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ウイリアムモリスを貼る

今まで、あまりというか仕事の事には触れたことがなかったが、今回初めて仕事の事を書こうと思う。

内装仕上げ業(壁装)

私の仕事は、内装業である。内装業と一言で行っても、そこから更に専門分野に分かれているので、建設業の分類で言うと内装仕上げ業になり、技能士の中の分類で言うと、壁装ということになるのである。(※ちなみに表具もある。)

壁紙の種類

では、壁装とは何かといえば、主に壁紙を貼ることで、業界では壁紙のことをクロスと言う。そのクロスにも種類があって、ほとんどがビニル製壁紙だが、布製や紙製もあり、特殊なモノに珪藻土やセラミックなどもあるのだ。

施行の難易度は、ビニル製が一番融通が利くので張りやすい。なぜかと言うと、壁紙はデンプン糊を壁紙の方に塗布して貼るのだが、モタモタしていると乾いてしまう。しかしビニル製であれば、浸透性が悪いので乾きが遅く、張り付けるまでに余裕があるのだ。

一方で、布製や紙製は、浸透性が良いので乾きも早く、季節の温度によっては、10分程度で乾いてしまう。だからモタモタしていると壁紙がよれてしまったり、最悪の場合シール面とシール面を張り合わせた時のように壁紙が破けることさえある。

紙壁紙

そして、タイトルにもあったウイリアムモリスであるが、この壁紙は紛れもなく紙壁紙であり、しかも輸入品で値段も高い。どれくらい高いかと言うと、10mで¥14000くらいするのだ。しかも日本製よりも幅が狭い60㎝である。(※日本製は幅が90㎝)

日本製のビニル製壁紙の倍以上の値段がするのである。しかも施工難易度も高く、失敗すると元も子も無くなるので、施工する立場になるとできれば敬遠したいところではある。

ところが、お施主様の中には、どうしても貼って欲しいと依頼される方がいらっしゃるので、この施工難易度を理解し、施工費を適正価格でお支払いしていただけることを条件にお受けすることがあるのだ。

それが、今回のトイレに施工したウイリアムモリスの壁紙である。

仕入れは、amazonで値段も知られていて、むしろ壁紙の問屋で仕入れるより安く提供されているので、お客様にはこちらで必要量を計算して、直接仕入れていただいた。そしてトイレに貼る必要量だが、柄のリピート(次に同じ柄が来るまでの寸法)が61㎝もあるために、例えが高さが1.4mだったとしても、61㎝×3で183㎝を使うことになる。しかも1ロール10mしかないので、183㎝×5枚で915㎝使うことになり、残りの85㎝は無駄になってしまうのだ。

今回のトイレの場合は、9枚使用したので、2ロールを使用し材料費だけでも¥30000以上になった。

施行の手順

まず最初にやらなければならないのが、下地の処理である。紙壁紙は特に厚さが薄いので、下地のギャップを拾わないように、パテ処理と言われる下地を平坦にする処理とその後の紙やすり掛けが欠かせない。この作業を怠ると仕上げが非常に悪くなる。

次に、レーザーで墨付けを行い、柄が均等になるように割り付けを行う。これを失敗すると、柄が途中で切れたり、柄が曲がってしまい、平均感覚を失うことさえあるので要注意が必要な作業だ。


そして、いよいよ張り付けるのだが、ここでまた気を付けなければならないポイントがある。それがオープンタイムだ。このオープンタイムとは、壁紙に糊を塗布すると、糊に含まれる水分のせいで紙が繊維の方向に向かって伸びる。この伸びる時間を計算に入れず、早く貼らないと乾いてしまうとばかりに焦って貼ると、後から壁紙が伸びてしまいシワの原因になるのだ。だから糊を塗布したら、時計で最低でも5分程度うませて(待ってから)から素早く張り付けなければならない。

汚れは禁物

また、表面は紙であるために、汚れが表面に付くと取れにくい。無理に取ろうと濡れた手ぬぐいで拭こうものなら、今度は表面のプリントが落ちてしまう。どうしても手で持ち上げ、軽く触れなければいけない程度でも、手にブルーのインクが付いてしまうくらいデリケートな製品なのである。

やりがいのある仕事

このように扱いが難しく、時に手に汗握りながら、時間との勝負になりつつ仕上げたウイリアムモリス。 仕上がってみれば圧巻で美しい。 高額な材料費とは裏腹に、施工費は高くは取れないけれど、職人気質には火を付けて、本当にやりがいのある仕事の一つです。

やっぱりお金じゃないんだよねー、この仕事は。



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