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「目途」の読み方

▼安倍首相が緊急事態宣言の延長を発表しましたが,その中で,次のような発言がありました。

「ただし,今から10日後の5月14日を『もくと』に,専門家の皆さんに,その時点での状況をあらためて評価をしていただきたいと考えています。」(以下の動画の33秒~)

▼「え?『もくと』って何?」と一瞬頭の中で漢字変換ができなかったのですが,記事には「目途」と書かれていたので,「もしかして,首相が読み間違えたのだろうか…?」と思って調べたところ,次のような記事がありました。

 「めど」派が4分の3と圧倒的でした。「どちらでもよい」という方を含めても「もくと」と読む方は4分の1。当て字とされる方の読み方が支持を得る結果となりました。うすうす感じてはいましたが、やはり「もくと」とは読んでもらえていないようです。
 対して政治家の演説・発言では「もくと」と読んでいることが多い気がします。あてにならない占いみたいな「めど」とは違うぞ、と強調しているわけではないでしょうが。安倍晋三首相も2017年の施政方針演説で、福島の復興に触れ「帰還困難区域でも、復興拠点を設け、5年を目途(もくと)に避難指示解除を目指し……」と述べていました。
 日常で使うのは圧倒的に「めど」が多いでしょうが、「もくと」という読み方もあります。集英社国語辞典3版の「もくと」の項目には「(文章)めあて。目標。めど」とありました。改まった場面で使う文章語ですが、「めど」と同様の意味で用いて問題ないということです。
 対して同辞典で「めど」を引いてみると、漢字は「目処」のみが当てられていました。岩波国語辞典7新版には「『もくと』の『目途』を書くのは当て字」とあります。
 そういったわけで、新聞では「もくと」という読みであれば「目途」の表記でよいのですが、「めど」と読む場合は仮名書きにするというルールがあります。多くの場合「もくと」のような堅苦しい言い方をする必要が無い文脈であるため「めど」に直すのですが、改まった言葉遣いをする政治家の発言などでは「もくと」という発音に従い「目途」と漢字にすることもしばしばです。

▼実際,Twitter でアンケートを取ってみたところ,上の記事と同様の結果が出ています。

▼恥ずかしながら,私自身も「目途」の正式な読み方が「もくと」であり,「めど」と読むのは当て字としての読み方である,ということは知りませんでした。大変失礼ながら,これまで首相は漢字の読み間違いを何度か指摘されていたこともあったため,「もしかして,また読み間違えたのだろうか…?」という思いすらも一瞬,頭に浮かびましたが,結局はこれが正しい読み方だったわけで,私自身,大変勉強になりましたので,備忘を兼ねて記しておきたいと思います。

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