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They couldn't be more Japanese.

▼今日から新年度ですね。4月1日と言えばエイプリル・フールでもあります(嘘をついてもいいのは午前中だけ,というルールがあるようですが)。そんな今日の夕方,ある速報が飛び込んできて大騒ぎになりました。

布マスク2枚、全戸に配布へ 安倍首相が表明
2020年4月1日 19時04分

 首相は28日の記者会見で「その時々の状況に合わせて考えなければいけない。子供たちの健康、命を預かっており慎重な対応が、特に再開については必要だ」と述べ、専門家会議の見解をもう一度聞いた上で、判断する考えを示していた。 首相はまた政府対策本部の会合で、マスク不足対策の一環として、洗濯して繰り返し使える布マスクを1億枚配る方針を明らかにした。日本郵便のシステムを使い、全国すべての世帯に、1住所当たり2枚を再来週以降、感染者の多い都道府県から順次配るとしている。来週決定する緊急経済対策にその費用を盛り込む。首相は「急激に拡大しているマスク需要に対応する上で極めて有効であると考えている」と述べた。
(太字引用者)

▼いやもう,なんだかこう,「エイプリルフールのネタですか?」としか言いようがない話です。諸外国が「現金支給」「休業分の賃金全額保証」など国民が安心して外出を自粛できるような策を打ち出している中,わが大日本帝国では「1世帯に布マスク2枚」だそうです。これって「空襲に備えて1世帯につき2枚,布製の防空頭巾を支給する」と言われているようなものではないかと。

▼現金支給については,「できない」「遅くなる」「限定的となる」理由をTwitterであれこれ挙げている与党議員はいますが,それをどう打破するかという前向きな具体策はまだ目にしていません。もっとも,「マスクを全ての住所に送る」と首相が宣言した以上,小切手を送付することぐらい朝飯前なのではないか,と思うのですが

▼もちろん,マスク2枚を送るのは何もしないよりはまし,という意見もあるでしょう。しかし,仮にマスク代を入れなくとも,5000万世帯に普通郵便の封書を送ればそれだけで40億円以上もかかるのです(ある程度の割引はされるかもしれませんが)。

▼ただ,今回に始まったことではないのですが,安倍内閣はきわめて「日本的」な内閣なのだなぁ,と思うことがよくあります。あるいは,「日本人」というものの特性をよく知り尽くしていて,それを実に巧みに利用している,と言った方がいいかもしれません(もっとも,私はある特性をとりあげて「日本人的である」と表現する発想があまり好きではないので,これはあくまでも私自身の偏見・私見によるものだと思ってください)。

▼国民にどれほど無理難題を押し付けたり,どれほど不透明で無茶苦茶な金の使い方をしたり,あるいは書類を改ざんしたり,特定の企業に利益誘導を図ったりしても,権力の座にしがみついてさえいればどうにかやり過ごせてしまうということを,彼らはよくわかっているのです。現代の日本では,政権を揺るがすような暴動が起きることもなければ,戦前の5.15事件や2.26事件のように大臣が殺害されることもありませんし,万が一,そんな事態が起きれば取り締まりを強化するだけですから,彼らの思うつぼです。たとえ国民が怒りの声を挙げても,自分たちの身の危険を感じることはありませんから,「下々の愚民どもが何か騒いでいるのぉ」という程度の認識で聞き流しておけば済んでしまいます。実際,これまでにどれほど疑惑を抱かれることをしても,実際に選挙で選ばれてしまったのですから,彼らは「日本人は何をしても無抵抗のサンドバッグ国民だ」と思っているのではないでしょうか。

▼今回の「マスク2枚支給」はまさに,この「何をしても無抵抗のサンドバッグ=日本国民」という性質を熟知したうえでの行動と言えるでしょう。あるいは,それを熟知している側近や官僚たちによる計略なのかもしれません。いずれにせよ,They couldn't be more Japanese.「この上なく日本人」だと思うのです。

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