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台湾に3泊4日でプレミア12を観に行った記録 その④

2024年11月15日から18日の4日間、プレミア12オープニングラウンドを観戦するべく、台北へ行って来た。

その①(旅の準備、手配編)

その②(台北ドーム探訪、韓国戦)

その③(街歩き、台湾戦)


台北3日目 朝から行列に並ぶ

昨日より早く、朝6時起床。帰国の飛行機は朝便なので、一日フルで行動できるのはこの日が最後だ。「行くべき店リスト」はまだ半分も消化できていない。リストの中でも「定番ですが、やっぱり」のニュアンスで推された朝ごはん屋に並ぶべく、まだ薄暗い中を歩く。

台湾に詳しくない私でも聞いたことがある、行列必至の有名店だ。大きな交差点に面した風情あるビルに近づくと、6時半の時点で外周にずらっと行列ができている。昨日行った天天利美食でも待ちが発生したけど、その比じゃない長さの行列だ。待ち時間でインターネットを検索し、オーダー内容をスマホのメモ帳に入力する。台湾の多くの飲食店同様にまずイートインか持ち帰りかを伝え、飲み物→メインの順にカウンターを移動しながらオーダーしていくらしい。慌てないため、メモ帳を店員さんに見せる作戦でいく。かなり回転が早いようで、20分ほど並んで店舗があるビル2階フードコートに入ることができた。

鹹豆漿、薄餅夾蛋、冷たい豆乳。

完璧な泡立ち

ひと口食べて、あまりのおいしさに倒れそうになる。昨日食べた鹹豆漿も十分おいしいと思ったけど、これはレベルが違う。熱々なのにフワフワで、えびの出汁がしっかり染み渡って、油條のサクサクとザーサイの歯応え、おぼろ豆腐にしっかり立ってくる酸味がたまらない。羽毛布団を味にしたら、こんな感じになりそう。食べたことがない味・おいしさに、ただただ感動する。
鹹豆漿が結構しっかりした量だったので、薄餅夾蛋(ネギ入りの卵焼きを薄焼きパイみたく挟んだもの)は半分食べて残りを持ち帰った。友人のおすすめがあっても、正直「朝から並んでまで食べるものか…?」と思う気持ちがあったのだが、間違いなく並ぶ価値があった。各種オフシーズンイベントの行列で鍛えられている皆さんには、なおさら強くおすすめしたい。

帰り道、ビルから見えるスタバが空いていたので、この旅で初めてスタバにありつく。言語不自由な旅先にあって、常に混雑している上にカウンターの呼び出しを待たねばならないスタバは難易度が高い。食べたいものを食べたあとに飲むコーヒーは、どこにいても最高。

台北3日目 天母スタジアムを目指す

台風25号は熱帯低気圧に変わったものの、その影響でこの日の台北は1日中、雨予報だ。キューバ戦の舞台となる天母スタジアムは屋外球場。普段の観戦に使っているレインコートはアウトドア用で嵩張るため、台湾には折り畳み傘しか持ってきていない。コンビニで簡易カッパを探すも、派手な色のものばかりで気に食わない。せっかくユニを着るわけだし、どうしても半透明のやつが欲しい。何軒もコンビニをはしごして、最終的にドンキでペラッペラのものをなんとか発見する。

そして、レインコートと同時に探していたものがある。

65TWD=約310円(安すぎる)

ファミマのお茶ブランド「私品茶」で出している、荔枝貴妃紅茶だ。昨日の台湾戦入場前、台北ドームのファミマの目立つところに山のように積まれてて、何も考えずデカさに引かれて買ったんだけど、飲んでみたらこれが異常においしい。ライチの果肉が贅沢にブリブリ入っていて、甘すぎず香りもいい。私が思う「コンビニで買えるもの」のクオリティーを完全に突破してる。
いったん何かにピンと来たら、しばらくは同じことを繰り返したい。カッパを探すついでに、行く先々のファミマのレジで上記の画像を見せては「ディスワン、プリーズ」とお願いする。信じられないくらい、どこの店でも売っていない! 飲みたくて飲みたくてイライラしていっそ台北ドームのファミマに行こうかと思ったが、どう考えても愚行だし時間の余裕もない。

