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舞台 「ロボット・イン・ザ・ガーデン」 観劇レビュー 2021/01/17

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公演タイトル:「ロボット・イン・ザ・ガーデン」
劇団:劇団四季
劇場:自由劇場
作:デボラ・インストール
台詞・作詞:長田育恵
演出:小山ゆうな
出演:田邊真也、生形理菜、渡邊寛中、鳥原ゆきみ、野原万寿夫、萩原隆匡、相原萌、加藤あゆ美、カイサー タティク、長手慎介、五十嵐春他
公演期間:1/17〜3/21(東京)
個人評価:★★★★★★★★☆☆


高校生時代に観劇した「ライオン・キング」以来の劇団四季の舞台を観劇。今作は、昨年2020年に16年ぶりに劇団四季の新作として、てがみ座の長田育恵さんがイギリス小説の「ロボット・イン・ザ・ガーデン」を日本語向けにミュージカル化した作品。本日2021年1月17日は、劇団四季の新年の開幕日ということで多くの劇団四季ファンで賑わっていた。
率直な感想は、さすがは劇団四季の作品だったという印象、物凄くストーリーとしてもシンプルで要所要所で心を動かされる、そして最後は本当に泣ける感動的な作品だった。それだけではなく舞台美術のクオリティが物凄い、あたり前ですが。主人公であるアンティークロボットのタングのあのデザインも良いのですが、喜怒哀楽の表情が現せたりと作り込みが凄い、そしてあの瞳が舞台照明で光って見えるあたりがなんとなく涙を表しているような気がして、その愛嬌についこちらまで同情を誘われる。
キャストも凄く年齢層幅広くて、若い役者から年取った役者まで多くのキャストが歌って踊っている光景が観られただけで感動してしまう、よくあそこまで年をとっても元気に歌って踊って輝いて、人を感動させることが出来るんだなあと感心した。
離婚、人工知能、今現在の社会テーマとなっている事項が詰め込まれている感じがして、令和時代の劇団四季に出会えた気がした。
東京公演は3月21日まで、万人におすすめしたい傑作。

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↓小説『ロボット・イン・ザ・ガーデン』


【鑑賞動機】

今年は小劇場演劇だけでなく幅広く観劇していこうと思い、最も有名な劇団である劇団四季の舞台を約10年ぶりくらいに観劇。「ロボット・イン・ザ・ガーデン」は、16年ぶりの劇団四季の新作書きおろしという点に加え、動画配信サービスU-NEXTで初めてオンライン上演した作品としても知られており、その点も踏まえて気になっていたので観劇。アンティークロボットやアンドロイドといった人工知能が登場するので、SF好きな私にとっても凄く作品ジャンルとして興味を持っていた。


【ストーリー・内容】(※ネタバレあり)

イギリスのとある町に暮らすベン(田邊真也)は、両親が飛行機事故で亡くなってからも特に自分にはこれといって何か一つ成し遂げた経験がある訳でもなく、落ちぶれた生活をしていた。前向きでしっかり仕事もしている妻のエイミー(鳥原ゆきみ)には、いつも厳しく叱られていた。
そんなある日、ベンは自宅の庭に一台のアンティークロボットがいることを発見する。話しかけると会話が出来るそのロボットの名前はタング(生形理菜、渡邊寛中)というらしく、「オーガスト」という言葉を口にしていた。タングを家の中に入れて世話をしたベンは、タングの中に入っているシリンダー(燃料のようなもの)が十分ではないことに気づく。
そこへエイミーが仕事から帰ってくると、アンティークロボットを世話するベンにドン引き。受け入れられずもう限界と判断したエイミーは、ベンに離婚したいということを切り出し、家出をしてしまう。
家に取り残されたベンは、タングが修理が必要なアンティークロボットだと分かったので、タングの製造元がどこであるかを調べ始める。すると、タングの胴体に「Micron Systems」という文字が刻まれていたので、そこでタングが製造されたのだと推測、ベンとタングはカリフォルニア州のサンフランシスコにある「Micron Systems」を目指して旅をすることを決める。

