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身近な地域の地形学習(横浜・田谷の里山)

里山とは

国際的な港湾都市として知られる大都市、横浜。その活気ある街並みに彩られた近代的な都市景観は、伝統と革新が融合した文化や芸術の中心として知られている。しかし、少し中心から離れると、そこには里山とよばれる、近代的な街中とはまったく異なる、のどかな景観が広がっている。

都市と農村の中間的な位置づけとなる都市近郊農村は、住宅地などが開発され、都市的な生活文化をもちながらも、小さな農地や人の手が入る森林が里山としていたるところに残り、人と自然が共生する場となっている。

一方、都市部への人口流入はとどまることなく、都市開発の波は都市近郊農村にも拡がっている。横浜市の南西部に位置する田谷町とその周辺は、まさにそのような、放っておくと消えてしまう里山景観なのかもしれない。

田谷の里山と地域学習

田谷地区には、歴史ある文化財史跡「田谷の洞窟」を含め、豊かな里山景観が広く残っている。しかし、近年は高速道路の大規模な建設工事が行われ、また里山の管理を担う人々の高齢化も進み、放置すれば近い将来には里山の自然景観も壊滅的となることが懸念されている。そうすると、都市と農村が分断され、これまで何百年と続いてきた豊かな自然と文化の調和が失われてしまう。都市近郊農村において、都市型の生活、農村型の生活のいずれであるにしても、地域に住むさまざまな人々の関心を得て、里山の維持や保全をめざすことが、都市と農村をつなぐ境界領域としての都市近郊農村における重要な社会課題であろう。

そのための、地域に住む人々へのアプローチのひとつとして、地域の小学校における地形学習を推進する取り組みがある。

地理や地形は、農業・建築・文化などとあわせて、児童が体感的に学ぶべき要素である。田谷地域においては、小規模な公立小学校での総合的な地域学習としての地理・地形教育が実践されている(田村ほか, 2020)。こうした取り組みを通して、少子高齢化・人口減の進む社会で求められる感性や生きる力を養い、地域の力、あるいは地域の誇りとしてのシビックプライドを醸成してゆくことが期待されている。

小学校における地形立体模型を用いた地域学習のようす

参考文献

  • 田村裕彦・早川裕弌・守田正志・小口千明・緒方啓介・小倉拓郎(2020)総合的な学習の時間を活用した地理・地形教育の実践-地域文化資源を用いた小規模公立小学校への地域学習から-. 地形, 41 (4), 343-361.

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