
Photo by
nemui_onakasuita
夜を歩く胎児
生まれてからこんなにも経ったのに、まだ生きている心地がしない。
私の中に眠っている胎児の私がいて、まだ生きたくないと丸まっている気がする。その胎児のために羊水を温かくして、栄養を供給して、陽の光を浴びる。自ら生きている感覚が欠如している。
私は私自身をお腹に抱えた妊婦だと思えば許されるだろうか。すぐに傷つく感情も、感傷も、頼ることも、忘れることも。
今日も街を歩く。みんな自分を生きている。張った胸に生命が燃えている。みんなの背中がどんどん遠ざかっていく。地を浮遊しているのは私だけだろうか。未だに羊水の中にいて、電車に乗るといつも眠ってしまうのは。
私だけであってほしい、と思った。