成りたい自分になれる技術(教える技術)

早稲田大学オープンカレッジでの「教える技術」の講座が昨日、終わりました。 この講座を初めて受講したのは、2016年からです。

あれから毎年受講し、今年で5回目です。 そこで、これまでの振り返りを兼ねて、学ぶきっかけ、学んだこと、学んで自分にどのような変化があったのか、書いてみたいと思います。

 

<学ぶきっかけ>


 自己啓発書を読んでいました。例えば、「思考は現実化する」「カエルを食べてしまえ」などです。

これらには具体的な例が物語調に書かれていて、読んでいると確かにワクワクしてくるような感覚になって、「なるほど、こういう風にすれば成功する」と勝手に盛り上がっていたのです。

 しかし、現実には読んでいる時に感じているほど、日常生活の中で実践する機会もなく、刹那的な感情の変化だけで、生活の行動が劇的に変わることは、ほとんどありませんでした。それよりもむしろ、実践しているのにも関わらず成功に近づけない自分を愚かに思い虚しさも感じていたのです。 

そこで、何かが足りない、もしくは、もっと本質的なものは何なのかを突き止めようと、行きついたのが、インストラクショナルデザイン(ID)でした。

なぜIDなのかと言うと、いずれの成功者にもメンターがいて、そのメンターの教えそのものが、もっと分かりやすければ自分にも応用できると考えたのです。 つまり、本を読んで、マニュアル通りに行動しても、変わらないのは教える側に問題があると考えたのです。

科学的に言えば再現可能性がないということは、科学ではなく、それは単なる個人の思想や感想でしかないと言うことでしょう。

 だから大学の教授が科学的な理論で教えてくれる「教え方」にこそ、きっと正解があると思いIDを学びたかったのです。


 <学んだこと> 


教え方には、3つの要素があることです。 

①学習者のニーズ 

②スモールステップの原則 

③即時フィードバックの原則 

< ①学習者のニーズ>

  まず最初は、教える側が熱心に教えたとしても、学習者が何かしらの技能を取得したいと思わなければ、そもそも教わろうという態度になりません。

そこで学習者に学ぶことによって得られるメリットを伝える必要があるわけです。

ですから教える側が学習者のニーズを、あらかじめ知っておく必要がありますし、もし研修のような強制的に教えなければならない時は、学習者に興味や応用が効くような説明をして、学習意欲をひくことが大切です。

< ②スモールステップの原則>

 次に、いよいよ説明に入ります。ここで大切なのは、最初は誰にでもできて分かりやすいことを教えます。

例えば、けん玉などの運動技能であれば、けん玉の持ち方(握り方)からはじまめます。次に玉の位置や体の姿勢の確認をします。

それができたら、はじめは大きなお皿に乗せて、次に小さいお皿に移してと、徐々に難易度を上げて行くのです。

< ③即時フィードバックの原則>

 スモールステップの際に、各段階ごとにできたら、「できたよ」と学習者に知らせることが大切です。学習者はできたことが嬉しいので、フィードバックは学習を促進させる重要な要素です。

こどもの場合は特に、「やったね!」「頑張ったね」と褒められると嬉しくて楽しくなります。

この楽しい体験が意欲につながって、教えなくても自主的に励む原動力にもなります。

 大人の場合はこどもほど単純には行きませんが、できるようになること自体が自分のメリットだと受け止めることができるので、成功体験のフィードバックが、さらに上達するための鍵になるはずです。


 <自分への行動の変化>


 教育工学では、「学習者検証の原理」というのがあります。これは学習者が理解したことで、はじめて教えたことになるという原理です。

ですから、いくら教育者が熱心に教えたとしても、学習者が「よく分からない」「できない」と言えば、教えたことにはならないのです。

 私は、この原理を確認しようと、仮説(目標)を立てて、それを実践しました。それは、何度か受験し落ちた宅建試験の合格をゴールに、教え方の理論を使って、それを自分で試したのです。

 まずは、ニーズを認識するところからです。宅建士になれば、不動産業もできることになり、本業の他に、もう一つの生活の糧を得られることと、合格すれば自信がつくことです。 

次に、スモールステップの原則で簡単な2択問題から徐々に4択問題に切り替え、問題も難しいものへと置き換えて行きました。また即時フィードバックが得られるように、スマホのアプリを使って、すぐに正誤を確認して、間違いはすぐに修正しました。

さらにアプリには正解するとDからSへとクラスがあがり、全国の受講者のランキングも表示されるので学習意欲も高めることができたのです。 結果として、毎日の学習の成果が日々アップデートされて、それが励みとなり、アプリに没頭し、長い時には1日2時間~3時間、練習問題を解き、1年間で、合計1000時間以上学習して、宅建士に合格しました。

 この成功体験が、「やればできる」という自信につながって、今までやっていなかったことに対しての挑戦、もしくは興味につながって、学習面では、文章を書いたり、心理学以外の分野を学習しました。

また娯楽面でも、映画や落語、お芝居や音楽など、幅広く興味の対象が増えて、さまざまなジャンルを体験するようになり、行動変容が起こったのです。 


<教える技術とは>


 こうして経験して思うことは、「教える技術」とは、「なりたい自分に成れる技術」とも言えます。なぜかと言うと、誰しも「ああ成りたい」「こうしたい」という願望や希望はあるはずです。

 しかしながら、「やりたいけど、できない」もしくは「何から、はじめれば良いか分からない」と言って、諦めてしまう人がほとんどではないでしょうか。 そんな時に、「自分にとって何が好きなのか?」「どうすればできるようになるのか?」を良く考えて、好きなことをゴールに、できるようになるために、スモールステップで、を心掛けて、ひたすら実践することが大切です。

更にそれらを継続するためにも、即時フィードバックを、好きな先生から、また友達から励ませられても良いかもしれません。 それが、励みになり、励みが継続と成長への原動力となり、最後には成功へと導くことでしょう。

また成功体験は自信になり、自己効力感も高まり、新しいことへのチャレンジ精神にもつながるはずです。 

このように、教える技術は、教える側の技術でもあり、上手く学ぶ側の技術でもあるのです。 

皆様も、成りたい自分への劣等感を感じたら、是非、教える技術を使って成長して楽しい人生を送ってみてはいかがでしょうか。 


<終わりに>


 この「教える技術」を4年間、公私に渡り、ご教示いただきました、早稲田大学の向後千春先生に心から感謝いたします。

 向後先生の教える姿勢が、とても楽しく、学んでいるこちらも、それに釣られて、いつも笑い声の絶えない楽しい授業でした。 

またどんな質問や答えに対しても、肯定的に捉え、拍手で返す、先生のフィードバックが嬉しく、それが幾度となく受講する動機となっています。

きっと多くのリピーターも、先生のその姿勢に魅かれているのだと思います。 

これからも、向後先生の姿勢を思い出しながら、問題にぶつかった時は、スモールステップと楽しい笑顔で乗り越えたいと思います。

 末尾ながら、向後先生の一層のご活躍を祈念いたしております。

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