鼻呼吸の効用
息を吸うのは鼻一択
私が整体の仕事を始めて間もない頃に驚いたのが、「大きく息を吸ってください」と指示した時に背中を反らせ、口をすぼめて吸い込む人が多いということでした。息は鼻で吸うものだという常識は世間の常識ではない、呼吸の深さ以前に呼吸する場所から指導する必要があるということを思い知ったのでした。
普段深い呼吸が出来ていない人にとって、大きく吸うと聞いてこうした吸い方になってしまうのは「星のカービィ」がイメージとして出てくるからなのではないかと、口で吸う人を見てけっこう真剣に考えてしまいます。
たくさんの空気を吸い込めるイメージとして口が思い浮かぶのかもしれませんが、口で吸い込んで良いのはカービィだけです。人間が口で吸うのは鼻が詰まっている時の臨時用です。
吐き方は目的によって使い分ける
吸うのは鼻のみですが、吐く息は鼻と口で使い分けます。
口から吐くと体がゆるみます。ため息も体をゆるめる役割があります。整体の呼吸法の一つ、「邪気吐き」は体の緊張をゆるめるために、大きく口を開けてハァ~っと吐きますね。
しかし常に口から吐いていると体が緩み過ぎて弛緩しますので、体の過緊張をゆるめたい時以外は鼻で吐きます。体はゆるんでいる方が良いというイメージがあるかもしれませんが、ゆるみ過ぎている状態は緊張よりも良くないというのが整体の考え方です。体がゆるみすぎないように、むしろ引き締めるようなイメージで鼻から吸って鼻から吐くのが普段の呼吸の仕方です。
鼻呼吸の効用
・内臓のストレッチ、姿勢の安定
鼻で深く吸うと横隔膜(胸とお腹の中間辺りにあります)が下へ縮み、しっかりと肺が伸び胸郭が動きます。腹横筋は姿勢を維持するための天然のコルセットのような役割を果たす筋肉ですが、横隔膜と腹横筋が動くことで内臓が刺激されて働きが活発になり、また空気がパンパンに入ったタイヤのように腰腹が安定します。「力強く横隔膜を動かす」ための吸い方のコツがあるのですが、言葉にするのが難しいので施術もしくは教室でご紹介します。
・天然のフィルター・加湿機能
鼻毛がほこりをブロックし、ほこりに付着した細菌・ウイルスをブロックします。鼻粘膜もまた細菌・ウイルスを体外に出したり、胃に運び無害化します。冷たく乾いた空気を吸い込んでも鼻の中の毛細血管が加温、加湿し、ウイルスが生存しにくい状態にします。鼻呼吸が定着している人なら、わざと口から吸ってみればそれが喉によろしくない感じ、すぐに荒れてイガイガし、あっという間に発熱しそうな体感があるのではないでしょうか。
マスクを着けると保湿される、なんて言いますが鼻本来の機能が発揮されていれば十分加湿されるし、ほこりだって鼻毛がブロックしてくれるはずです。「マスクで守ってあげる」ことで、鼻本来の機能を低下させないようにしましょう。
鼻の穴が下向きなのには意味があった
鼻呼吸の効用については以前から感じていましたが、人間の鼻の穴が下を向いている意味なんて考えたこともありませんでした。このイラストを見たのはコロナ騒動が始まって以降いつだったか忘れましたが、鼻毛や粘膜の効果だけでなく、鼻の穴を下向きにしておくことで余計なものがダイレクトに入らないようになってるんですね。
イラストの通り、瞬時に落下する飛沫を鼻の中に吸い込むには掃除機なみの吸引力が必要とのことです。
子どもの頃は自然と出来ていたはずの深い呼吸を取り戻しましょう。