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地域に根ざす自動走行ロボットの挑戦 vol.2【パナソニックホールディングス株式会社 東島 勝義】

「ロボットと共に歩む地域社会づくり研究会」では、人とロボットが共生し、地域課題の解決に向けた取り組みについてフォーカスしています。
初回のインタビューとして、パナソニックホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)でRaaS事業戦略担当部長 (兼)X-Area事業推進プロジェクトCEOを務める東島様にインタビューしました。
vol.2では、「ロボットを実際の地域で運用するためのポイント」についてお話いただきました。

<プロフィール>

■パナソニックホールディングス株式会社 
モビリティ事業戦略室 RaaS事業戦略担当部長 
(兼)X-Area事業推進プロジェクトCEO 東島 勝義 氏
1992年に松下電器産業株式会社(現パナソニック ホールディングス)入社。半導体開発部門にて、動画像コーデックLSIの開発に従事しFOMA初のテレビ電話を実現。2011年より、本社R&D部門にて、スマート家電・スマートハウス開発戦略企画、AI研究・開発戦略企画を経て、車載向けAIセンシング技術開発などを担当。2017年4月より現職。AIを活用したモビリティソリューションの開発を担当。
一般社団法人ロボットデリバリー協会理事も務める。

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リアルワールドにロボットを運用するための重要なポイント

―「ハコボ」が地域に根差すために最も重要視したことは何でしょうか?
 
「ハコボ」を地域で運用するにあたり、私たちが最も大切にしたのは、住民にどう受け入れてもらうか、という点でした。これまでロボットは工場などの限られた環境で使われることが多く、そこでのルールは明確に決まっています。しかし、街中での運用では、住民の理解と協力が不可欠です。単に「ここでやります」と説明するだけではなく、いかにして「ハコボ」を街の一員として受け入れてもらうかに重点を置きました。地域の住民にとって、「ハコボ」がただの外部からの技術ではなく、「自分たちのロボット」と感じてもらうために、工夫を重ねてきました。
 
初めは公道を走行する自動配送ロボットでしたが、より身近に感じて頂けるよう住民の皆様から名前を募集し、「ハコボ」と名付けて頂きました。その後、「ハコボ」の似顔絵を募集したり、イベントを開催したりして、住民と直接的に交流を図りました。特に子どもたちからは大変な人気を得て、運用当初は子どもたちに囲まれてロボットが動けなくなる場面も度々ありました。こうしたアプローチにより、ハコボは少しずつ地域に受け入れられていきました。
 
また、子どもたちだけでなく、その親御さんや地域の家庭に役立つサービスを提供することも重要視しました。地域のお店の商品を配達するサービスを開始し、「ハコボ」を単なる技術ではなく、生活を支える存在として根付かせていきました。そのために、フレンドリーさを意識し、ハコボの表情や発話、デザインも工夫しました。デザインは画一的ではなく、色なども地域に合わせて変更しています。
 

街中を走るハコボ

ロボットの運用における現実とのギャップ

―「ハコボ」の用途として、当初の想定と実際の運用を通してどのような変化がありましたか?
 
「ハコボ」の開発当初、主に想定していた用途は“ラストワンマイルの配送”(※)でした。近年、このラストワンマイルの課題や重要性が広く認識されていたこともあり、私たちもそれを念頭に置いてプロジェクトをスタートさせました。しかし、さまざまな試算を行うと、配送だけでは事業として継続していくことは難しいという仮説があり、当初からこのプロジェクトでは、自動配送ロボットは複数の役割を担う必要があると考えていました。
 
具体的には、配送しながら地域の見回りを行ったり、街中で何かを告知するなど、単一の機能に留まらず、多用途に活用できるような構想を描いていました。このように、「ハコボ」が地域に貢献できるためには、地域ごとのニーズや課題に応じた解決策を探ることが重要だと認識しました。プロジェクトの初期段階ではシーズからのアプローチが強かったものの、実際には地域ごとのニーズをしっかり把握し、それに応じて対応できることが重要だと考えています。
(※)ラストワンマイル配送:物品が物流の最終拠点から消費者に届くまでの物流サービス

カプセルトイや移動販売で使われる「ハコボ」

取材・編集:ロボットと共に歩む地域社会づくり研究会


今回は、ロボットを実際の地域で運用するためのポイントについてお話を伺いました。
次回は、「自動走行ロボットの活用範囲と今後の展開」についてお話を伺います。vol.03"は11/8(金)公開予定です。お楽しみにしてください。



研究会のご案内

矢野経済研究所では、将来、人とロボットの共生社会を見据え、地域に根差した課題解決を目指す「ロボットと共に歩む地域社会づくり研究会」(以下、本研究会)を立ち上げ、本研究会に参加するメンバーの募集を行っています。
本研究会では、今回のような実際に地域課題への取り組みを行う事業者様、自治体様の取り組みをインタビューを通して情報発信していきます。
また、地域課題に対してロボット技術を活用する新しいソリューションを共に探求する企業、個人の方々と共にオフライン・オンラインの情報交流会・アイデア発想会の開催も実施する予定です。

お問い合わせ先

  • 研究会事務局までお気軽にお問合せください。企業の方、個人の方、学生の方など問わずどなたでも歓迎しております。

  • e-mail:yri.robotcommunity@yano.co.jp


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