アメリカに飛行機で到着したベンとタングは、旅先のホテルがラブホテルで壊れたアンドロイドなどを目の当たりにしながらようやく「Micron Systems」へ到着。
「Micron Systems」の研究者であるコーリー(カイサー タティク)にタングを見せるが、コーリーはタングを製造したのは「Micron Systems」ではないこと、タングは試作品でおそらくこの世で一台しか存在しない貴重なロボットであると言う。そして、ロボットに関して詳しい女性研究者がテキサス州のヒューストンにいるから、そこへ行けば何か分かるかもと進言する。
ベンとタングはコーリーのアドバイスを聞いて、自動車でヒューストンへ向かう。ひょんなことからベンとタングは喧嘩してしまい、ベンのタングに対する扱いがアンドロイドに対する暴力行為だと警察に連行されそうになるが、そこへ偶然現れたコーリーの言うリジー(相原萌)が警察を引き止め、ベンとタングをリジーの自宅まで案内する。

リジーもベンと同じように、普段犬型のアンドロイドをまるで人間のように可愛がって愛している研究者で、原子力発電所の事故で人がいなくなって廃れた街で吠えていた犬型アンドロイドを哀れに思って拾ったと説明。ベンもリジーの話に親近感を湧き始め、リジーに対して恋心を抱いていく。
一方、イギリスにいるエイミーもパーティーへ出席しており、外科医のデイブ(長手慎介)に口説かれて心が動いていた。
しかし、まだエイミーに対する気持ちがあったベンはリジーと関係性を持つことはせず、彼女のアドバイスを聞いて日本にいるリジーの同期でありアンドロイドの優れた研究員であるカトウに会いに行くことを決意する。

ここで幕間に入る。

日本にたどり着いたベンとタングは、早速リジーの紹介してくれたカトウ(萩原隆匡)に会う。彼は現在は人工知能開発プロジェクトから降りて、人工知能活用のアドバイザーとして働いていた。カトウはタングを見て、このロボットはボリンジャーという人工知能開発プロジェクトの主任が短時間で試作品として開発したもので、物凄く最先端の技術が詰め込まれている優秀なロボットであることを説明する。しかし、彼はボリンジャーに会いに行くことをおすすめしなかった。このままイギリスに戻ってシリンダーが尽きるまで平和にタングと暮らした方が良いと。なぜなら、ボリンジャーに会いに行ってしまうと、ベンはタングから人間たちを守らなければならないことになってしまうと警告した。
しかし、ベンはカトウの忠告を聞かなかった。どうしてもタングを修理してずっとタングと幸せに暮らしたい。そう思って、パラオにいるボリンジャーの元へ向かうことに決める。

ベンはある時、部屋着のズボンにワインのコルクが入っていることに気がつく。これは思い返せば、姉のブライオニー(加藤あゆ美)に招かれて行ったパーティーで、このコルクをきっかけに当時はブライオニーの友人でしかなかったエイミーと初めて出会ったということを思い出した。ベンはいつも大事に、エイミーと初めて出会った時の思い出の品としてズボンのポケットの中に入れていたのだ。
ベンはイギリスに戻ったら、もう一度エイミーと寄りを戻すことを決意する。

パラオにたどり着いたベンとタングは、アンドロイドを沢山抱えている爺さんがこの近くにいると聞き、タングが太陽光によってヒートアップしてしまったのをアイシングしようと爺さんの元へ足を運ぶ。ところが、その爺さんこそがベンが探し求めていたボリンジャー(野中万寿夫)その人だった。ボリンジャー自身もタングを探すためのアンドロイドを開発中だったと説明した。
ボリンジャーはタングのシリンダーを修理したが、様子がおかしかった。部屋中の扉を全部ロックしてしまい出られないようにしてしまう。彼の目的は、タングに搭載されたチップを新型のアンドロイドに移植して、アンドロイドをアップデートさせたいため。
かつての人工知能プロジェクトでは、アンドロイドに痛みを学習させる実験を行っていた。しかし、アンドロイドがアンドロイドを銃で打つ実験をしているうちに誤作動が発生し、アンドロイド同士が銃で撃ち合いを始めてしまった。それに巻き込まれて研究員も数人犠牲になった。しかし、ボリンジャーは人を殺すというプログラムを得たチップを手に入れてしまった。このチップを使えば人間を征服することも夢ではない。そんな邪悪な野望がボリンジャーの内には存在し、それ故アンドロイドのアップデートを試みていた。
タングはボリンジャーに向かって銃を向けた。しかし、ベンはそれを止めた。人に向かって銃を向けるものではないと。なんとかベンとタングはボリンジャーの元を脱出してイギリスに帰還することが出来た。

