【SNS活用による海外販路開拓】その6
☆☆中古のメイドインジャパンも海外では大人気☆☆ 第2回
その5での話しの続きになりますが、私が実際に経験してきたことを更に詳しく書いてゆきます。自分がピアノが大好きなので、中古ピアノの輸出のお手伝いをさせて頂いた時期は、とにかく面白かったです。この記事の見出し写真はデジタルピアノですが、最初はアコースティックの中古ピアノの輸出に関わりました。問い合わせのきっけをつくるネット上での情報発信はアリババでした。まだ中国の商社が大掛かりに日本の中古ピアノ漁りを始める前でしたから、問い合わせはとても活発に来ました。玉も豊富にありました。北米、アジア諸国、中東など、世界中から問い合わせをもらいました。
新規の海外販路開拓を依頼されたのは静岡県の西部にあったピアノ商社でした。商社と言っても、日本でのピアノ製造が盛んであった頃はピアノメーカーであり、その頃の技術が継承されていました。大きな倉庫が二か所あって、中にはたくさんの中古ピアノが保管されていました。日本の家庭に眠っていて、もうそのお宅ではお役御免になった中古ピアノたちを買い取ってきた後、基本的な整備を自社の技術者が行って、ピアノとして機能する状態にします。海外に輸出する際は、基本的にそれ以上の整備はしません。
何か手をかければそれだけの人件費が発生するので、ピアノとして機能させるため以上の整備はしないのです。できるだけ価格を押さえて価格競争力を維持した価格提示と販売をするためです。でもしかし、専門の技術者はいますから、アクションを全部バラしての整備とか、再塗装とか、買い手に希望があれば何でもできます。私が商談を担当したすべての顧客は必要以上の整備を要求しませんでした。そもそも日本の家庭に眠っていたピアノたちですから、かなり手を入れないとピアノとして機能しないなどという状態のものは無いだろうという前提もあります。
自動車のところで触れましたが、MADE IN JAPAN であると同時に USED IN
JAPAN であること、そう、日本で作られて日本で使われていた製品であるという点に、たとえ中古であっても品質的観点からの信頼がおかれているのです。この事は、海外に商品の情報発信をする上でも大切な点ですから、そんな機会があれば、日本で使用されていた商品であることもアピールしておいたほうが良いでしょう。これも前回書いた中古の電車とかバスの輸出ですと、顧客から「とにかく日本で使われていた状態のままで送ってほしい」「広告の字など消さないでほしい」という特別な要望も受けるとのこと。それだけ、日本で丁寧に使われていたから中古でも品質は大丈夫、という信頼を抱いてもらえるということです。MADE IN JAPAN と並んで、USED IN JAPAN も信頼のブランドなのです。
話題が逸れましたが、中古ピアノの中でもやはりYAMAHAの人気が圧倒的でした。これはもう仕方のないことで、ここでY社とか書く必要もないでしょう。自動車はTOYOTAと同じです。短いほうの20FTのコンテナで、ピアノは17台入ります。グランドピアノは脚を外して立ててしまうので、よほど長いコンサート用のグランドピアノでない限りは、アップライトとグランド、どう組み合わせても17台でした。この17台の中を「1/3はYAMAHAにしたい」というような希望はよく来たものでした。MADE IN JAPAN の中でも特別なブランドがあるのは言うまでもありません。
ここまでピアノについて書いたので、今回は中古ピアノでの経験を書きつくします。さて、「中古ピアノを買いたいのですが」という引き合いをもらうところから商談が始まります。たいていは中古ピアノを既に扱っている海外の楽器商からの引き合いですから、こちらからは先ず価格付きの在庫リストを提出します。そして「リストの中から17台プラスアルファを選んでください」とお願いします。「在庫から常時販売しているので、お返事を頂いたときに既に売れてしまっている可能性もあるので、17台プラス2~3台でお願いします」という依頼をします。
価格交渉が入ることもありますが、最初からそれを含んで価格提示をするので、値引き依頼が来たら「最善の価格提示をしているので、これ以上の値引きは無理ですが、オーダーを決めて頂けるのであれば、感謝の気持ちを込めて、、」のような感じで、金額値引きには応じます。他の商品の場合でも「値引きには一切応じません」ではなくて、最初から少し余裕を持って価格提示をして、値引き要請をしてくる顧客の顔を立ててあげるように対応するのが、状況いよっては良いかもしれません。
