ナイキスト周波数の信号はディジタル化できない
アナログ信号をディジタル信号に変換する場合の理論的裏付けに標本化定理というものがあり、サンプリング周波数の半分に、ナイキスト周波数が定義されている。
ナイキスト周波数は、ナイキスト周波数を超えない範囲の信号ならば、ディジタル化できると、説明されている。
あるいは、ある周波数の信号をディジタル化するのには、その周波数の倍以上のサンプリング周波数が必要だと。
これを受けて、ナイキスト周波数を超えない信号なら、任意の信号がディジタル化でき、再現できると、理解していたが、どうも、そうではなさそうである。
ナイキスト周波数の信号で、ディジタル化でき、再現できるのは、ある特定の場合(Cos波)だけであるように思う。
今回表計算ソフトを用いて、アナログ信号のサンプリングと、64点のFFTをシミュレーションしてみた。
サンプリング周波数64Hzと考えると、周波数分解能(Δf)は1Hzとなる。
ナイキスト周波数で位相を変えたサンプリング波形とFFT結果
以下に示すのは正弦波の位相を変化させてサンプリングした信号波形と、それをFFT演算した結果である。
ナイキスト周波数のSin波をその倍の周波数でサンプリングすると、ゼロの点ばかりをサンプリングしてしまって、信号がないのとまったく同じになってしまう。
90°位相が違うCos波では、ちょうどピークの点がサンプリングできて、FFTの結果も正しく出ていて、正しい情報がサンプリングできたと言える。
その間の位相では、周波数成分こそ拾えているが、レベルは小さなものしか拾えていない。
ナイキスト周波数の正弦波を正しくサンプリングできているのは、Cos波だけである。
Sin波
15°
30°
45°
Cos波
ナイキスト周波数から少し低い周波数では
以下はナイキスト周波数より周波数分解能(Δf)だけ低い正弦波を、同じように位相を変化させてサンプリングした信号波形と、それをFFT演算した結果である。
信号波形はおかしな形となっているが、FFT結果は正しく出ており、波形の情報としては正しくサンプリングできていると考えられる。
すなわち、『アナログ信号のディジタル化は、ナイキスト周波数より少し低い周波数でないと、正しく行えない』と言えるのではないだろうか。