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僕とCreepy Nuts


Creepy NutsとはラッパーのR-指定さんとDJのDJ松永さんの1MC1DJによるヒップホップユニットである。ラッパーのR-指定さんはラップで日本一を3連覇、DJ松永さんはDJの世界大会で優勝している。つまり日本一と世界一の最強ユニット。

僕は20歳の大学生。どこにでも居る男子大学生。ちょっと目立ちたがりやだが基本は普通に過ごし、仲の良い友達もそこそこ居たし、めちゃくちゃ遊んできたし、ただ勉強とスポーツはできなかったけどなんとか高校生にもなれたところまでは周りとほとんど同じだったのかもしれない。ある1曲に出会う高校1年の秋までは。

あれは確か高1の秋の夜だった。いつも通り部活から帰ってきて夜ご飯を食べて布団に入り携帯をいじりながらとあるラジオを聴いている時だった。

『高層ビルの谷間から海の向こう 蔓延する Sex & Drug & Rock&Roll
調教済みのブタ共は声あげろ 超越する Sex & Drug & Rock&Roll
とっくのとうに外れたブレーキ 逆らえない本能
CrystalmethもPurple Hazeも場末の安女郎も
無くても平気 シラフでもクレイジー
タンテとマイクロフォンよこせ合法的なトビ方を心得よ』

自分の知らない曲がラジオからリズムよく流れてきた。昔からラジオは起きてる間ずっと流して聴いているタイプだったので、そこから好きになる曲はたくさんあったけど今回はいつもと違う気がした。

「すごくリズムがいい!」、「なんだこの、曲を聴いててめちゃくちゃ気持ちよくなる感覚は!」と思い即ネットで聴き取れた歌詞を調べて何度も繰り返し聴いたりMusic Videoを観た。今思えば人生で初めてというくらいに聴いたヒップホップに衝撃だったんだと思う。

その後も聞くたびに「こんなにストレートに下ネタ言っていいんだ」、「この聴いてて気持ちいいと感じるのは『韻を踏む』というやつなのかー」とかポンポン感想が思い浮かんできた。

この曲はCreepy Nutsの『合法的トビ方ノススメ』というCreepy Nutsを代表する1曲である。

https://www.youtube.com/watch?v=UVaZf3GliDs&list=PLzn67mnGPB5EHJFikwP8ni9_RSlYVkQTB&index=80

この時聴いていたラジオ番組は当時僕がハマっていた乃木坂46のメンバー 橋本奈々未さんのラジオで、よく聴いていたコーナーだった。そしてこの日のテーマはおすすめの曲を紹介する回だった。そのうちの1曲がこの合法的トビ方ノススメ。僕には大きな衝撃でもあったので登下校でよく聴く1曲になる。また他のCreepy Nutsの曲も聴くようになる。

その後も高校生活も楽しく過ごしつつCreepy Nutsさんが新曲を出せばチェックしたり聴いていたりはしていたけどまだLIVEに行く勇気がなかった。


ここで一旦僕が4,5歳の頃まで遡る。この頃から家では親がよく音楽チャンネルを流していた。そのチャンネルはよくいろんなアーティストのMusic Video特集をやっていた。僕もその特集が観るのが好きだった。その時好きだったアーティストはMr.Childrenや柴咲コウさんだった。もちろん今でも好きだしよく聴く。親がよくいろんなアーティストの曲を車で流していたことも記憶にある。

この頃は全く意識していなかったが、この頃の好きだった音楽を聴いたりMusic Videoを観るというのは今の自分に大きく影響していると思う。


他の話になるが小学1年生くらいから家族の記録用のデジタルカメラを借りていろんな写真を撮っていた。風景とかも撮っていたけど物心付いた時から好きだった鉄道がメインだった。いわゆる撮り鉄。その後クリスマスプレゼントなどでコンパクトデジタルカメラ等を買ってもらったり自分でお年玉とか集めて一眼レフを買ったりしていたがだんだんカメラを触ることが少なくなっていった。単純に鉄道にそこまで興味が無くなったんだと思う。

ただ中学の修学旅行や高校の文化祭などの行事ごとで友人を撮る機会が多くなった。人物はあまり撮ったことなかったけど今までと違う楽しさを感じたのを覚えている。写真を撮って友達に送るとよく褒められたけど自分では下手になっていく一方だなと感じていたから正直複雑な気持ちだった。

とりあえずこの時点で写真を独学で10年近くやっていたことになる。


そんなこんなで僕も大学生になった。僕は工学系の大学に進んだ。研究したいものがあったからそこの大学にした。

趣味の方では前から好きだったKing Gnuの井口さんのオールナイトニッポンが始まったので聴き始めた。そこで曜日の違う同じ時間帯にCreepy Nutsの2人もオールナイトニッポンもやっていることを知り聴き始め、この他にオードリーのオールナイトニッポンなどここからたくさん深夜ラジオを聴くようになった。