日本がかつて歩んできたように、発展を遂げつつある途上国でも、生活が豊かになってきて少子化が進んでくると、親は子供に情操教育の機会を与えたくなります。そこで真っ先に候補として上がるのが音楽教育であり、ピアノを習わせることであったりします。でも新品のピアノはとても高価ですから、良質な日本製の中古ピアノに人気が集中します。そして「ピアノ売ってちょ~だい」に代表されるように、日本の家庭に眠る、もう弾かれることのないけれど品質と程度の良い中古ピアノの人気が高まるわけです。大量に買い集められた中古ピアノの行く先は日本の家庭ではなく、その多くが海外なのです。
ピアノにとっても、日本の家庭で弾かれることもなく眠っているよりは、海外で第二のピアノ人生を送るようが良いでしょうし、日本人がかつて心を込めて製造したピアノが、海外でまた活躍できるなら、そのほうが良いと思います。もちろん、コンディションを整えた後に、日本の国内需要のための「中古・再生ピアノ」として販売されるケースもありますので、アコースティックピアノの購入を考えられている場合は、中古ピアノも視野に入れてみるのがよろしいかと思います。
さて、中古ピアノの輸出に於いて、貿易の国際ルールとして気を付けなくていけないことがあるので、ここで書いておきます。ピアノの在庫一覧のリストを見ると、鍵盤の材質のところに IVORY と記されている例があります。そうです、昔は国際間を自由に流通していた象牙です。鍵盤(白鍵)自体は木製なのですが、表面は樹脂製の板が貼られています。昔の上級機種にはここに象牙を使っていたケースがあります。でも現在では、ワシントン条約によって象牙の国際間流通が禁止されているので、中古のピアノを輸出する際には、象牙を剥がしてしまうか、輸出先ですぐに弾けるようにするため、象牙を剥がした後に樹脂製のプレートを貼り直して出荷する必要が生じます。
このような象牙製の鍵盤のピアノは、輸出するには余計な費用と手間が発生してしまいます。中古ピアノが流通する要因のひとつは「価格が安いこと」ですから、象牙鍵盤の機種は、そのままで販売できる国内でのリユースに回ってもらい、輸出には回さないことにします。もっとも、顧客が鍵盤の象牙を剥がして輸出してもかまわないと言うのであれば問題はありません。
ここでちょっと貿易講座的な話題になりましたが、特に中古の商品の場合、象牙は意外と気付かないところに使われていたりするので、注意が必要です。何でピアノの輸出に絶滅危惧種保護のためのワシントン条約が関係してくるの?と思ったでしょうが、ポイントは象牙だったのです。中古ピアノの場合はワシントン条約に抵触する象牙のお話しでしたが、他の商品の輸出入の場合でも、純粋な貿易関連の法令以外の規制を受ける場合があります。業界では「他法令」と呼んだりしていますが、純粋に貿易にかかわる法規法令以外にも商品を国際間で移動させる場合には、日本から輸出したり、日本に輸入したりする場合に制約を受ける法規・法令があることを覚えておきましょう。次回以降にまた例を上げて書く機会があるでしょう。「え~っ」と思うケースが登場しますので、楽しみにしていてください。
最後に、せっかく今回は私が実際に関わった中古ピアノの輸出について書いてみましたので、輸入のケースも書いておきます。上記のピアノ商社さんには何度か足を運びましたが、あるとき、とても魅力的な古いスタインウェイ社のグランドピアノがショウルームに置いてありました。話を聞くと、アメリカから輸入したばかりの品ということ。メンテナンスはメーカーなど関係なくお手の物ですから、これからじっくり整備して販売に回すとのこと。私は「優れたメイドインジャパンを世界に」を旗印にして、日本の中小製造業の活性化の一助になるべく活動していますが、海外から素晴らしい製品を輸入して国内で流通させることもまた面白いこと。輸出ができれば輸入もできるようになります。先ずは私と共に輸出ができるように学び、そして機会があれば、輸入して国内で流通させることも考えてみても面白いのではないでしょうか? 貿易、輸出、輸入、国境を越えて地球規模でモノを動かすことができるようになると、いろいろな事が実現できる可能性が広がります。
ということで、今回も長々とお付き合い頂き、ありがとうございました。何かあれば、お気軽にページ下部のクリエイターへのお問合せからメッセージを下さい。「優れたメイドインジャパンを世界に」の話題で盛り上がりましょう!