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悪魔に魂を売ってでも他者の書いた推しカプを拝みたかった人間が二年間かけてマーケティング活動に取り組んだ結果 #1

Pixiv作品総数が、活動開始後8ヶ月で10倍になりました!(結果)

↑ヤモリ(@yamori_ko)様のツイートより引用させていただきました。

あらためまして、いりえです。前回の記事、長い前置きであるにも関わらず沢山のご反応をいただきありがとうございました。
前回の記事はこちら↓

さて、ここからは私が「実践」に移したことをまとめて書いていこうと思います。まず第一弾は、「マーケティング理論の実践」編です!
※私はマーケティングを学んだり仕事で用いたりしている人間ではありません。発言は適当なことが多いので、あまり鵜呑みにしないことを強くお勧めいたします。

1-1.AIDMAの法則

「マーケティング」という営みには、理論として体系化されたいくつものフレームワーク(考え方)があり、それらは時代に即してブラッシュアップされています。
そこで、ここではまず「AIDMAの法則」を1つのお手本として、私にとっての目標である「誰かに寂銃を生産してもらう」までの行程を確認しておきましょう。
(ちなみにこれは購買活動が前提となるフレームのようですが、細かいことはあまり気にせず、使えるところだけ拾っていくスタイルでいきます)


簡単にまとめると、まず①「認知・関心」のフェーズがあり、そこから②「欲求・記憶」へと移り、最終的な③「行動(=生産行為)」へと至るという、およそ三つの段階へと分類できるかと思います。
そして、それぞれ次の段階へと移るためには「壁」が存在していると考えられます。

①「認知・関心」への壁
・そもそも「寂銃」というカップリング名や存在を知らないので検索しない
・初見のためカップリング観が掴めず、自分の好みであるか判別がつかない
・検索してもツイート数や作品数がほぼなく、好みのものに辿り着く前に諦めてしまう

② 「欲求・記憶」への壁
・たまたま作品やツイートに出会い、瞬間的には好印象を持つものの、見かけなくなれば忘れてしまう
・「寂銃っていいよね」などツイートしてみても反応が得られず、他のカップリングに移ってしまう
・特に公式から供給があるわけでもないので、妄想のネタに欠けている

③「行動(=生産行為)」への壁
・どれだけの反応があるかわからず、スルーされる不安感から公開に至らない
・同一カップリングでの先行事例の少なさから「正解」がわからず、うまく描き出せない
・そもそも「読み専」「見る専」のため、何をどう生み出してよいのかわからない

このように、ざっくりと既存の枠組みに当て込んでみただけでも、「誰かに推しカプを生産してもらう」ためにはどういったステップを踏んでいくべきなのか、ある程度の整理をすることができました。
個々の「壁」を乗り越えるための施策については今後の記事で触れていくとして、次はまた別のフレームワークを用いてみます。

1-2.STP分析/市場分析

私の大好きな漫画である「SOUL CATCHER(S)」でも、「一番届いて欲しい人に届かない音なんて 意味がない!!!」という名言が残されています。
マーケティングもこれと同じです。「相手(ターゲット)」が明確でないまま闇雲にプレゼンを行っても、単なる徒労に終わってしまい、そこで心が折れてしまう人も多いでしょう。

けれど逆に言えば、「ターゲットさえ誤っていなければ、きっとどこかの誰かに届く」はずなんです。Pixiv性癖タグの広いこと海の如し、Twitterに生息する狂人の多いこと浜辺の砂の如し。オタクは一人いたら百人いると思え。

そういうわけで、特に先ほどの①「認知・関心」フェーズへ至らしめるための「市場分析」を行うことはとても重要であると考えられます。
ここでは、「STP分析」の考え方を用いつつ、寂銃に関心を抱く可能性のある潜在的ニーズを捉えていきましょう。
(以前にも同様の分析を行っていましたが、今回の記事に合わせて色々とブラッシュアップしました)

※前提として、「性自認が男性である人間同士の関係性」を好む層をターゲットとする

これは、「セグメンテーション」と「ターゲティング」を同時に記載した表となります。特に私が狙うべき層が★のついたセグメントで、それ以外にも可能性のありそうなところに色をつけています。