Creepy Nutsの2人も昔から深夜ラジオを聴いていたとラジオで言っていた。ラジオ限らずだが何故か自分と重ねてしまうことがある。聴いてる側の思い込みと思えばそうかもしれないが、それでも例えばやらかした話やこういうことやっていたという話は聴いていても自分も経験がああったりするのであの時こうしていればよかったのかなとも後悔したりする。

ラジオを聴いてて自分はオードリーの若林さんやCreepy Nutsの松永さんの話でよく「考えること似てるな」、「同じことあったな」とかある。

とにかくラジオをよく聴くようになってから毎週頑張ろうとなれていた。


1年の夏休みから少しMVを作ってみたいと興味があった。なのでその時1番好きだった日向坂46さんや乃木坂46さんのMVを担当された監督さんを中心に、その人が所属する会社を調べてその会社に電話して「アシスタントとして働かせてください」と言い回った。確か50社くらい電話したけど全部断られた。さすがの僕もその時は諦めた。

昔からカメラ(写真)をやっているとさっき書いたが自分もなんとなく写真と動画の世界は全くの別物という認識があった。だからカメラに付いていた動画のボタンが怖くて押せなかった。だから自分でMusic Videoを作ってみようという考えに至らなかったんだと思う。

その後2学期も授業を受け2月に終わり、春休みになった時に同じように電話したが同じように全部断られた。

学年も上がり大学2年生。世間ではコロナウイルスによる影響が大きく僕も大学の授業がオンラインとなった。

最初は友達と電話しながら課題をやったりしてなんとか解けていたが、だんだん勉強についていけなくなり課題も期限に間に合わなくって中間テストもほぼ空欄なんて状態だった。いままで友達に聞いたり先生に質問したりして1年は乗り越えられたがオンラインになってそこが出来なくなりモチベーション的なのも薄れていった。

そしてある日完全にパンクしてベッドから出られなくなった。出たらもう解けない課題しかなかったから。というか勉強というものから逃げた。

今思うとあの時は完全に鬱だったと思う。人間だから何か食べなきゃ死ぬし一応ご飯は買いに行くけどそれ以外は本当に何も手をつけられない。自分でも鬱だなんて疑うしかなかった。今まで生きてきて自分は周りより超おしゃべりだし活発的なタイプなのにそんな奴が引きこもりで鬱?ありえないだろとまで思っていた。

そんな中でも唯一していたこととはネットで数々のMusic Videoを観ることだった。子供のときから当たり前のように観ていたもの。去年に何回も断られてやっぱり諦めていた夢。高1の秋の衝撃。合法的トビ方ノススメのMVを観ていたその時に全てがつながったんだと思う。気がついたら合法的トビ方ノススメのMusic Videoの監督を検索していた。

Creepy NutsのMusic Videoは一部を除き基本クリエイティブチームのN2B+peledonaの3人が協力して監督をしているということがわかった。その内の1人の中嶋監督という方がTwitterをやってらっしゃったのでDMを送った。

自分は将来MV監督になりたいこと、Creepy Nutsが好きなこと、どうやったらMV監督になれるのかとたくさん書いて送った。

そしたらとても丁寧に対応していただきZoomで自分の話も聴いていただき、その後映像作品の作り方や考え方、映画とMVの関係などを数ヶ月に渡り教えていただいた。本当にここで初めて僕がやってみたいことを聞いてもらえて自分でやってみようとなった。

自作のMVやダンスビデオを作ったがとにかく酷いものだった。

その後に5分のショートフィルムをコンペに向けて作ることにした。企画、絵コンテ、役者依頼、スタッフ、ロケ地などいろいろやったがこれは結局上手くいかず白紙となった。原因は時間が足りなかったのが一番。これで一つの作品を作るための準備の大変さを知ることができた。


そんな時Creepy Nutsが8月に『かつて天才だった俺たちへ』をリリースした。

この曲を初めてフルで聴いたのが地下鉄に乗っているときだったが本当に泣きそうだった。

歌詞は生まれた時はみな天才。しかし生きていくうちにみな周りと同じようになっていったりして凡人になっていくわけじゃなくむしろここから人生巻き返していけるだろ?大器晩成でもなんでもここからだ!という感じ。

こんなに下手に要約したら歌詞を書いたR-指定さんに失礼だけど文章力が本当に無いので許していただきたい...