ベンはタングに、どんな人間であれ人を殺してはいけないという優しさを教えられ、タングはどんどんベンの教えを受けて人間らしく優しく成長していっていた。
自宅に帰ると、エイミーも自宅に戻ってきた。そしてベンは、離婚は取り消して欲しいと伝える。ワインのコルクを思い出し、このコルクも一緒に旅をしたのだと。これからも家族でいて欲しいと伝える。エイミーもデイブと付き合うことはせず、ベンとの関係を選んだ。
その時、タングはエイミーから2つの心臓の音が聞こえると言う。もう一つの心臓の音は非常に小さいと。エイミーのお腹に赤ちゃんが授かった、そしてそれを教えてくれたタングに感謝をして抱きしめるエイミー。
赤ちゃんも生まれ、今日も平和な毎日を送っているベン、エイミー、そしてタングたちだった。

ストーリーは至ってシンプルだったので理解しやすかった。内容は2001年公開の映画「A.I.」に非常に似ている気がした。アンドロイドが主人に会いに旅をするお話。映画「A.I.」は人間になりたいと願って主人に会いに行くので全く同じような目的ではないが。
そして、台詞一つ一つがなんともハートフルで温かい。こんなに王道な舞台作品は久しぶりに観たかもしれない。本当に、ディズニー映画を思わせるくらい安心して観られる安定感が非常に心地よかった。そして最後のベンとタングの成長ぶりには感動して泣いてしまう。
ちょうどよいタイミングでミュージカルシーンに入るので、子供からお年寄りまでみんなを幸せに出来る素晴らしい作品だった。

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【世界観・演出】(※ネタバレあり)

さすがは劇団四季の舞台、世界観と演出が豪華で魅力が有りすぎて語り尽くせない。その中でも特に目立って素晴らしかった部分を舞台装置、小道具、照明、音響で見ていく。

舞台装置だが、まず印象に残っているのは序盤に登場するアンティークなデザインが施されたアーチのような装置、客入れ時は撮影可能だったのだがそこで既に登場しているあのクオリティにまずは驚いた。
次に日本の秋葉原を表す、カラフルな高層ビルを模したパネル。あれが光り輝いてミュージカルシーンとして舞台を盛り上げる感じはもう素晴らしい。
カリフォルニアのラブホテルのミュージカルの時の舞台装置も好きだった。日本の秋葉原と同じくピンクに黄色に青に赤にカラフルなんだが、ちょっとアンダーグラウンド感というか俗っぽい感じが凄く好きだった。
そして何だかんだイギリスの自宅の舞台装置が凄く落ち着いていて好きだった。アンティークの古時計に、それと対比するかのようなスマートスピーカー。そして、庭にある大きな木、あの木が与える安心感というか穏やかさは凄く舞台全体から感じる温かさを象徴しているかのようだった。

そして小道具ですが、まずはなんといってもタングそのもの。あのタングのデザインも汚れとかぶ格好さがアンティークな印象を醸し出していて良いのだが、あそこまでギミックが備わっていたのかというのが非常に驚き。
まず、タングの喜怒哀楽を表せる表情。瞳が吊り上がったり吊り下がったりすることで表情が変わるタングに、凄く可愛らしさと素晴らしさを感じた。また、瞳に照明が光って終始涙を浮かべているような愛らしい表情になっている箇所が凄くグッとくる。個人的には一番観ていたかった箇所だった。
また、胴体の蓋を開けるとシリンダーが見える仕掛けや、一番驚いたのが両耳を引っ張ると伸びる仕掛けになっている箇所、そして首も。
リジーの家にいた犬型ロボットや、「Micron Systems」にいた四輪で走るロボット、スマートスピーカーなど多彩なアンドロイドたちが、まるで自由に動き回っている世界観も凄く近未来的で素晴らしかった。こんな舞台作品観たことない。

照明も鮮やかでカラフルで素晴らしかった。
特にミュージカルシーンの、例えば秋葉原だったりカリフォルニアホテルのピンクや赤や青の照明たちは本当に豪華な舞台作品らしさを感じられてよかった。
物語後半の、星空が登場するシーンがあったのだが、あそこで客席までスポットが当てられたのは非常に印象に残っている。
それと、一番印象に残ったのは最後の場面でベンとタングがボリンジャーの元を脱出して、お互いが幸せになれた瞬間に朝日が当たるシーンが凄く良かった。明るい未来がやってきたことを象徴する、まさにハッピーエンドの瞬間で凄くほっこりした。