天母スタジアムは台北市内北部にある。宿泊地の忠孝新生からは、路線バスの606番を使えば往復ともに乗り換えなしで行けるようだ。駅前からだいぶ離れた幹線道路らしき交通量のある通りまで歩き、バス停を探す。台湾の路線バスは乗る際に挙手しないと止まってくれないので、待っているあいだも気が抜けない。緊張してバス停に立っていたら、地元カップルが現れて停留所の支柱にあるボタンを押した。ランプが点灯する。どうやらこれが乗車意思を伝える停車ボタンらしい。手を挙げるだけじゃダメなのか。あぶねー! 

バスに揺られて40分、無事に天母スタジアムへ到着した。

やっぱり屋外球場が好き

風格を感じるどっしりとしたコンクリート造りの球場は、落ち着いた雰囲気の公園に囲まれており、正面には巨大なバットとボールのオブジェが設置されている。打ちっぱなしの薄灰色にキーカラーの赤、それに公園の豊かな緑が映えて、すごくクラシカルで美しい。一目見ただけでスタジアムの世界観に取り込まれるというか、野球を観に来た高揚感が全身を駆けめぐる。
パネルで確認した開門時間は、台北ドームより遅い16時。日本のホームゲームなので、練習は途中からの見学になりそうだ。だいぶ時間があるので、天母の街を歩いてみる。台北の中でも高級住宅地にあたる地域で、広い歩道には街路樹がきれいに植えられており、雑多な雰囲気はあまり感じられない。球場の向かいにある、新光三越の地下フードコートはかなり充実していて、杏仁豆腐を食べた。大ぶりなカップにピチッと隙間なく詰まった純白の杏仁豆腐に、別添えの杏仁ミルクをたっぷりかけて浸していただく。余計なものがない、ストイック杏仁豆腐でおいしい。

三越を出たところで、対岸にファミマを見つけた。天母を本拠地にする味全ドラゴンズの選手写真を使った外装がとても目立っている。ここまですでに5、6軒の店舗で空振っているので、ダメもとで「ディスワン、プリーズ」してみたら……なんと在庫がある! しかもプレミア12限定カップで提供してくれた。

カッパもお茶も手中に収めた図

球場に戻ると、すでに多くのファンがスタンドに上がるスロープに列を作り、開門を待っていた。侍ユニ以上に、NPBのユニを身につけている人がすごく多い。台北ドームではあまり日本人らしき観客を見かけなかったけど、この日は周囲で日本語がよく聞こえる。台湾在住と思われる親子連れのグループも多くて、春季キャンプや地方球場での試合に近い、馴染みある雰囲気の中でプレイボールとなった。

台北3日目 キューバ戦を観る

日本の先発は楽天・早川投手。パ・リーグを普段観ないのでほとんど知識がないが、早川投手はルーキー時代から登場曲がBoys Town Gangの「Can't take my eyes off you」(個人的に、先発投手に使ってほしい登場曲ぶっちぎりナンバーワン)だと最近知り、気になっていた。
練習が終わるあたりから降り出した雨は、一塁側からの強い風が吹くたび霧雨になって襲ってくる。神宮でときどき体験するような、大粒かつ多量の雨に打たれ続ける「滝行」ではないものの、これはかなりしんどいし、視界が悪い。NPBのペナントレースなら少なくとも一時中断になるレベルで、スタンドの観客も適宜コンコースや屋根下の通路に移動して、試合を見守る。マウンドは相当投げづらいだろう。

