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Do you have a good sense of direction?

「地図は北が上」なのは昔からの常識なのか?

▼地図を見る時,私たちは無意識に「北が上にある」と思いがちですが,2017年度に日本医科大学医学部で出題された英文でこのことについて興味深い話がありましたので紹介します。

▼出典はこちらのBBCの記事でした。

▼この記事によると,北を地図の上の方にする習慣が定着したのは過去数百年のことで,それ以前には地図を作った地域の文化や信仰などが反映されていて,必ずしも北が上にくるような地図ではなかったのことです。

▼北を上に置かなかった理由として,この記事ではロンドンのクイーンメアリー大学の地図歴史家であるジェリー・ブロットン氏の言葉を引用しています。

“North was rarely put at the top for the simple fact that north is where darkness comes from,” he says.  “West is also very unlikely to be put at the top because west is where the sun disappears.”
(「北がめったに上に置かれなかったのは,北が暗闇の生まれる場所であるという単純な事実のためなのです」と彼は言います。「西も上部に置かれる可能性は低いのですが,それは,西は太陽の沈むところだからです。」)

▼逆に,古代の中国では北を上にした地図を作っていましたが,それは北に皇帝が住んでいたためであった,とも述べられています。

But in Chinese maps, the Emperor, who lived in the north of the country was always put at the top of the map, with everyone else, his loyal subjects, looking up towards him.  “In Chinese culture the Emperor looks south because it’s where the winds come from, it’s a good direction. North is not very good but you are in a position of subjection to the emperor, so you look up to him,” says Brotton.
(しかし,中国の地図では,国の北に住んでいた皇帝が常に地図の上に置かれました。そして他の全ての人々,つまり彼の忠実な臣民たちは彼を見上げたのです。「中国の文化では,皇帝は南を向いています。というのも,そちらは風が吹いてくるところ,つまり良い方角だからです。北はあまり良くありませんが,あなたは皇帝に従属する位置にいるので,彼を見上げるのです」とブロットンは言います。)

▼さらに,古代エジプトの地図とキリスト教の地図では東が上に,古代のイスラム文化では南が上に置かれていました。

In ancient Egyptian times the top of the world was east, the position of sunrise. Early Islamic maps favoured south at the top because most of the early Muslim cultures were north of Mecca, so they imagined looking up (south) towards it.  Christian maps from the same era (called Mappa Mundi) put east at the top, towards the Garden of Eden and with Jerusalem in the centre.
(古代エジプトの時代には,世界の上部は東,つまり太陽が昇る位置でした。昔のイスラムの地図は南を上に置くことを好んでいました。それは昔のイスラムの文化のほとんどがメッカの北にあり,彼らはメッカに向かい上(南)を向くことを想像したからです。同じ時代のキリスト教の地図(マッパ・ムンディと呼ばれる)は東を上に置き,エデンの園の方に向かい,エルサレムを中心に置いたのです。)So when did everyone get together and decide that north was the top? It’s tempting to put it down to European explorers like Christopher Columbus and Ferdinand Megellan, who were navigating by the North Star. But Brotton argues that these early explorers didn’t think of the world like that at all. “When Columbus describes the world it is in accordance with east being at the top,” he says. “Columbus says he is going towards paradise, so his mentality is from a medieval mappa mundi.” We’ve got to remember, adds Brotton, that at the time, “no one knows what they are doing and where they are going”.

▼1569年に,フランドル(現ベルギー)出身のゲラルドゥス・メルカトルという地理学者が発表したいわゆる「メルカトル図法」が,北を上にした地図作りの決定的な瞬間だとされています。

Perhaps the choice was simply because the Europeans were doing most of the exploring at the time: in the northern hemisphere, there is far more land to explore and far more people.
(おそらくその選択は,ヨーロッパ人がその時,探検大半を行っていたために過ぎないだろう。北半球にははるかに多くの探検すべき土地があり,はるかに多くの人々がいたということだ。)

◆1569年にメルカトルが発表した地図(Wikipedia より

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Do you have a good sense of direction?

▼ところで,私は方向音痴ではないと思っているのですが,どうしても方向がわからなくなる場所があります。それは名古屋と岡山です。名古屋は仕事で何度も訪れたことがありますし,岡山に至っては既に長年にわたって住み続けているのですが,いまだに頭の中で落ち着いて地図を描かないと方向を見失いそうになるのです。

▼これは,駅の位置が原因です。通常,新幹線は東西に走っているので,東から西に向かう場合,右手が北,左手が南になります。たとえば,下の地図では,東西に延びる福山駅から見て,福山城は北にあります。

▼ところが,名古屋駅と岡山駅は東西方向ではなく,斜めになっている(名古屋駅は北北西ー南南東,岡山駅は北東ー南西)ため,感覚が狂ってしまうのです。

▼たとえば,名古屋駅から栄に向かうのは東に移動しているのですが,日ごろ,福山駅のような東西の位置関係に慣れてしまっているので,私は北に移動しているように錯覚してしまうのです。

▼岡山駅もそうです。岡山駅から見て後楽園は東にありますが,私は南に向かっているような錯覚を覚えるのです。

▼岡山に関しては,さすがに長年住んでいることと,車で移動することが多いのでだいぶ修正されましたが,名古屋に関してはいまだに修正できず,名古屋駅からタクシーに乗って栄に向かう時,頭の中に地図を描き,「自分は今,東に向かっている…東に向かっている…」と言い聞かせることにしています。

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