この時期は自分の人生の中でも一番暗く、もうどうしようもない時に聴いたこの曲はこれからの僕を支えてくれるだろう、これから頑張ってみようと思えた。

MVももう最高過ぎるものだった。監督はN2B+peledona。その後このMVはMTVのBest Hip Hop Videoを受賞していた。


自分のことを天才だなんて思ったことは一度もないけど、今まで人生で1番になれたことは少なくそれがコンプレックスでもあった。それでもこれからの人生でなにかに挑戦するならその業界、そのジャンルのNo.1を目指したかった。

だから僕は何年かかってもMusic Video界のトップを目指そうと思った。

そう考えたらネガティヴに考えてる時間なんてないなと即頭に言い聞かせて行動するようになれた。


ほとんど触らなくなったカメラを取り出し撮影してみようとなったのもこの頃だ。

お店のPVやダンスミュージックビデオを下手くそながらも作りもがいてみた。


この間にCreepy Nutsの武道館公演があり僕もチケットが取れたので参加した。高校時代1番仲の良かった友人たちと大好きなCreepy NutsのLive観れてよかった。生で聞いたかつて天才だった俺たちへは本当に感動した。泣きそうだった。


しばらくして12月上旬に編入試験を受けた。緊張して試験や面接の内容は下旬の今でさえあんまり覚えていない。ただ僕が持っている莫大な熱意だけは伝わったかなというのは覚えている。

その後結果が届き、来年から映像を学べる芸術系の大学に編入することになった。嬉しい気持ちもある中「やっとスタートラインに立てたな」という気持ちである。

そんなこんなでやっと落ち着いたので今カフェでパソコンをカタカタして文字に起こしている。


本当に読みにくい文章で読んでいる方々には大変申し訳ないという気持ちだけど、この数年間にあったことは自分にとってとてもとても大きいことだし文章化して残しておきたいと思って書いた。

今日は2020/12/25。合法的トビ方ノススメのMusic Videoが公開されたのが偶然にも2015/12/25。とある1曲、とあるMusic Videoによって1人の人間がこの約5年の月日で大きく変われることができたということをとても強く感じられた。


全然上手くまとめられてないけど僕が言いたいのは本当に曖昧な言葉だけど人生は何が起こるかわからないということ。もし大学を変えようと思わなければ...、もしカメラをやっていなければ...、もしあの日ラジオを聴いていなかったら...

「たられば」なんて言い出すとキリないけど全ては繋がっているということ。きっかけはこれからあるのかもしれないし、もう自分が拾っているのかもしれない。ラップ日本一のR-指定さんのきっかけも子供の頃お店で掛かっていた曲を聴いて衝撃を受けてラップを始めたと言っていた。そこからの日本一なので未来は何が起こるかわからない。

他にそういうことはあるかもしれないがそれらの方々に共通しているのは「その自分がハマったものが大好きで、やる気が周りと桁違い。」と僕は思う。僕も技術じゃまだ初心者レベルかもしれないがやる気なら誰にも負けない。


ここまでいろいろあったが、それまで支えてくれた周りの人に感謝の言葉を伝えたいし恩返しをしていきたい。

親や友達、映像関係の先輩や聴いてきたラジオや音楽、MVも。

数々のアーティストさんのおかげで今の自分がある。そんな偉大なアーティストの方々には本当に感謝の言葉しかない。

特にCreepy Nutsのお2人にはいつか感謝の言葉を直接伝えられたらなと思っている。

すごくおこがましいことだけど自分を支えてくれた、今の自分を作ってくれたアーティストさんへの1番の恩返しの形は、僕なら映像を作ることかもしれない。そんな大きなことは夢のまた夢だしまだまだ先のことだろうけどそれを目標にして映像を勉強したり作ったりしているのでいつか叶えたい。


少し前にMV監督の山田健人さんがTwitterで「未来の小学生の『将来の職業』欄に純粋に『MV監督』と書いてくれる世界にしたい。」とツイートしていた。僕もとても強く共感した。

でも今の世の中で仮に友人などに「有名なMVの監督は?好きなMV監督は?」と聞いてもほとんど返ってこないと思う。それほどまだ世間には認識されていないんだと悲しいけどそう感じてしまう。

「この状況を変えるには...」、「子供の憧れの存在になるには...」。僕はまだ答えがわからないけどいつかは僕自身が答えを導き出して影響与える側になりたい、そうあの日のCreepy Nutsや中嶋さんのように。



長くなったがこれが僕とCreepy Nutsという関係になる。

勝手に重ねた奴の話と言われたらそこまでだけど、僕は本当に奇跡だと思うしCreepy Nutsの曲で人生がいい方向に大きく変わった。変わることができた。


そして今度は自分が誰かのことを変えられるようなMusic Videoの監督になる。

それが自分の1番の夢でもあり1番の恩返しだと思う。