開発組織のバリュー策定から4年経っての振り返り
ファンズ株式会社 CTO の若松(@yshnb)です。ファンズの開発組織では4年前の2020年初頭に開発組織としてのバリュー(行動指針)を策定しました。
ファンズにはファンズ株式会社のバリューもあるのですが、それとは別に開発組織としてバリューを策定したものです。
4年間という期間の中で開発組織のメンバーも入れ替わりが生じたほか、規模も拡大し、このバリューを決めた当時のメンバーの方が少なくなりましたが、そんな今の時点での開発組織のバリューはどう機能しているのか?(あるいは機能していないのか?)をお話したいと思います。
ファンズ開発組織のバリュー
(この記事自体、策定してすでに1年近く経ってから書いたものでしたが)当時の記事はこちらです。
当時決めた開発組織としてのバリュー(行動指針)は次の4つです。
バリューについて振り返ると、これらの方針はチームとして決めた方針でありつつ、 CTO である私自身がチームとして望ましいと感じる方向性を方針を示したものでもあるなと感じました。
(当時は CTO という肩書きではありませんでしたが、技術責任者として開発組織のマネジメントを担っていました。)
策定から4年経過してどうなったか
バリューを策定してから4年が経ち、組織としてのフェーズ・事業フェーズもさまざまな変化がありました。一方で、バリューとして示される行動指針は、組織としての方向性は変わっておらず、今でも通用する指針だと感じています。
このバリューを策定した当時からはメンバーの入れ替わりもあり、バリューを決めた当時から所属していたメンバーの方が少なくなりました。また組織としてのフェーズも変わり、当時は数人の組織でしたが、現在では私を除いても正社員で15人近く、業務委託を入れれば20人超の組織となり、当時と比べれば相応の所帯となりつつあります。
バリューは浸透しているのか?
組織としてのフェーズは変わったものの、バリュー自体は組織に浸透していると考えています。
とりわけ嬉しく思うのは、私自身ではなくほかのチームメンバーから「持続可能なやり方なら〜すべきですよね?」「自律的だから〜」などといった発言が出てくる点です。組織文化について必ずしも伝えなくとも、組織に所属するほかのメンバーから伝搬していくのは、まさに組織としての文化になっていると感じるところです。
バリューを作ってよかったこと
さて、バリューを作ってよかったこととしては、次のようなことがあげられそうです。
組織としての意思決定がしやすい
例えば、ソフトウェアエンジニアとしてサービスの開発などに取り組む中で、解決すべき技術的な課題を見つけることはあるでしょう。そのようなときに、新機能の開発を止めてでも技術的な課題解消を優先するべきでしょうか?
組織により方針は異なると思いますが、我々の場合は「事業成長のためにやる」「持続可能なやり方を採用する」というバリューがあります。
エンジニアの感覚として直しておきたいからというのは、説明としては不十分であり、「事業成長のためにやる」という指針に基づくならば、事業の成長を導くものでなければ取り組むべきではありません。
ただし、技術的な課題だから優先して取り組む必要がないと判断してしまうのは早計です。技術的な課題であっても長い目線で見ると影響が大きく修正も困難になり、改善できるうちに改善しておくべき、といったこともあるでしょう。このような場面での指針となるものが「持続可能なやり方を採用する」です。
長期的に事業成果に価値が生まれることを前提として、最終的には "持続可能なやり方" を取るためにかける必要のある追加のコストと "持続可能なやり方" を採用しなかった場合の長期的なリスクのトレードオフから判断することになります。
なにが持続可能なのか?というのは、人によって解釈が異なります。"長期的" についても、どのくらいの時間軸を考えるかによって変わってきます。1年くらいの期間であれば問題が出なくとも、5年くらいの期間で考えると影響が大きい、などのケースもあるでしょう。
ある人にとっては持続可能だと考えていても、別の人にとっては持続可能ではないと感じることもあるはずです。
このようなことを考えつつも、最終的な意思決定は、プロジェクトの進行に大きな影響が出るものでない限りチームの中で行います。こうした意思決定をチームの中で判断することは「自律的チームであれ」というバリューにも繋がってくるのではないかと考えています。
採用すべき人・採用すべきでない人を判断しやすい
ファンズの開発組織では、現在は開発チームの現場のエンジニアが分担してポジションを担当して、スカウトメッセージの送付やカジュアル面談などの採用活動を行っています。
採用活動の中では、単に当社で活躍できるかどうか?だけでなく、採用候補者の方がファンズへ参画した時に、その方の実現したいことを当社の中で実現できるかどうか?という点も重視しています。
こうした観点も見ていくので、担当者ごとの目線によって、候補者の方が当社に適しているのかどうかの判断が必ずしも揃わない場面もあります。このような時にもバリューが有効に機能します。
例えば、現時点でのファンズの組織では、1人が担う業務の幅もまだまだ多岐に渡ります。そうした中では、事業成長を導く上で必要なことなのかを、個人で判断いただく場面もあります。
こうした点を踏まえてバリューでは「事業成長のためにやる」という方針を定めています。この点に着目すると、そもそもファンズのビジネスに関心がない方の場合、このバリューへの共感を得ることは難しいと考えています。
そのためファンズの開発組織では、技術的な素養は十分に備えているような方であっても、ファンズの事業に対して関心のないような方は採用しないほうがお互いにとって望ましいと考えています。
(少々断りを入れておくと、これは決して技術的な要件を軽視するわけではありません。また、ビジネスに関心のない人が優秀ではないと考えているわけはなく、あくまで弊社の現時点でのフェーズでは活躍することが難しいというものです。将来的にはビジネスそのものには関心が強くなくとも、優れた専門性を備えた人材を必要とするフェーズが出てくるのかもしれません。)
幸いにしてこれまで組織に加わっていただいた方々は、スキルを備えていることと同時に事業にも関心のある方が集まっており、目線が大きくずれるようなことはありません。今後においても、こうした方針をうまく活用して、組織としての成長を導いていければと考えています。
バリューについての課題など
一方で、バリューに関する課題もまったくないわけではありません。
バリューを解釈することの難しさ
1年ほど前には、バリューについての理解を深めるためのワークショップを実施したことがありました。
このワークショップの中では、3チームに分かれてそれぞれのバリューの解釈として得られる行動例を出し合い、その考え方を共有することで、それぞれのバリューに対する考え方を共有するというものです。
例えば「誇りなきものを作らない」というバリューについては、端的には自分たちが世の中に対して自信を持って出していけるものだけを出していこうという意志を込めたバリューでしたが、チームの中では必ずしもその真意が理解されていなかった点もありました。
バリューというものが行動指針であり、新しくチームに参画したメンバーにとっても端的に伝わるべきものであることを考えるならば、より直感的に伝わる表現にするなどの工夫の余地はありそうです。
まとめ
そんなこんなでファンズ開発組織のバリューについて、私見を交えつつ振り返ってみましたが、やはり振り返って思うのは、バリューを作ってよかったということです。バリューという行動指針があることにより、組織としての指針が明確になっており、「ファンズの開発組織らしさ」を表すことができているように感じます。
そんなファンズの開発組織に関心がある方向けに、いつも通り以下のご案内をさせてください。
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