正誤判別問題攻略法【Mission 11】
▼早速,今回の Mission に挑戦しましょう!
=Mission【11】=
▼次の英文の[ ]内から誤りのある箇所を1ヶ所指摘しなさい。
[001] Six thousand kilometers away, Fiona Nakusi is here in London [representing Gumutindo's farmers] and [meeting with] potential clients. She says [she's seen great progress] since the farms [have become] fair trade certified in 2004.(上智大学)
[002] John [traveled] in Hokkaido [only] for a week, when he [received] a telegram [from home].(桜美林大学)
[003] [Entering] the room, I could not help but [wonder] [if] I [have seen] the picture before.(明治学院大学)
▼解答・解説は下にあります。
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=Answer【11】=
▼今回の共通テーマは〈完了形の使い方〉とそれに関連する項目です。
▼以前,【Mission 05】で時制について以下のようにお話ししました。
[1] 過去時制:発話時点より「前」を表す、「今」を含まない時間の枠。「昔そうだったが今は違う」の意味。現在から「遠い」イメージ。
[2] 非過去時制:「今」を含む時間の枠。
① 現在:発話時点と同時であることを表す。
② 未来:発話時点よりも「後」を表す。現在からみた意志・予定・推量・可能性。
▼この「[1]-過去/[2]①-現在/[2]②-未来」の3つ(*正確には「過去/非過去」の2つで,「未来」は便宜上,単純未来「~だろう」を表すwillを用いているかたちを一つの時制とみなしている)の時制に対して,それぞれ以下のような4つの「かたち」が組み合わされます。
[A] 単純形:最もシンプルなかたち。安定したイメージ。非状態動詞(動作動詞)の単純形は「反復される内容」も表す。
[B] 進行形:基準時において「動作が継続している」ことを表す。そこから「(普段とは異なり、一時的に)~している」「ある終着点に向かいつつある」といった意味が派生する。
[C] 完了形:基準時までの経験・完了・結果・状態の継続を表す。
[D] 完了進行形:動作が「過去から継続して、基準時の時点でまだ行われている」ことを表す。
▼この3×4の組み合わせを表にまとめると以下のようになります。
▼たとえば「現在完了形」とは,「現在までの経験・継続・完了・結果」を表し,「過去完了形」とは,「過去の基準となる時点までの経験・継続・完了・結果」を表します。
▼たとえば,「私は東京に住んでいた時,その映画を5回見た」と言いたい場合,"I saw the movie five times when I lived in Tokyo." となり,"I had seen..." とは言いません。"five times" という「回数」が書かれていますが,「東京に住んでいた時までに5回見た」わけではないので,完了形では不適切ということになります。
▼少し長くなりますが,完了形・完了進行形の用法について,例文で詳しくみていきましょう。
[1] 過去時制×完了形
① 状態動詞(*1):基準時(過去)までの状態の継続
ex) I had been in the army for three years when the war ended.〈状態の継続〉
(私は戦争が終わった時点で軍隊に3年間いたことになる。)
② 非状態動詞(動作動詞):基準時(過去)までの結果・完了・経験を表す。
ex) Had you studied a lot before you took the test?〈経験〉
(たくさん勉強してから試験を受けた?)
⇒この場合「完了」とも考えられる。また,before や after のように順番を明確に表わす表現が用いられている場合,“Did you study a lot before you took the test?” のように過去時制単純形が用いられることもある。
② 過去を表す記述の順番が出来事の順番と逆の場合
ex) She noticed that she had left her umbrella in the train.
(彼女は列車に傘を置き忘れたことに気づいた。)
⇒「傘を忘れた」のは「気づいた」時よりも前だが,記述の順番は「気づいた」→「忘れた」となっている。
※この他,仮定法過去完了(過去の事実と切り離された「想い」を述べる)で用いられる。
ex) If you had not helped me then, I might have died.
(もしあのとき助けてくれなかったら死んでいたかもしれない。)
[2] 過去時制×完了進行形
▼過去の基準時において,それまで行われてきた動作がその時点でも継続していたことを表す。
ex) He had been watching TV for an hour when someone knocked at the door.
(彼がテレビを始めて1時間たった時,誰かがドアをノックした。)
⇒ドアをノックした時点で,彼はテレビを見て1時間経過し,その時点でもまだ見続けていたことを表す。
※瞬時的完結動詞の場合,その動作が基準時まで反復されてきたことを示す。
ex) I had been trying to persuade her to come with me.
(彼女に私と一緒に来てくれるよう何度も説得を試みていた。)
[3] 非過去時制(現在)×完了形
▼現在×完了形は「過去を出発点として〈今〉に至る」イメージ。
① 状態動詞:基準時(現在)までの状態の継続
ex) I have been here since last month.
(先月から私はここにいる。)
ex) How long have you known each other?
(お互いに知り合ってどのくらい経ちましたか?)
② 非状態動詞:基準時(現在)までの結果・完了・経験を表す。
ex) The pond has frozen.〈結果〉
(その池は凍ってしまった。)
⇒ その結果,“It is frozen now.”であることを含意している。
ex) I have already seen that movie.〈完了〉
(私はもうその映画を見てしまった。)
ex) I have smoked twenty cigarettes a day for ten years.〈完了・経験〉
(私は10年間,1日に20本,煙草を吸ってきた。)
⇒ “for ten days”のように期間を能わす副詞語句を伴う場合,「反復」の意味になる。
ex) Have you ever seen a panda?〈経験〉
(パンダを見たことがありますか?)
ex) I’ve taught in this university for ten years.〈継続〉
(私は10年間この大学で教えてきた。)
⇒このように非完結的な動作を表す動詞の場合,継続を表すこともある。ただし「現在も継続中」を強調したい場合,“I’ve been teaching in this university for ten years.”と〈現在×完了進行形〉を用いる。また,完結的動詞の場合,「継続」を表すには〈現在×完了進行形〉にする。
cf.) We have been painting this wall since this morning.
