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決死の覚悟

息子の障碍には「環境の変化に弱い」という特徴があった。
入寮決定を待っていきなり新しい生活に入ると、本人はパニックになり学校に通うどころではなくなってしまう。入学を目前にして、もう手をこまねいている場合ではない。意を決して、泊まりに行こうと考えた。

寮に押しかけるとはいえ、どの部屋もまだ学生が住んでいて空いている部屋はなさそうだった。それでも居室として使っていない部屋もあると聞いて、泊まり体験をお願いした。

それは、学生たちが共同で使うために設けていた「勉強部屋」。
吉田寮の居室はほとんどが相部屋のため、各棟各階の管理棟に最も近い部屋が勉強部屋としてあてられていた。南寮・中寮の勉強部屋はすでに臨時の居室として使われていて、北寮2階の勉強部屋だけが残されていた。

寮生の了解を取り付けて、体験宿泊前に連れ合いと一緒に掃除に行く。
とても汚い。天井は雨漏りを防ぐ目張りがガムテープで乱雑に張り巡らされていて、まるで独房。蜘蛛の巣が張り、ベランダに出る内開きの戸は、腐って膨れ上がった畳のせいで開かない。
どこから手を付けていいのかわからず、その日は大ざっぱに片付けて引き上げた。

その後、連れ合いが何回か通って、一泊くらいなら何とか泊まれるところまでこぎつけた。
春休みに入ったばかりの週末。私と息子は早い夕飯を済ませ、ふとん一式を積んだ車に乗って泊まりに行った。勉強部屋の扉には、一時的にこの勉強部屋を入寮予定の家族が使用するという内容の貼り紙がしてあった。

朽ちた部屋で迎えた夜は、わびしかった。

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