音響に関しては、基本的にミュージカルによる音楽が多かったのだが、一番印象に残ったのは客入れ時に流れていたあの環境音。最初は何の環境音か分からなかったのだが、物語の最後の最後でタングが自分が普段耳にしている音をスマートスピーカーに流すシーンがある(エイミーの心臓の音を聞かせるため)。そこで同じ環境音が流れて、これはタングに聞こえていた音だったんだと察せる。たしかに、客入れ時はタングが階段に腰を下ろして静止しているので、そこで聞こえてきた環境音が客入れ時に流れていると解釈出来る。とても素敵な音だった。

これ以外で個人的に印象に残っている演出は、序盤のミュージカルで街の人々が歌って踊るなかで、鍵どこ?と杖をついたおばあさんが歩くシーン、布越しに馬の影絵が走る演出、そしてタングも影として映し出される演出、カリフォルニアのホテルで、アンドロイドが壊れて腕が取れてしまう演出、ビニール傘を指しながら歌って踊るミュージカル演出(「雨に唄えば」のパクリ?)、その後のベンがタングの体をタオルで吹いてあげる演出、ボリンジャーが行っていた人工知能開発プロジェクトの痛みを与える実験現場の赤い照明演出、他にもあるがとりあえず強烈に印象に残ったのはこのくらい。

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【キャスト・キャラクター】(※ネタバレあり)

この劇団四季の舞台作品を観劇して感じたことは、非常に年齢層の幅が大きい中でキャスト全員が生き生きと楽しそうに歌って踊れるって凄いなと思ったことである。特に、50代くらいの年配の男性女性が元気に活躍しているって小劇場ではなかなかないと思うので、やはりその辺りは流石劇団四季だなと思えたし、年齢を超えて色々な人が一体となって作品作りが出来る点に演劇の魅力はあるなと改めて感じた。
では今作で特に印象に残ったキャストについて見ていく。

まずは主人公のベンを演じた田邊真也さん。この方も50歳近いのですが、本当にそんな年齢とも思えないくらい若々しくて歌も上手いし声が凄く良く通る。
言ってしまったら失礼かもしれないが、ちょっと華奢でたしかに自信とかはなさそうで、体育会系のような筋肉質は全く感じられず、誰にでも優しそうな繊細なおじさんという人物が主人公であるっていうのが、非常に令和時代を代表するような作品らしく、か弱いけどタングのために必死に頑張ろうとする感じが凄く素敵だった。私は分からないが、きっと中年を迎えた方々、若さを失ってあとは年老いていくだけになってしまった人に対して元気を与えてくれる、そんな存在に映るのではなかろうか。人生は無限大だし、いつだって頑張れば報われる、遅いことはないというメッセージ性が伝わってくる、そんな役柄で凄く良かった。

次に、タングをずっと二人三脚で操っていた、生形理菜さんと渡邊寛中さん。なんか、終始凄いなと思って観劇していた。ずっと腰を屈めてタングの背丈くらいになった姿勢で歩き、ずっとタングを操りながら演技している。これは相当な体力と技術がないと勤まらない至難の技だろう。
そして、タングの心境と二人の役者の心境はリンクしていないと勤まらないというのもあるだろう。タングを操るキャストはタングに成りきらないといけない。しかし、身体表現はタングを操ることによってしか表現出来ないという難しさがそこには感じられた。これを熟せるって凄いと思う。
そして、声は生形理菜さんが担当しているのだが、本当に子供っぽくて愛嬌があって好きである。ただただ愛おしいと感じる声だった。

そして、エイミーを演じた鳥原ゆきみさん。劇団四季のキャストってみんな癖があって凄く大きな口を開けてゆっくり喋る傾向がある。その癖が一番強くて最初は慣れない部分もあったが、非常に聞き取りやすいことは間違いないので慣れていくうちに好きになれた。
このエイミーも令和時代を代表するようなバリバリ働く気性の強い女性という設定が良い。男が弱くて女が強いという構造の典型だと思っている。でも最後にタングがお腹に赤ちゃんがいることを教えてくれて仲直り?するあたりがなんとも素敵。最初にあれだけエイミーに傷つけられたタングなはずだったのに、彼女に優しくするっていう所がベン譲りの優しさがあってとても好き。