・小説を好んで読む人(私が小説しか書けないので)
・Pixivで小説を読み漁る人(私自身のTwitterでの拡散力が低いので※後述)
・「受け固定」あるいは「何でも読む」というようなスタンスの人
そしてさらに…オタク文化の難しくも面白いところに、ここへ「性癖」バフを加えることができます。
・ソフトめのSM(精神的SM)が好きな人
上記はごく単純に私が好きなだけなのですが、世の中には一定程度「性癖が一致していれば一次でも二次でもよく知らないキャラでもとにかく食べる」という層が存在します。(私もその一人です)
なので、極論としては「同じ性癖の親友(マイブラザー)へ」という訴えかけも可能です。
ただ、この「性癖」に関する話は後の記事で触れる予定なので、ここでは割愛しておきます。

さて、おおむねのターゲット像は見えてきましたが、「寂銃」とは実際にどの程度の人口が見込める市場なのでしょうか。ここでは、私お得意のデータ分析的根拠皆無超適当概算を披露させてください。

1)Twitterで繋がりのある方から読み取る傾向※体感値
入間銃兎推し:9割弱
・神宮寺寂雷推し:2割弱
・左銃(銃左)推し:7割強
・理銃推し:3割弱
・SM愛好家:少数精鋭
→やはり「受け固定」がターゲットとして適当?

2)近接カップリングからの類推(2021/03/25集計)
Pixivの「左銃」作品数:3,632件
・Pixivの「理銃」作品数:4,034件
(Pixivの「寂銃」作品数:101件)
→寂銃と親和性が高いのは理銃より左銃らしい(Twitterでの傾向より)
→左銃単体の小説人気トップ作品の閲覧数は「約30,000」
→複数回の読み直し/瞬間的な閲覧カウントを考慮して1/3としても、市場規模は約1万人?

3)Pixivの寂銃作品数からの類推
・Pixivの「寂銃」人気上位イラスト作品:※寂銃単体のみピックアップ

・Pixivの「寂銃」人気上位小説作品:※寂銃単体のみピックアップ

イラスト閲覧数は約9,000、小説は約3,000
→前述の通り、実際の人口としては1,000~3,000が適当?

4)「寂銃ワンドロ」での実績

→上記の2作品についても、いいね数は1,000~2,000件
※インプレッション数はその5~10倍程度?かと思います
※元からのファンで、寂銃というカップリングそのものよりも作者の方への愛を込めたいいねも相当数含まれているものと推測しています

以上により、「顕在化している寂銃消費人口」は約1,000~3,000であることが把握できました。
まだ出会っていない/これから目覚める人口がそのおよそ1.5~2倍程度いるとすると、潜在顧客を含めた寂銃市場は約5,000人規模であると推測できました。信憑性は低いので、あんまり信用しないでください。

たくさんの仲間が世界には存在するんだ、という希望と安心感を胸に、今度は「人間心理を動かすために何をすればよいか」という観点に移っていきます。

1-3.人間心理の研究

「単純接触効果」という言葉、一度は耳にしたことがあるかと思います。何回も見るものは自然と好きになってしまう、というアレです。
人が何か/誰かを好きになる心理、購買行動へと至る心理などについても、マーケティングの観点から色々な研究が為されています。

こういった心理的法則のうち、特に「寂銃」を広めていくにあたって効果的に使えそうなものをいくつかピックアップして、どことなく意識していくことも、マーケティングに有効であると考えていました。

ザイアンスの法則
何度も見たり聞いたりすると、次第に良い感情が起こるようになってくるという効果。
Pixivへの投稿、Twitterでの呟きを欠かさずに継続することで、とにかく「誰かの目に触れる」機会を多く作っていく。
アンダードッグ効果
立場の弱い人、状況的に不利なのに頑張っている人に同情し、応援したくなるという心理。判官贔屓ともいう。
「寂銃って…初見のカップリングだけどこんなに必死に布教している人がいるの!?」と思わせることも、手法として効果的です。
スノッブ効果
他人が持っているものと同じものは欲しくないという現象。
「寂銃」が現在のところ比較的人口/作品数の少ないカップリングであることを逆手に取り、「レアリティの高さ」を価値としていく方向性もある。
またこれは個人の主観ですが…情報に溢れた現代ではむしろ「これは誰も知らない、私が自分で見つけたもの」というストーリー性が重要になってきているような気もします。
返報性の原理
人は、基本的に良い行いや振る舞いを受けると、それに報いる態度を取るなど、相手に返そうとする傾向にあるという心理法則。
「寂銃」で呟くと必ずいいねが返ってくる、激烈激重感想が返ってくるなどの「報酬」があることによって、寂銃への関心(プライオリティ)を高めてもらうこともできます。
まあそもそも、「他者による推しカプが拝みたい」一心で動いている人間が、いざそれを拝めた瞬間に正気でいられるわけもなく、ただ叫び出しているだけではあるのですが…。
バンドワゴン効果
多くの人がやっているから/人気があるからという理由で選択する人間の心理現象。
直近であまり大規模にこれが起きるとは思っていないのですが…誰かが「寂銃っていいよね」と発言することで、「乗っかりやすい」状況を作ることは重要であると考えています。