(私たちは今朝からずっとこの壁にペンキを塗っている。)
⇒ “We have painted this wall since this morning.” だと動作の「反復」になる(「今朝からずっと,この壁にペンキを塗り終える動作を繰り返してきた」ことになる)。
③ 時・条件を表す副詞節中で未来完了形の代わりに用いる。
ex) I will go out when I have finished homework.
⇒この when ~ homeworkは 副詞節なので,will have finished にはしない。
[4] 非過去時制(現在)×完了進行形
▼過去から基準点(現在)に至るまでの非状態動詞(動作動詞)の「継続」を表す。
ex) I have been looking for my glasses since this morning.
(今朝からずっとメガネを探し続けている。)
ex) I have been living in a hotel so far, but soon I hope to move into an apartment.
(これまではホテル暮らしをしてきたが,もうすぐアパートに引っ越したいと思う。)
⇒これは「一時的」な状況を説明しているが,「恒久的」な状況を示す場合,完了進行形ではなくただの完了形が好まれる。
cf.) I have lived in Tokyo all my life.(私は生涯ずっと,東京で暮らしてきた。)
[5] 非過去時制(未来)×完了形
▼未来の基準時までの状態の継続や、非完結動作の経験・継続・完了を表す。
ex) By eleven o’clock she will have been unconscious for 24 hours.〈状態の継続〉
(11時までで彼女は24時間意識を失ったままであることになる。)
ex) By next April, I will have finished reading the book.〈完了〉
(次の4月までにはその本を読み終えているだろう。)
ex) If I visit Rome next year, I will have been there three times.〈経験〉
(来年ローマに行ったら3回行ったことになる。)
[6] 非過去時制(未来)×完了進行形
▼過去から基準点(未来)に至るまでの非状態動詞の「継続」を表す。
ex) I will have been studying English for six hours by eleven.
(11時までで私は6時間英語を勉強し続けていることになる。)
▼では,問題の解答と解説です。
[001] [have become]⇒[became]
[002] [traveled]⇒[had been traveling]
[003] [have seen]⇒[had seen]
[001] 第2文にある she's seen great progress は現在時制完了形ですが,これは「過去のある一点から始まって,現在に至るまでの経験・継続・完了・結果」を表します。よって,その出発点を表す〈since S + V~=SがV~して以来ずっと〉のVは過去時制単純形にしなければなりません。
訳:6,000km離れて,フィオナ・ナクシはここロンドンにいて,グムティンドの農民を代表し,今後,顧客になる可能性のある人々と会っている。彼女が言うには,2004年にその農場がフェアトレード認証されて以来,彼女は大きな進歩を見てきたということだ。
[002] 過去時制完了形とは,「過去のある一時点を基準として,その時までの経験・継続・完了・結果」を表します。この文では家からの電報を受け取った時点で,北海道滞在が1週間になっていた,ということですから,「電報を受け取ったという過去の一時点までの動作の継続」と考えて,過去時制完了進行形を使います。
訳:ジョンは北海道を旅行して1週間しかたたない時に,家からの電報を受け取った。
(ジョンが家からの電報を受け取った時,彼は北海道を旅行して1週間しかたっていなかった。)
[003] この英文は,主節の動詞が could not help と過去時制になっていて,「過去の出来事」について書かれているとわかります。よって,その時(過去)までの経験を述べていますから,現在時制完了形ではなく過去時制完了形に直さねばなりません。
訳:その部屋に入ると,私はその絵をそれ以前に見たことがあったかどうか疑問に思わざるを得なかった。
=Lesson【11】=
▼完了形を使うべきかどうかは,「その時点までの経験・継続・完了・結果であるかどうか」を考えよう。
【注】
*1:あらかじめ,状態動詞と非状態動詞の区別について理解しておきましょう。これは進行形の用法とも関係します。
[1] 状態動詞
・自分の意思で活動の始まりと終わりを確定できない「状態」を表す。進行形・完了進行形とは相性が悪い。
・状態動詞の進行形は「普段と違って一時的に~な状態である」という意味になる。
ex) The children are being quiet.
(あの子たち、いつになく静かだね。)
cf.) She is resembling her mother.…×
(「彼女は普段と違って一時的に母親に似ている」とは言えない。)
※なお、She has been resembling her mother more and more.(「彼女はお母さんにますます似てきたね」)ということは可能。
[2] 非状態動詞
・自分の意思で活動の始まりと終わりを確定できる「動作」「行為」を表す。進行形・完了進行形にすることができる。
・意味によって,完結動詞と非完結動詞に分類できる。さらに完結動詞は「瞬時的」と「非瞬時的」に分類できる。
①完結動詞:ある活動が「完結する」ことを表す動詞。
(a) 瞬時的:ある活動が一瞬で終わることを表す。
【blink , cough, jump, sneeze, try など】
⇒進行形にした場合「反復」を表す。
ex) They were jumping to the song.
(彼らは歌に合わせて[繰り返し]飛び跳ねていた。)
(b) 非瞬時的:ある活動が「徐々に」終わることを表す。
【arrive, die, drown, go, stop など】
⇒進行形にした場合「~しつつある」の意味を表す。
ex) The dog was dying.(その犬は死にかけていた。)
②非完結動詞:「完結」の意味を含まない動作を表す。
【eat, read, sing, teach, write など】
⇒進行形にした場合「継続」を表す。
ex) He was reading a book.
(彼は本を読んでいる真っ最中だった。)