最後はボリンジャー役の野中万寿夫さん。調べてみたら年齢は60歳で、60歳とは思えないくらいの甲高い歌声に私は感激した。本当に劇団四季のキャストの年齢を感じさせない若くて生き生きした役者たちに度肝を抜かされている。
あの邪悪な感じも、そこまで恐怖を感じさせずにけどしっかりと物語のクライマックスを作っていて好きだった。素晴らしいに尽きる。

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【舞台の考察】(※ネタバレあり)

ここでは、この「ロボット・イン・ザ・ガーデン」という作品の上演そのものについて考察する。

この作品は2020年10月3日に劇団四季の自由劇場で、当劇団の16年ぶりの一般ミュージカル作品の新作書き下ろしとして上演開始となった。原作はイギリスで2015年にデボラ・インストールによって書かれた小説「ロボット・イン・ザ・ガーデン」であり、この小説はベルリン国際映画祭の「映画化したい一冊」にも選ばれている名作である。
この作品について舞台観劇で初めて触れて思ったことは、非常に今の社会や価値観を反映した物語になっているという点である。例えば、主人公ベンという男性は優しく繊細だけどたくましさや自信が感じられない弱い男性、一方で妻のエイミーはバリバリ仕事に行って(たしか弁護士だったはず)稼ぐ強い女性といった所。そして昨今の社会問題としてよく取り上げられている離婚問題も入ってくる。女性が自立して稼げてしまうから男性を頼らずしても生活出来てしまう。そんな現代社会の構造を上手く反映した物語設定になっている。
そして、なんといっても近未来ということで沢山のアンドロイドが登場するあたりは凄く現代っぽさを感じるだろう。スマートスピーカーに関しては既に実用化されているし、いずれアンドロイドが沢山開発されて世の中が人間とアンドロイドで溢れかえるというのは確かにイメージされやすいかもしれない。
しかし、そこで問題となるのがシンギュラリティの話である。当然この物語でもそれに似た事件は起きている。ボリンジャーはアンドロイドに多くを学習させて人間に勝るものを作ろうとした。シンギュラリティを超えるような危険が、人工知能と人間の共存には大きな課題となっている。
このように現代の社会が抱える大きな問題を上手くオブラートに包みながら、子供でも楽しめるようにミュージカル仕立てにしたというのが本作だろう。実に素晴らしい作品だと思った。さすがてがみ座の長田育恵さん。

そして、これは私の個人的なイメージだがおそらく原作の「ロボット・イン・ザ・ガーデン」はスティーブン・スピルバーグ監督によって映画化された「A.I.」という作品の影響を強く受けていると思われる。この2つの作品に共通しているのは、「人工知能」「旅行記」「成長物語」の3軸である。「A.I.」という作品は、感情を持った人工知能が主人公で、自分は人間のように振る舞いたいけど実際はアンドロイドなので食事をすることも出来なかったりする。そこで、人工知能は旅をして自分の主を探しに行く。そして自分を人間にしてもらうようにお願いするという話である。そしてその旅の道中で、アンドロイド狩りみたいなのがありロボットたちが大量虐殺されるディストピアが広がっていたりするのだが、そんな雰囲気がこの「ロボット・イン・ザ・ガーデン」にも感じられた。
確かに主人に会いに行く目的は異なるけど、主人に会いに行くまでに様々な経験をするのでどちらも成長物語という位置づけができる。私が思うに、人工知能と成長物語というのは相性が良いのだろうなと思う。人工知能というのはやはりどこか不完全で、完全にしてあげたい、完全になりたいという気持ちから成長を遂げるというのは自然な発想のように思える。

さらにこの作品は、劇団四季史上初めてオンライン配信された作品でもあって凄く話題になった。現代を扱っている作品であることもあり、非常に初めてのオンライン配信に相応しい作品であるような気がする。
この作品は、日本の演劇史の中でも記憶に残るくらいの重要な作品となるだろう。そんな作品の開幕公演を観劇することが出来て非常に良かった。


【写真引用元】

劇団四季公式Twitter
https://twitter.com/shiki_jp

ステージナタリー
https://natalie.mu/stage/news/402918

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