言の葉に、自分だけの色をつける
「留学」のふた文字にひどく苦しめられていた。
語学学校に通いながら、文章を書く。私の留学生活はこんな感じで進んでいる。インターンやボランティアを考えたことはあったけど、これ以上何かを増やすのは嫌だった。
この生活に不満はない。大好きな語学と文章に時間をさけるし、周りの環境にも恵まれ、おおむね充実した生活を送っている。
けれど。
いちど足を止めると、首をかしげた「留学」のふた文字が私に近寄ってくる。
「それって留学なの?」
SNSでのぞく隣の芝の青さも、そいつの足を加速させた。
交換留学のほうがよかったかな?単位をとれる大学にすべきだった?これで語学が上達しなかったらどうしよう?っていうかどの程度話せたらペラペラ話せることになるの?それは誰の判断なの?そもそもマレーシアでよかったのかな?私このままで大丈夫?留楽ってバカにされてない?いや留楽って言葉こわすぎない?「就活のネタとして話せるようでなきゃね」ってみんな就活のために留学してるの?好きなことしかしてない私は劣等留学生ですか?
そしてぶち当たる。
留学ってなんなんだ?
あれとこれに線を引き、たくさんの「こうあるべき」をのせて、言葉はときに私たちを苦しめる。
男と女、日本と海外、あなたと私。
でもこれって実は、言葉が悪いわけではない。言葉に甘えて思考をとめ、「こうあるべきだ」なんて思い込んでいるのはいつも私たちのほうだ。
「『留学』に苦しめられるのはもうやめよう。」
バンコクから帰ってきた日。電車の窓からそびえたつツインタワーを見ながら、心の中で呟いた。わたしだけの留学でいい。みんなが期待する留学なんて、最初からありもしなかったんだ。
***
何でもかんでも、自分だけの言葉にしてしまえ。私たちが生きる世界は、見えるか見えないかの境界線しか存在しないもの。
いつの間にか大人になっていて、
ひと飛びすれば地球の裏側に行けて、
あなたと私ではなく、「私たち」と言えるように。
言の葉に、自分だけの色をつけていこう。
名前が何だっていうの?バラは別の名前でよぼうと変わらずいい香りがするでしょう? -ロミオとジュリエットー
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