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小学校の職業体験で学んだこと
小学校で建設業の職業体験の講師をすることになったのは、建設組合からの依頼がきっかけだった。初めての経験に戸惑いを感じたものの、相手は小学生であり、彼らに職業体験を提供することは重要だと感じ、承諾した。また、教える技術を学んでいたことも影響し、その技術を試したいという思いが決断の後押しとなった。
実際に引き受けてみると、子どもたちに教える経験やマニュアルがなかったため、困惑した。依頼された組合の担当者に目的や重点的に教えるべきことを質問したが、担当者も初めてのことで手探りで授業を設計しなければならなかった。障子を張り替える作業、授業時間は60分で、4人グループを3組受け持つことだけが決まっていた。つまり、20分で障子張りを終えなければならない。通常の作業でも20分以上かかることを考えると、どうすれば良いのか悩みが生じた。
障子の張替えは、既存の障子紙を剥がすことから始まる。この工程が最も手間がかかり、固まった糊を水で戻し、剥がした後は水気を取って乾燥させる必要がある。乾燥後には、障子の組子に糊を塗り、障子紙を貼り付け、最後に余分な周囲の紙を切る作業がある。全てを行うには時間が不足しており、最後の紙を切る作業はカッターを使用するため怪我の危険も伴う。そのため、糊を塗って紙を貼り付ける作業だけにすることにした。
いよいよ体験が始まった。最初にデモンストレーションを行い、基本的な動作や注意点を説明した。しかし、説明が長くなりすぎて体験に移れなくなってしまうことに気付き、すぐに糊を付けさせ、紙を張らせることにした。結果は予想通りで、仕上がりは非常に雑になってしまった。
学習者検証の原則に照らし合わせると、教える側に問題があったことが明らかである。子どもたちは、ほとんど何も教わらないままにいきなり作業を始めさせられたため、全くうまくいかなかった。例えば、リフトで山頂に行って「さあスキーで滑ってごらん」と言うようなものであり、当然上手く滑れるはずもなかった。障子張りも同じことで、しわしわになった紙や、糊がついていない部分がめくりあがるなど、商品とは言えない仕上がりとなった。
最初のグループが終わり、次のグループが来た。今度は既に張った紙を剥がさせることにした。これは順調に進み、「破いてもいいよ」と言うと、子どもたちは楽しんで紙を破いた。しかし、これは作業というよりも遊びになってしまい、挙句には組子を折るという事故に至った。様々な体験をさせたいと思っていたが、全てを実現させることは難しいと痛感した。
この経験を通じて、子どもたちが何を学んだかは明確ではないが、私は教えることの難しさを学んだ。次回は、よりシミュレーションを重ね、時間配分や作業手順を簡素化してマニュアル化することを目指す。また、この体験を通じて子どもたちに学ばせたいことを明確にしておこうと決意した。