あんまりこういうことを狙ってやっているというと、人間として信頼してもらえなくなる気がするので、今まであまり言ったことはありませんでした。
ただ、ここでこの記事タイトル「悪魔に魂を売ってでも…」の伏線を回収すると、要するに、こういうことなんです。

悪魔に魂を売ってでも、可能な手段のすべてを使い果たしてでも、私は「他者から生まれ落ちた寂銃」が拝みたかったんです。

ここまでで、私が「理論を学び、実践に移した」ことはほぼすべてとなります。最後に少しだけ蛇足を書いたので、よろしければもう少しだけお付き合いください。

1-4.「不合理なオタク」

マーケティングや経済の理論の中では、人間というのは「不合理」な生き物であるという前提が了承されています。
・流行に左右されて好きでもない色の服を買う
・テレビで見た店だからといって行列に並ぶ
・スペックをよく確かめずに家電を買う
などなど…。身に覚えがたくさんあります。

ただ、マーケティング理論の中では、そうした不合理性すらも一定の法則として把握されているようですが、哲学専攻であった私からすると、「そもそも“私”という存在すらわからないのに、人間の行動や心理が完全に把握できるわけもない」のです。
何が言いたいかというと、上記で述べてきた「マーケティング理論の実践」は、(私がど素人であるという前提を抜きにしても)完璧には通用しないんです。

また、ここで一つ大事な前提条件に立ち返ると、私たちは一般消費者の理屈ではなく、「オタクの理屈」で動いていることが多いんです。そしてその最たる特徴のひとつは、「隠れたがる」ということなのではないかと感じています。

実際この2年間、自分ではおおむねの市場が見えているつもりだったのに、別カップリングでゴリゴリに活動されている方との出会いがあったり、まったく想定していない層の方からお声掛けいただいたりと、「えっ!!??今までどちらにいらっしゃったんですか!!!????」と叫び出したことが何度もあります。
そうした層を炙り出したくて(お友達になりたいし、マーケティング活動の参考にもしたい)アンケートを取ってみたこともあります。

あとついでに、これは反省というかもうどうしようもないのですが、私は根本的に「数字を読む」ことが苦手です。なので、Twitterのインプレッション数やPixivの閲覧数の推移、自分の本の捌け方など、実は全然数字として把握していません。
マーケターとして致命的なような気もするのですが、私の最終目標は「数字が増えること」ではなく「ひとつでも多くの寂銃を拝むこと」なので、まあ駄目じゃないよね…と思っています。

まとめ

というわけで…理論は理論として実践に移しつつ、予測不能な部分もあることを理解しながらマーケティング活動を進めていくことが重要であるというのが、この2年間での大きな学びでした。

また、私が結局のところ嬉しいのは「他者との交わり」「他者による寂銃」なので、あまりガチガチに理詰めで追いかけるのも性に合わないな~と感じています。(ここまで書いておいて…?というかんじですが)

次回以降の記事では、
・Twitterを運用するうえで気を付けていたこと
・Pixivの活用/作品を書き続けるために
・同人誌即売会サークル参加に向けて
など、さらに実践/実体験に迫った内容を掲載する予定です!

引き続き、面白がっていただけたら嬉しいです。


今回の記事の参考文献

Next→Twitter運用について――絶対に使わないワード、「解釈ツイート」の巧拙、いかにしてRT後に歓喜の叫び声を上げるかなど……2021年3月下旬公開予定!

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