2019/09/28 舞台「someday」観劇
公演タイトル:「someday」
劇団:オーストラ・マコンドー
劇場:すみだパークスタジオ倉
演出:倉本朋幸
個人評価:★★★★★★★★★☆
【総評】
正直観に行けて良かったと思えた作品。ガラス張りでできた家の中で芝居をする舞台なんて観たことなかったし、色々と初めての体験が出来た作品だった。ある人が映画を観ているようだと言っていたが、言わんとしていることは確かに分かる。だが、この見せ方は普通の芝居でも映画でもなく独特なものに自分は感じた。映画はシーンが切り取られるが、この作品は切り取られているわけではない、だが普通の芝居と違い映画のように観客とキャストの距離がとても遠く感じる。なぜこのような舞台装置にしたかは演出家に聞いてみたいところ。とにかく、自分勝手な気持ちで女性を好きになる男性は良くないと自分に言い聞かせられた舞台だった。
【鑑賞動機】
劇団4ドル50セントのキャストたちがtwitterで絶賛しており、舞台装置や音響照明がとても魅力的と聞いて興味を持ったので鑑賞。オーストラマコンドーという劇団も今回初めて知り初見。演出・作の倉本さんの作品も今回が初鑑賞。
【世界観・演出】
ガラス張りの空間を舞台上に用意し、そこを一軒家として舞台装置が作り込まれた独特な世界観。観客はガラス張りを通して終始芝居を見る形をとるので、2列目席で鑑賞した私でさえキャストとの距離は遠く感じた。BGMは使われていないが、舞台の上手上部の段にギター弾きがおり、彼が舞台中のMを演奏してそれがスピーカーから流れる仕組みになっている。照明もとても綺麗で、水中のシーンや人間関係がめちゃくちゃになった印象づけたいシーンにのみ使用されてとても効果的だった。また、全てがガラス張りの中で芝居をするわけではなく、最後の特に朋ノ介範とあめが別れを告げるシーンはガラス張りの前で演じられとても工夫された演出だと思った。
【内容・ストーリー】
主人公の朋ノ介範は働いておらず恋人の愛に呆れられている中、「あめ」という彼の娘と共に暮らすこととなる。しかし、愛はそのことを知り大騒ぎになり、そこに15年ぶりに再会するあめの母親りなや、朋ノ介範にハリウッド役のオファーが入ったりと大混乱に陥る。主人公と愛の間に身ごもった胎児の流産や、過去りなも流産していたことなど、夫婦や親子の絆とは何か、家族とは何かを描いたヒューマンドラマ。舞台装置は極めてオシャレなのに描いているストーリーは非常に人間臭いちょっと変わった舞台だと思った。
【キャスト・キャラクター】
やはり一番のMVPは女子高校生のあめを演じる河合優実さん、大人の人に冷たくそっけない演技ができるのは思春期の女性だからこそ出来る演技だと思うし、何と言っても印象的な演技は水中の泳ぐシーンと、音楽に合わせて頭を強く振りながら飛び跳ねるシーン。どこか顔が広瀬すずに似ており大物女優に化ける予感もした。それと個人的に好きだったのは悪い芝居にも出演していたやよい役の清水みさとさん。女子大学生くらいの駆け出しの若さを保ち、台本を朗読する姿はとても魅力的で印象に残った。デリヘル嬢2人はエロい、それに尽きる。そして、女をなんだと思っているのみたいな台詞はとても印象に残ったし、ストーリー内でも非常に重要な役割を果たしていた。
【舞台の深み】
この舞台の深みは、現在社会問題となっている家族のあり方について、演劇でしかできない豪華な舞台環境を使って表現することで少し小難しい内容でも広く一般的に受け入れられやすい作品にしている点だと思う。時にはハリウッド役のオファーといったコメディ要素も織り交ぜていて、非常に一般受けを狙いに行った作品だったと思った。
【印象に残ったシーン】
水中のシーンの泳ぐ演技の上手さと音響・照明効果、そして全ての登場人物が大混乱に陥って女性たちが頭を強く振りながら飛び跳ねて踊るシーン。ストーリー自体も飽きさせない作りだが、こういった目を引く演出が凝らされたシーンを所々入れている点は本当に見事。
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