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なすなすお作詞法(2021.10)

作詞法も少し需要があるようなので書いてみます。

歌詞の元ネタを書き溜めておきます

まずは歌詞の元ネタをスマホのメモに残しておきます。何を書き残しておくかと言うと、日々暮らしている中で、心が動いた事、つまり「感動したこと」を書き残しておきます。
私のメモはこんな感じです。

「感動したこと」というと基準が高くなりますが、なんであれ心が動いたらメモを取るようにします。

歌詞の元ネタを眺めて、歌詞にします

メモを書き留めていくと、心の動いたことの一覧ができるので、それを眺めながら、なんで心が動いたかなどを思い出します。
たまに「なんだこれ…」みたいなメモもあるので、それは落選ということで、落選することは気にせずとにかくメモは数とっておきます。
思い出せて、膨らませられそうなものに絞って膨らませていきます。
サビにオチがくるように、A Bメロで状況説明をするような形で歌詞に起こしていきます。(このタイミングでメロが浮かぶ時もあり、それに合わせて文字数などを調整します。)

心が動いたことから歌詞を作っているので、題材は基本的にほぼ「こんなことで心が動いた、すごかったです」になり、そこに尾ひれがつく感じになります。

2番、ラスサビに薄く引き伸ばしていきます

こんな感じで作ると、だいたいA Bメロ、サビでだいたいネタが完結してしまうので、そうなると1コーラスで終わりの曲ができます。
ですが、1コーラスの曲はニコニコなどにあげてもちょっと物足りない感じになりがちなので、これを2番まで無理やり薄めて引き伸ばします。

具体的にはコピペして同じ歌詞を二つ並べて、1番と2番で一部の言葉を変えてみたりします。もともと1番で言いたかったことを近い言葉で追撃できれば大成功です。どうにもうまくいかなくて、話が横道に逸れてしまっても、敢えて遠回りをしてラスサビで一番言いたいことをぶつける形にも出来るのでそれも可です。
こんな感じでパズル的に歌詞を薄く引き伸ばしていきます。

以下の歌詞は上で説明した作り方で作ったものです。(A Bメロを作るタイミングがちょっと後でしたが)

「17歳JKボカロP GarageBandだけで神曲作った」

(高速リスカピアノのやばそうなイントロ)

(ついたてが倒れる)

あーうそですうそです!1ミリも掠ってない!
何も持たない僕らは
どうせすぐに埋もれる運命です!
あーうそですうそです!1ミリも被ってない!
僕が歌うこの曲も
無数にある曲のうちの ただひとつ!

無いもの切り崩しながら生きて
積み重ねてきたもんはない
おぎゃーと生まれパッパラパーに生きて
気がつきゃ歳だけ重ねてる

大した事しちゃいないのに
生きづらくてしょうがねえ
誰も気づいちゃいないのに
必死な顔笑えてきます

あれもこれも手をつけては
半端なままにしてる
何にも築いちゃいないのに
評価(すうじ)だけ気にしてます

あーうそですうそです!1ミリもバズってない!
何も持たない僕らは
どうせすぐに埋もれる運命です!
あーうそですうそです!1ミリもバズってない!
そう例えれば僕らは
無数にある星のうちの ただひとつ!
(いなくなっても気付かないでしょう)
あーうそですうそです!1ミリも残ってない!
何も持たない僕らは
どうせすぐに消えゆく運命です!
あーうそですうそです!1ミリも残ってない!
僕が歌うこの曲も
無数にある曲のうちの ただひとつ!
何も持たない僕らが
輝くにはネタ曲作ること ただひとつ!


もともとは

「17歳JKボカロP GarageBandだけで神曲作った」

(高速リスカピアノのやばそうなイントロ)
(ついたてが倒れる)

あーうそですうそです!

何も持たない僕らが
輝くにはネタ曲作ること ただひとつ!

くらいしかメモがないところから始めたのですが、一度、以下の部分までサビをつくりました。

「17歳JKボカロP GarageBandだけで神曲作った」

(高速リスカピアノのやばそうなイントロ)

(ついたてが倒れる)

あーうそですうそです!1ミリも掠ってない!
何も持たない僕らは
どうせすぐに埋もれる運命です!
あーうそですうそです!1ミリも掠ってない!
何も持たない僕らは
無数にある曲のうちの ただひとつ!

何も持たない僕らが
輝くにはネタ曲作ること ただひとつ!

