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【画材】オイルパステルとにじみの追求…
ここ半年ほど画材の事で悩んでたことがありまして…
それは「オイルパステル使用時の滲み」です。
僕以外にこのシチュエーションで悩んでる人は世界中探してもかなり希少かと思いますし、読んで頂いてるほとんどの方にとっても何の益にもらならないとは思うのですが、もしかするといつか誰かのためになるかもしれないので記録として書いておこうと思います。
経緯としては「展示会のために絵を描き、しばらくしたらそこに予期しない油の滲みが出ていた」ことに端を発します。
その展示会では木製パネルにジェッソを塗って下地を作り、その上から背景色としてアクリルガッシュを塗って、その上からオイルパステルやガッシュで絵を描きました。
そうして搬入して、しばらく後に見に行きましたら一つの絵に於いてオイルパステルの描画の周りに油の滲みが出来ていたのです。
この時はこう言った作品を出展していましたが滲みを確認出来たのは青いメリーゴーランドの絵のみでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1738589356-sbgGWSHOBJp1nZk3Fxz0RK5D.jpg?width=1200)
全て販売を兼ねて展示していたのですが、とてもじゃないけど売れたもんじゃないなぁ…😢と落ち込みました。
※滲みがわかる写真がなくてすみません…今も手元にあるのですが手直しして滲みを消したのでした
そしてこの時はそれまでの経験上「この絵だけ滲んでいる」という事にあまりフォーカスせず、近いうちに同じ環境で検証してみようとしか思っていませんでした。
画材(アナログ)初心者ゆえの問題
元々デジタルでずっと絵を描いてきた身分ゆえ、アナログ画材の性質や癖、そして画材同士の相性の解決は、アナログ転向をはっきり決めてから3年ほど経った今もまだまだおぼつきません。
今後もまだまだ研究が必要と認識しています。
なので上記の最初の展示の件も「あぁ、また未知の問題が出てしまった…」という感じで、どこか「いつものこと」という受け止め方をしていました。
この展示で思ったこと、というかこの条件下で学べたことは「アクリルガッシュの上にオイルパステルで描くと油が滲み出てしまう」という事くらいの認識でした。
そして程なくして同じギャラリーさんでもう一度出展しました。
その際はポストカードのみの出展です。
この時はこういう作品群でした。
![](https://assets.st-note.com/img/1738589654-D4HnqmoepTRMJjw7BZt1PsIk.jpg?width=1200)
この展示では2つ購入いただいて3つの絵が戻ってきました。
この時ももちろん見に行きまして、現場では特に問題には気づかず帰ってきたのですが、終了して絵が戻って確認したらまた滲みのある作品があったのでした。
それが以下の絵です。
ゾウの周りにうっすら油シミみたいなのがあるのが見えるでしょうか…?
![](https://assets.st-note.com/img/1738589702-x1MSytVcdAsJ5obFLDiNr8O3.jpg?width=1200)
支持体(元となる画材)も違えば色も違う。
どういう事だ?と思いつつも「アクリルガッシュの上にオイルパステルは滲むのだ」ということが立証されたことを改めて理解しました。
この絵も気に入ってたのですが売り物にならない事に残念な気持ちを覚えました。
とは言え落ち込んでても仕方ありませんので次からそういう思いをしないように「どういう条件で発生するのか」をはっきりさせるのが先決です。
検証開始! しかし…
ということでしばらく後に軽く検証を開始しました。
特に色や支持体に拘らず、ヒマしてる紙にガッシュを塗ってその上に濃い目にオイルパステルを塗りつけて待つのみの作業です。
しかし、滲みません。
やはり環境を絞らないととなりました。
紙の方だけに絞る
結果的に木のパネルでの条件は最後まで試していないのですが、2回目の展示で滲んでしまったコットン紙は個人的に主力の紙なので、未来のことを鑑みてひとまずこの紙で滲みを再現しようと思いその紙でいくつかテストを行いました。
くだんの絵はガッシュで塗ったはずなのでガッシュだけの検証でいいかもしれないけど、背景を透明水彩で塗るケースも多いので今後のために透明水彩での検証も兼ね、同じ紙に透明水彩とガッシュを分けて塗り、その上にオイルパステルを塗りつけて数日待ちました。
![](https://assets.st-note.com/img/1738589899-7j0sFqUPCHZ5hAfogl4d8ELM.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1738589913-dVz1Ylhi2pHuSRntIOavoPm9.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1738589920-Pp7ZsAcMg6obwRm34irhtKBH.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1738589920-SKDUOtv51zMNhjwfsb9VHT60.jpg?width=1200)
余った紙で青も試しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1738590171-oGRfunYsm48c9lwEgOBFX0Tv.jpg?width=1200)
しかし、滲みません…
頭をひねるばかりです。
状況的に「たまたま出る」みたいな偶発性の現象とは思えないし、万が一そうであったとしたら作品を作る際にその組み合わせはリスクが高すぎて採用出来ないので今のうちに再現性を追求しないといけません。
でも再現出来ないのです…
残す心当たりは…
