続・会社員、オールドレンズを買う(沈胴式ズミクロン)
初めてのオールドレンズ購入から、早1ヶ月ほどが経過した。我が家にやってきたのは、70年前に製造されたと思われる“沈胴式のズミクロン”。50mmの単焦点レンズの購入もこれが初めてだったので、今もなお慣れていない部分もある。そんな私ことアラサー会社員の所感を、続きとしてここに記したい。また、このレンズに対して細々と購入した物もある。それらを含めて、沈胴式のズミクロンを検討している何方かの参考になれば幸いだ。
自己責任(リプライズ)
購入前に気にしていたのは《(デジタルカメラの)センサーなどに沈胴部分が干渉する》という最悪な点だ。これについては前回も記しており、現在に至るまで特に問題は発生していない。ただし、この件は何度も書いてきた通りに自己責任となる。次回の私の記事タイトルが『悲報!ライカM11モノクローム入院』だった場合には、そういうことなのでぜひ察していただきたい。センサーへのゴミ侵入は、1度だけブロアーで飛ばした程度で済んでいる。
現状で気になっていることは2つ。1つはかなり“前ピン”の傾向であるということ。ファインダー上ではジャストの位置でシャッターを切っても、ピンは目的よりも前にある(主に遠くを撮影する際)。購入前に店内で撮影もさせていただいたが、空間としてはそこまで広くはないため気が付かなかった。最近はその分を考慮して撮影したり、すべてを諦めてノールックを楽しんだりしている。数メートルの範囲であれば、それなりにピシッと合ってくれる。
味? or 灰汁?
もう1つは、前回の付録に記した逆光時の映り込みだ。どう表現して良いか分からないのだが、逆光環境で絞って撮影をするとレンズ内の羽根のような線(形)が写真に現れてしまう。こちらも店内では気が付かず、太陽光やライブハウスの照明などの強烈な光源ではないと出現しない。しかし、撮影したい写真の範囲にそうした環境が含まれているので、わりと厳しい問題なのだ。おそらく、販売店やその前のメンテナンス会社も見落としているのではないか。
それを知っていて商品概要に記載していないとすると「それはそれであれだなぁ」と感じなくもない。言い換えれば、並品以下を選択するとこうした“見えない難点”が含まれていたりするということだろう。この経験は私にとって大きな財産になった。今後、オールドレンズを購入する際にはより気をつけたいし、ある種「ここまでは許容範囲か」とラインを引くことが出来る。こうした問題点を避けるならば、最低でも並品以上の購入が必須なのかもしれない。
ジェットダイスケさんは“ボンドレンズ”と表現している
50mmのゆくえ(リプライズ)
2024年1月下旬頃に京都を旅した。そこで50mmはやはり私には難しい焦点距離だと実感する。例えば、寺社仏閣の門を撮影したいと思った時に50mmだと端から端まで捉えられないことが多かった。であれば何歩か下がれば良いのだが、混み具合だったり場所の都合上でそうも行かなかったりする。そういう時には、28mmのエルマリートでバッと撮ってザッと去るほうが全てにおいて軽快だった(ミスター長嶋風)。これは撮影スタイルの違いにもよるだろう。
加えて、滞在中に京都では雪が降った。ライカMシステム自体(カメラ本体)が防塵・防滴に対応していない中、レンズ部分を引っ張ったり本体に収納させたりする沈胴の性質はあまりにも恐怖だった。ゆえに、今回の京都での出番はほぼなかったのが実情である。もちろん、広角ばかりを使っていた身としては便利だと思う瞬間もある。スナップでは主題となる箇所が明確になるし、最短撮影距離が1mという渋さだがポートレートっぽく友人を撮影するのにも良い。
追加散財
購入時、レンズキャップとリアキャップは他社製のものが付属していた。他社製というか、もう何にも書かれてはいない黒のプラスティック。別に揃える必要もないのだが、レンズキャップは銀色にしたい。そんな願望からユーエヌというメーカーのメタルレンズキャップを購入した(39mm)。装着した姿は良いのだが、若干緩くてよく外れてしまう。そのため、ライカのロゴを消した以来にマスキングテープを取り出してキャップの内側に貼った。うん、まずまず。
当然、レンズフードは付属していない。沈胴ズミクロンではいくつか選択肢があるようだが、間違いなさそうな“IROOA(イロア)”と呼ばれるタイプにした。とはいえ、本物(マジ)はヴィンテージであり高価なため、LIGHT LENS LABの復刻版を購入。それも中古品だ。そもそもフードは必要なのかと思っている所があるので、私には復刻版で十分だ。レンズともマッチしている気がするし、これはこれで可愛い。ただ、より一層フロントヘビーになってしまった。
これまで
付録《入院》
2024年1月31日、初めて来た新宿区の路地を彷徨う。探しているのはある研究所だ。「これがオールドレンズというものか」と一定の理解をしつつ、もう少しどうにかなるのではないかと思っていた。50mmの単焦点を買い増すつもりもないし、今はこの沈胴ズミクロンを売る気もない。願いは、長くこのレンズを使うこと。そんな希望を抱いて、1本の電話をする。話は素早く進んで、私のレンズは入院した。退院時期はまったく分からない。この続きは、またいつか。