を考えようものなら終わりです。長い棒(正式名称は”警杖”けいじょうと呼ぶらしいです。僕達は6尺棒と呼んでいました。)を車輪に目掛けて突っ込まれます。容赦ないんです。普通に身体に振りかざしてくる時もあります。警棒で顔面を殴りに来る事は日常です。酷いですよね笑。これ全て実話ですから。それで一網打尽です。大人と子供の"力の差"って奴です。


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