何枚やっても滲まないのですが、このお気に入りの外国製の紙はロットによって結構品質が違うのでもしかして紙によるのかもしれない、とまた違うロットの紙で試してみましたがそれでも滲まない。
残すところは展示の際に使ったサイズのポストカード大の紙しか心当たりがありません。
そんなはずはないとは思っていても、ロットが違うのでありえるかもしれない…
1つ1つ要因を潰し続けてきてもうそれしか思い当たるところがないのです。
しかし滲みませんでした…(;´Д`)
八方塞がりでもないけど、もうどうにもアテがない…(涙)。
思い当たる方法は全部試したつもりでした。
紙も変えて絵の具も変えて、それでもオイルパステルは滲まない。
もちろん再現しないのが一番だけど、複数回発生したことがたまたまな訳がないと思うので諦め切れません。
悶々とする中で、ある日寝床で突然1つだけ試していない条件を思い出しました。
下地材の「ジェッソ」です。
そういえば件のゾウさんの絵は紙にジェッソを塗った可能性がある…!と。
今更ながらジェッソとはこういうものです。支持体の質に関わらず絵の具が載りやすいように塗る下地材です。
基本的に白か黒、色をつけるにしても白に混ぜることになるのでパステルになります。
ジェッソとは、絵を描く前にキャンバスや板などの支持体に塗る下地材です。アクリル絵具の下地として使用されることが多く、絵具の定着や発色を助けます。
ジェッソの主な特徴は次のとおりです。白色で乳液状の塗料
チタニウムホワイトや炭酸カルシウムなどの体質顔料を配合している
強い隠蔽力があり、絵具としても使用できる
体質顔料の粒子の大きさによって、地肌の異なる下地を作ることができる
ジェッソは、刷毛やローラーなどで数回重ね塗りします。一度に厚塗りせず、薄く塗り重ねることで、均一できれいな下地ができます。
ジェッソには、基本の白色のほか、有色のカラージェッソもあります。有色下地は、アクリル絵具を混ぜても作ることができます。
そんなわけある‥???
と思いつつも、もうそれしか心当たりがありません。
ゾウさんの絵は塗ったかどうか定かではありませんが塗った可能性は大いにありました。
逆に思いついた時には「いやもうそれだろ!!」と微睡の中少し小躍りもしましたが…(苦笑)。
とはいえジェッソは「下地」として存在している画材であり、個人的なイメージとしては「コンクリート」というか、強固な地盤としての存在でしかなかった画材が、その上に塗られた画材を飛び越えて悪影響を及ぼすとは夢にも思いません。
しかし今はもうそれしか可能性がありません。
起きて急いで複数の条件下で検証しました。
数日後、見事に滲んでくれました(もはや喜んでいる)。
下地のジェッソが滲みの理由だったのです。
![](https://assets.st-note.com/img/1738590588-AVn7xFHm2asG05NQJ3YRtXpO.jpg?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1738590650-8An1KlGFXzyqLxiNMraHgdk6.jpg?width=1200)
そしてガッシュだけの状況ではやはり滲まなかったのでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1738590722-42feUhKiN3knrXYdJMIDxpvj.jpg?width=1200)
しっかり観察すると、下地にジェッソを塗っていない紙でもうっすら油は滲んでいるようにも見えますが、絵を邪魔するほどのことには見えません。
滲んでいたとしても許容範囲です。
しかし下地にジェッソを塗った上にガッシュ、そしてオイルパステルを塗ったものははっきりと油の滲みが観測出来るので作品が台無しになります…😢
これぞ目から鱗…
個人的には全く疑いもしなかった「下地材」が今回の原因だったわけですがとにかく気づけてよかったです…(^_^;)
ジェッソ自体はとてもポピュラーな画材でありアナログ作家さんの多くが使っているものなのですが、それとオイルパステルを組み合わせる人が少ないのでしょうか…?
オイルパステルを常用する自分が少数派という意識が薄かったのも気づきにくかった要因の1つだとも思います。
一番最初に描いた「木製パネルにジェッソを塗ってその上に描く」というのはとある作家さんがやってらっしゃる手法で、ベニヤ一枚でも気軽に描けるのがよくて僕もこの先同じようにやりたいなと思っていたのですが、木材の上に直接描く場合は流石に下地材を塗らないと厳しいのでその場合絵の具だけで描くことになり、オイルパステルは使えないことになります。
また、強度を求めて通常の紙にジェッソを塗っても、同様にオイルパステルは使えません。
2025年のカレンダーも全てこの同じ紙で作成しオイルパステルも多用しましたが、幸いジェッソは使っていませんでしたのでことなきを得ました。
画材は本当に相性が無限大…
僕は生来、何故だか人が悩まないケースでよく壁にぶちあたってしまい、大抵の場合誰も悩んでないシチュエーションなので聞ける人もおらず解決策もない、ということが多かったのですがそれが奏功してか?研究というか原因を潰すという行為が日常の感覚になっています。
こうして書くと今回の経緯は文章が長いだけで(苦笑)大したことはないように見えると思うのですが個人的には大いに勉強になりました。
それ以前にも本当に画材の組み合わせの結果が無限すぎてこの3年ほど何度も心折れてきたのですが(^_^;)それなりに乗り越えてかなり落ち着いた後の今回の件は本当に難儀しました。
とりあえず解決できた事自体はよかったのですが、物理的にどうしてそうなるの???という不思議さは今も解消出来ません。
いつか物理学者さんと仲良くなることでもあったらぜひ聞いてみたいと思います。
物質同士の組み合わせは想像を超えることが多々あるのだなと改めて学びました。
ということで長々と書きましたがここまでお読みいただきありがとうございます。
ほとんどないと思うけど、いつか誰かの一助になればいいなと思います…😅
さ、すっきり問題解消したのでこれから心置きなく絵を描きます!!