大型の資金調達可能なMSCB(転換価額修正条項付転換社債)について1000文字で解説する
ファイナンスブログ#6
今回は、転換価額修正条項付転換社債(Moving Strike Convertible Bond/MSCB)について記載します。
MSCBは、ライブドア社が某テレビ局を買収しようとして、当時絶頂期であったリーマン・ブラザーズを引き受け先として発行しようとした社債の一種です。それでは早速、MSCBについて解説します。
MSCB(転換価額修正条項付転換社債)とは
MSCB(転換価値額修正条項付転換社債)とは、その名の通り、発行後、株価の動きに応じて株式への転換価額が修正される条項がついた転換社債のことを言います。
転換社債というのは以前ファイナンスブログでも解説しましたが、引き受ける側からすると債権として保有するもよし、業績がよければ株式に転換するもよしというものでした。(期間は決まっている)
しかしMSCBは、社債発行後、株価の変動によって転換可能な株式の価格が変動するため、さらに投資家が有利とされています。
MSCBは発行企業の既存株主にとって非常にリスクが高い
MSCBは転換社債よりも、さらに引き受ける側(投資家側)が有利な資金調達方法になっております。
それに加えて、既存株主にとって都合の悪い調達になります。MSCBを引き受けた投資家は、発行した企業の株を空売りし、株価がさがったところで株式に転換、その後株式の売却によって利益を得ることが、理論上できてしまいます。
これをしてしまうと、既存株主は株式の希薄化によって持ち株の価値が下がり、MSCBを引き受けた会社が呼び込んだ売り圧に巻き込まれるなど、いいことがほとんどないため、MSCBは「既存株主にとってマイナスである」と言われることが多いです。
一方、MSCBを引き受ける側の企業(証券会社等)は株価がどっちに転んでも儲かるため、発行企業の既存株主をカモにできます。
MSCBを活用した資金調達事例
MSCBによる資金調達の事例は以下の通りです。
ライブドア
2008年、ニッポン放送を買収しようとしたライブドア社は、リーマン・ブラザーズ(2008年倒産)を引き受け先とするMSCBを発行しました。資金調達額は総額約800億円です。
積極的なMSCBの発行であるため、勝算はかなりあったのではないかな?と思いました。
詳しい説明は良い記事があったため、リンクを以下に貼っておきます。
いすゞ自動車
いすゞ自動車は、2004-2005年の間に2回、MSCBによる資金調達(総額約1000億円)を発行しています。
詳細は以下のリンク参照
まとめ
所感としては、MSCBは既存株主の利益を損なうという意味で取締役会などの意思決定としてどうなのか?と思います。
結果的に株価が下げていなくても、株式の希薄化と売り圧力を呼び込む意思決定になってしまうのは容易に想像できます。
当時、上場企業によるMSCBの発行が多かったことから、ファイナンス意識の低い上場企業に対して証券会社がこぞって勧めてたのではないかというのが考えられます。