試合前、傘やカッパで雨をしのぐスタンド
スタジアムの背後には陽明山が迫る

5-1の日本リードで迎えた6回表、得点圏にランナーが進んだところで早川投手は横山投手と交代。さらに鈴木投手へと継投に入る。日本はこの回3点失い、7回表にはピンチを背負って交代した4番手・清水投手がエラーから2点を返され、6-6の同点に。8回表、回跨ぎの清水投手は再びピンチを作るも、今度はしっかり無失点で帰ってきてくれた。日本は8回裏、代走・五十幡選手のすばらしい激走、ホームインで勝ち越し点。9回表、藤平投手が1アウト満塁からの大ピンチを二者連続三振で投げ切り、試合終了。7-6で日本勝利、グループB・第1位でファイナルラウンドへ進出を決めた。

あまりにアツすぎる、藤平投手の雨中熱投を何度でも観てほしい…!

台湾で私が観た3試合で、間違いなくこの日のキューバ戦が一番苦しくも面白い戦いだった。試合時間、なんと4時間超。面白くても長すぎる。雨風に吹かれ続けたけど風邪を引くこともなく、ドンキのカッパは十分役に立った。
試合終了後、コンコースを出てスロープに向かっていたら、前を歩く台湾のファンがいきなり歓声を上げた。日本が勝ち、かつ台北ドームで台湾がオーストラリアに勝利したことで、台湾のグループB・第2位が確定。ファイナルラウンド進出が決まったらしい。昨日の試合観戦ですっかりチームチャイニーズタイペイと台湾の野球ファンが大好きになってしまった私も、これはうれしい!

天母で買ったチャイニーズタイペイのアパレル
普通におしゃれでかわいい

フワフワとした足取りでバス停に向かい、さっきまで一緒に同じものを観ていた知らない大勢の人たちともみくちゃになりながら、必死で自分が乗るべき路線バスの番号に目を凝らす。リュックを抱え、硬くて冷たいシートに座って、深夜の異国の街をホテルまで帰る。こういうことがしたくて、楽しくて、いつも何かを好きになるんだよな、と思う。

最終日 帰国、野球観戦の旅は忙しない

午前中早い時間の便を取っていたので、昨晩買っておいたコンビニのおこわで朝食を済ませ、ホテルを出発。カレーしかり、台湾のコンビニのご飯は本当においしい。使える場所では優先して使った悠遊卡は、初日にチャージした分がまだ少し余っている。前回の台湾旅行の反省をふまえ、財布に残ったTWDの小銭もすべて悠遊卡に入金した(うっかりしたが、ばつ丸悠遊卡にチャージすべきだった…)。松山空港は空いていて、あっという間に出国審査を通過。制限エリア内の売店でまだ残っていたお札の額ぴったりの、ちょっといい茶葉を自分用のお土産に購入した。

友人から授けられた「行くべき店リスト」は、結局半分しか訪問できなかった。海外に限らず、野球観戦の遠征はとにかく時間がなさすぎる!

リスト内外の、行きたかった店。

ホテルに備え付けのティーバッグですらとんでもなくおいしかったし、空港で買った茶葉も大満足だったので、次回は必ずお茶屋さんを訪ねたい。

16日に熱帯低気圧へ変わっていた台風25号の影響はなく、復路も予定どおりの航行で羽田に無事到着。楽しかった3泊4日の旅が終わった。

機内食はちいかわコラボのおやつ付き

おわりに

「いつか海外で野球が観たい」。そんなぼんやりとした願望を、今回、応援している選手の代表選出という絶好の機会があったうえに、距離的にも近く行きやすい台湾だからこそ、気負わず実行に移すことができた。いつもと違う環境や景色、人、文化に囲まれての野球観戦は刺激にあふれていて、新しいものと出会って心が動くことや、ある瞬間の気持ちをずっと覚えておくことについて、改めて考え直した。

いつもよく見ているもののすぐ隣に、まだ全然知らない世界がある。野球も野球観戦文化も、世界は広大で、めちゃくちゃ面白い。

プレミア12台北ラウンド、本当に行ってよかった。そして次がいつになるかはわからないけれど、絶対また海外で、いまの私が知らない野球を観たい!

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