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他株主に買収に応じるよう請求できる権利「Drag Along Right(ドラッグ・アロング・ライト)」とは

こんにちは、原沢陽水です。この記事では他の株主に対して買収に応じる様請求できる権利である「Drag Along Right」について書きます。本来であれば弁護士などが投資契約の関連記事として書くものですが、より噛み砕いた記事があれば良いなと思ったので書いています。

Drag Along Right(ドラッグ・アロング・ライト)とは

Drag Along Rightとは、先ほども説明しましたが、投資契約を結ぶ時に「他の株主に対して買収に応じるよう請求できる権利」です。

M&Aするかどうかというのは株主全員にとって重要な意思決定です。そのため、どの株主も慎重に意思決定する場合が多いでしょう。しかし、ドラッグ・アロング・ライトは一定の要件を満たせば株式の買収を強制することを可能にする権利です。

ドラッグ・アロング・ライトは、VCと経営陣の間に認識の差があった時などに大きく作用します。

シード期に出資したVCはファンドの満期(5-10年)が近づいてくると、M&Aを行い、実績を作りたいと思うようになります。一方経営陣が「まだまだこの事業は伸びる」と考えていた場合、すぐのM&Aはやめてほしい、と考える様になります。

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このように意見が割れた時に投資契約を結んだ時点でドラッグ・アロング・ライトの条項が付いており、要件を満たしてる場合、VC側に経営陣に対して買収に応じるよう請求できる権利が発生します。

Drag Along Rightのユースケース

以上がドラッグ・アロング・ライトの概要になりますが、これがどのように起業家とVCのバランスに影響してくるか、事例を想像して書きたいと思います。

事例①:エンジェル投資家を入れた後、M&AでごねられたがDrag Along Right(ドラッグ・アロング・ライト)のおかげで助かった

ベンチャー企業Aはエンジェルラウンドでの資金調達を行い、数人のエンジェル投資家を株主としました。株主となった人は専門性はあるものの、ファナンスについて非常に詳しいというわけではありませんでした。

ベンチャー企業Aは紆余曲折を経て、時価総額30億円で株式の49%を買収される(関連会社となる)ことになり、経営陣とVCはその額で合意しました。しかし、エンジェルラウンドで株主となった1名が断固拒否しています。

この場合、株式譲渡になるわけですが、双方の合意がなければもちろんその交渉は決裂します。このままではVCはファンドの満期に合わせてExitさせることができませんし、経営陣はせっかくのチャンスを逃すことになってしまいます。

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そういった場合、ドラッグ・アロング・ライト(議決権の70%以上で少数株主に対して買収に応じることを請求できる権利とする)を行使できる状態になっていた場合、少数株主に対して買収に応じるよう請求することが可能です。

このように、ドラッグ・アロング・ライトはVCの利益と経営陣の重要な意思決定を決定づける補助になることもあります。

事例②:VCと起業家側が衝突した時、ドラッグ・アロング・ライトが盛り込まれていたことにより出口がIPOではなくM&Aになった

ベンチャー企業BとVCは投資契約を結ぶ際、VC側からの提案で「優先株主の総議決権の50%以上の賛成がある場合、買収に応じるよう請求することができる」といった内容の条項を盛り込まれており、無事投資契約は優先株式での第三者割当増資で終えました。

ベンチャー企業Bは紆余曲折を経て、ようやく事業が軌道に乗ってきました。経営陣はこのままIPOに向けて、規模を大きくしていこうとしています。

しかしある時、大手企業から買収を持ちかけられた際にVCが「M&Aに応じてください」と言い始めました。経営陣はIPOへの見通しもそこそこ立ちはじめていたため買収を拒否しましたが、投資契約を結んだ際に条項として記載されていたドラッグ・アロング・ライト(この時は優先株式の総議決権の50%以上の賛成がある場合、買収に応じるよう請求することができる)が盛り込まれていたため、VC側はその権利を行使しました。

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ベンチャー企業Bは大手企業に買収され、VCは利益を得ましたが、ベンチャー企業Bの経営陣は完全に納得がいかないまま買収に応じることになりました。

ドラッグ・アロング・ライトが与え得る影響

以上の様に、投資契約にドラッグ・アロング・ライトが盛り込まれているか否か、あるいはどういった条件で発生するのかによって状況が変わってきます。

紹介したのは極端な例です。ドラッグ・アロング・ライトが盛り込まれる場合は「〜年〜月〜日以降にこの権利は発生する」といった内容が記載されることにより、VC側が売りぬけることに条件をつけられるため、その時々によってベストな契約内容というのが変わります。

まとめ

ドラッグ・アロング・ライトは投資家・起業家双方の利益を守ることもあれば、投資家有利になることも考えられます。双方のバランスを取るためにも、起業家と投資家双方のリテラシーを高めていくことで良いディールを生み出すのではないかと考えています。

記事に関する相談などは原沢のTwitterまで


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