このタイミングで、「ただひとつ」に、
・ただひとつ(のものでしかない)
・ただひとつ(しかない)
の二つの意味を持たせることができました。
音は変わらないので音としては繰り返しになり印象に残りやすく、意味は異なってストーリーを持たせられているので、ここは会心の出来でした。

そして、これを2番、ラスサビに増殖させて、変更をかけました。

「17歳JKボカロP GarageBandだけで神曲作った」

(高速リスカピアノのやばそうなイントロ)

(ついたてが倒れる)

あーうそですうそです!1ミリも掠ってない!
何も持たない僕らは
どうせすぐに埋もれる運命です!
あーうそですうそです!1ミリも被ってない!
僕が歌うこの曲も
無数にある曲のうちの ただひとつ!

あーうそですうそです!1ミリも掠ってない!
何も持たない僕らは
どうせすぐに埋もれる運命です!
あーうそですうそです!1ミリも被ってない!
何も持たない僕らは
無数にある星のうちの ただひとつ!
(いなくなっても気付かないでしょう)
あーうそですうそです!1ミリもバズってない!
何も持たない僕らは
どうせすぐに消えゆく運命です!
あーうそですうそです!1ミリもバズってない!
僕が歌うこの曲も
無数にある曲のうちの ただひとつ!
何も持たない僕らが
輝くにはネタ曲作ること ただひとつ!

1ミリも掠ってない、被ってないは近い意味に変えて韻を踏みました。
2番を増殖させて、頭を捻って星と対比させた比喩的表現を使って、無数にあって埋もれることを表現することにしました。

「何も持たない僕らは無数のにある曲のうちのただひとつ」だと僕=曲になってしまって、その前の僕と主語が変わってしまっていて日本語的に違和感があるので、「何も持たない僕らは」→「僕が歌うこの曲も」に変えました。(ここはメロディ的にはしっくりきてたのでメロ重視で変えないでいくか悩みました。)

ラスサビは被ってない→バズってないに変えることで、「あーうそですうそです!」が、単にうそと言ってるだけではなく、うそ!?という困惑の意味も持たせることができました。ここも音を変えずに意味は異なる形にできました。

ここまで書たところで、これらの嘆きの背景として、A Bメロに「ボカロPの苦悩、人生の苦悩」みたいなものの状況説明をいれました。その結果が一番上の方で書いた歌詞の完成形です。

ボカロPの苦悩、人生の苦悩の部分は、基本は普段自分が思ったことを書きましたが、あえて「中年だから辛い」ということは明記せず、全年齢的に共感できる文に留めました。以下がその部分です。

無いもの切り崩しながら生きて
積み重ねてきたもんはない
おぎゃーと生まれパッパラパーに生きて
気がつきゃ歳だけ重ねてる

大した事しちゃいないのに
生きづらくてしょうがねえ
誰も気づいちゃいないのに
必死な顔笑えてきます

あれもこれも手をつけては
半端なままにしてる
何にも築いちゃいないのに
評価(すうじ)だけ気にしてます

また、完成形になるにあたり、星の比喩の前に「そう例えれば僕らは」と「ここから比喩的表現ですよ」とわかるようにしました(これはちょっとわかりやすくしすぎかもしれませんが)

薄く引き伸ばすことで脳みそフル回転させる

「薄く引き伸ばす」と書くと水増ししているみたいになりますが、「どうやったらこの詩をフルサイズの曲にできるか」を脳みそフル回転させて考える、と言ったようなイメージです。ネタメモの段階はひらめき重視で、気づいたものを忘れないようにするのがメインですが、ここではあるものをどう料理するかをとにかく考えます。この作業はいわゆる推敲に近い部分があって、何度も歌詞を読んでアラを無くしていくことを繰り返しているような感じになり、歌詞の精度が上がっていきます。

最後に

作曲法にくらべ短めではありますが、まとめるとこんな感じです。
・感動(心が動いたこと)をメモに書き留める
・リストに並べて眺めて歌詞にするものを絞る
・ワンコーラスの歌詞にする
・ワンコーラスをフルコーラスに薄く引き伸ばす

薄く引き伸ばす部分が歌詞を歌詞たらしめている部分かなと思っています。

ここまで、作曲法、作詞法を書いてきたので、あとは編曲編を書きたいですが、あまり深く書ける技術もないので、書いたものを適当にぶっ叩いていただけますと幸いです。

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