米国は二面性の強まり+αへ
先週の米国株市場は債務上限交渉に左右される展開でした。交渉難航との報道で株価が下落し、交渉進展とのニュースで反発と振らされました。
先行きの経済に関しては、米国債2Y-10Yの逆イールド、景気先行指数、貸出態度調査、など景気後退を示唆するものが散見されるのに対して、足元の経済動向が堅調さを維持していることから市場参加者の景気への懸念は後退しています。加えて、米企業の決算発表も警戒していたほど悪くなかったことから、相場には楽観的ムードが漂っています。特に市場予想を大きく上回ったエヌビディアの決算が市場の強気を後押しし、他のAI関連も堅調でした。
このように、今の米国においては、先行きの景気後退懸念が燻り続ける一方で、足元の経済や企業決算は堅調さを維持しているという二面性が存在しています。
なお、米国のインフレが根強いことから、FRB(連邦準備理事会)による追加利上げ観測が高まっており、米債券利回りは上昇。日銀の大規模金融緩和の維持観測もあって、ドル円は昨年11月以来の140円台に上昇しました。
債務上限交渉については、27日にバイデン米大統領と野党・共和党のマッカーシー下院議長が基本合意に達しました。米国債のデフォルト(債務不履行)が回避される見通しとなりましたが、2つ押さえておくポイントがあります。1つは31日の採決で共和党の強硬派が賛成するか、もう1つは合意内容に含まれる歳出抑制が景気にどの程度の影響を与えるかです。
今後に関しては、先行きと足元の二面性がどう解消されるのかに加えて、債務上限問題(+α)がどういう形で最終決着するかにも要注目です(これがタイトルの「米国は二面性の強まり+α」が示すものです)。
現在、ニューヨーク連銀とクリーブランド連銀が算出する景気後退確率はそれぞれ68.2%、79.3%と高水準ですが、マーケットでは今回は違う(This time is different)との見方も結構あります。個人的には景気後退の可能性は高いと見ていますが、先を読むのが難しい環境です。資産形成においてはマーケットに参加しておくことが大切ですので、裁量的投資はやや抑え気味にしながら、積み立てなどの投資を淡々と続けていくのが良さそうです。
先週は日本の株式市場でも大きな動きがあり、日経平均が33年ぶりの高値をつけました。バフェット効果、海外勢の買い、東証のPBR(株価純資産倍率)改善要請、中国リスクによる日本シフト、円安、日銀の大規模金融緩和の継続、などが上昇要因として指摘されています。
日経平均の予想PER(株価収益率)は14倍台に上昇してきましたが、予想EPS(一株あたり利益)に下げ止まりから改善の動きが見られるため、懸念していたほどいびつな感じではありません。今後は、EPSとPERの両方が上昇しながら株価が上がっていく展開もありそうです。
ただし、この上昇が正当化されるような経済や企業の動きとなるか、それが持続的なものになるかはしっかり見ていきたいところでして、その際のポイントは、米国経済、中国経済、為替動向、日銀の超金融緩和政策の持続性、といったものになるでしょう。
日経平均の上昇に関しては、長期で資産形成をしていく私たちにとっては、まさに資産形成プログラムでお話しした「市場に参加していることが大事」という展開と言えます。引き続きこのスタンスで資産形成を進めていくのが良さそうです。
今週の注目は、まず米債務上限の採決の行方です。あとは米ISM(供給管理協会)指数、中国PMI(購買担当者景気指数)、米雇用統計などもしっかり追っていきたいと思います。ちなみにS&P500は中心レンジと考えていた3800-4200の上限まで来ました。今まではここで跳ね返されていましたが、今週は上記のイベントを受けてどう反応するか。こちらにも要注目です。
引き続き楽しく増やす資産形成をしていきましょう〜😊