【初回にして全滅…】10万円複勝転がし
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【やっぱり落ちこぼれ】からお読みください。
血統調査員のYRAです。
「血統表は競走馬の設計図!」ということで。
今週から新連載スタート!
応援よろしくです。
YRAという組織には様々な部署が存在する。
その中で最も有名な部署といえば、JRA対策本部である。
このJRA対策本部こそがYRAの2/3以上の売上を叩き出す、いわば花形部署だ。
当然この部署には組織内で精鋭と呼ばれる諭吉たちが集まっており、組織内でのヒエラルキーは相当に高い。
現在、このJRA対策本部には106名のメンバーが在籍しており(いや、今は107名だったか。)、毎週のようにJRAから新たな仲間をこのYRAに連れてきている。
このYRAに所属するほとんどの諭吉が通称「諭吉隊」と呼ばれるこの部署にあこがれ、「いつかは自分も」と日夜鍛錬に励んでいるのである。
しかし。
私のように年老いた諭吉ともなれば、自分の能力なんて嫌というほど、とっくに理解している。
齢30を過ぎれば自分が周りと比べてどの程度の諭吉なのかわかるし、40を過ぎてくれば組織での立ち位置がどこにあるのかもはっきり見えてしまう。
50を過ぎた私なんぞはとっくに自分の天井がわかっている。
今さら若い諭吉達と共に鍛錬に励み、上を目指そうという気など全くもってないのだ。
そんな私をみて人は「情けない」と思うだろうか。
でもそれが現実なのだから仕方がない。
現在「諭吉強化チーム」と名付けられたこの部署で私は、一応リーダーを任されている。
「一応」と言ったのはそれが名ばかりだからである。
リーダーと言っても、することはまるでない。
朝、机に座ると他のチームメンバーと会話することも許されず、定時になったらサッサと帰宅する。
日中は皆、本を読んだり、ネットサーフィンをしているだけで、それを私はただ眺めているだけ。
たまに他の部署から人手がいるような雑務を頼まれることもあるが、それも月に一度あるかないか。
そう、「強化チーム」なんてそれっぽい名前をつけられてはいるが、ここは言わば追い出し部屋なのだ。
どんな組織にも光があれば影もある。
私たちはこの組織の中でのお荷物的存在。
この「諭吉強化チーム」には現在、私を含めて10名のメンバーが在籍している。
昨日まで11名だったのだが、1名辞めた。
こうして残り9名が辞めるのを見届けた後、私もお払い箱になるというわけだ。
/
島田リーダー!
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いつも静まり返っている、室内で久しぶりに私の名前が呼ばれた。
声の主はこの部署とまるで縁がないはずの諭吉隊所属の大友諭吉だった。
島田諭吉 どうかしましたか、大友さん。
大友諭吉 どうかしましたか。じゃないよ。
トイレの電気がきれてるんだよ。なんとかしてよ島田リーダー。
島田諭吉 あぁ。
でもそれはこちらに言われても・・・
大友諭吉 なんだよ。
どうせ他にやることないんでしょ。
島田諭吉 い、いえ。そんなわけでは。
大友諭吉 だいたい誰のおかげでまだこの組織に居られると思ってるの?
諭吉隊の俺がやれって言ってるんだから黙ってやれば良いんだよ。
島田諭吉 わかりました。
後で替えておきますよ。
大友諭吉 後?
今やりなよ。今。
そうやって何でも後回しにするからお前らはこんなことになってるんだよ。
島田諭吉 申し訳ございません。
すぐやりますので。
大友諭吉 頼んだよ。
こっちは日々、JRAと戦って大変な思いしてるんだからさ。
あーあ。こんなグズな奴らと同じ組織だと思うと泣けてくるわ。
それじゃ。
そう言い放つと大友は出て行った。
小杉諭吉 ほんとムカつくな。
あいつ、僕と同期なんですよ。
島田リーダーの方が役職も年齢も上なのに。
そう呟いたのはこのチームで一番若い25歳の小杉諭吉だ。
島田諭吉 仕方ないさ。
彼は「諭吉隊様」だからな。
悪いけど小杉君、トイレの電球みてきてくれるか?
小杉諭吉 ちぇっ。わかりましたよ。
島田諭吉 それに他のみんなも。ついでに建物中のトイレの電球をチェックしておこう。
岡本君と片山君と林田君は1階に。
三船君と宮口君と加東君は2階を。
高堂君と土屋君は小杉君と一緒に諭吉隊の部署付近のトイレを取り替えてきてくれ。
メンバー全員 わかりました。
(私だって
そりゃあね、悔しいさ。
だけど仕方ないだろう。)
一人になり、そう呟いたところで、急にまた一人の諭吉がやってきた。
総務諭吉だ。
総務諭吉 ちょっと、島田リーダー。
困りますよ。
島田諭吉 何かありましたか?
総務諭吉 おたくのメンバーが各階で勝手に電球を交換しているんです。
島田諭吉 あぁ。
先ほど、諭吉隊の方から頼まれたもので。
総務諭吉 困りますよ。それはこちらの仕事ですから。
あなた方は他にやることがあるでしょう。
島田諭吉 そう言われましても・・・
総務諭吉 早くメンバー全員に次の就職先を見つけさせて下さいよ。
いつまでもここにいられると困るんです。
島田諭吉 しかし、なかなか簡単には・・・
総務諭吉 それがあなたの仕事でしょう!
総務諭吉がそう怒鳴った時、メンバー全員がちょうど戻ってきた。
岡本諭吉 大きな声が聞こえましたが、何かあったんですか?
島田諭吉 なんでもない。
総務諭吉 ちょうど良いところに皆さん戻ってきましたね。
私からハッキリ言ってあげましょう。
島田諭吉 総務さんやめて下さい。
総務諭吉 島田さん、あなたが頼りないからでしょう。
皆さんいつになったら次の就職先が決まるんですか?
時間はたくさん与えているはずですよ。
いつまでもいられると迷惑なんです。
岡本諭吉 わ・私たちだって遊んでいるわけではありません。
毎日探してはいるんですけどなかなか良いところが無くて・・・
総務諭吉 良いところ?
そんな良い就職先があなた方にあるわけがないでしょう。
あなた方はこの組織の中で結果を出すことが出来なかった。
それどころか組織に迷惑をかけた者までいる。
だからあなた方はここにいるんです。
自覚しなさい。
島田諭吉 総務さん、もうわかりましたから。
三船諭吉 じゃああんたが何に貢献したって言うんだよ。
総務諭吉 は?
三船諭吉 さっきから黙って聞いてりゃ偉そうに。
俺たちだって機会に恵まれなかっただけでチャンスがあれば結果を出すことができる!
総務諭吉 私の話を聞いていなかったのですか?
あなた方は結果を出すことが出来なかったからここにいるんです。
三船諭吉 ・・・。
総務諭吉 でもまぁ、そうですね。
そんなに自信があるならやってみますか。
島田諭吉 え・・・?
総務諭吉 ここにいる10名全員でJRAと戦ってきて下さい。
三船諭吉 俺たちがJRAと?
良いのかよ・・・
総務諭吉 但し!
条件は10連勝です。このメンバーで10連勝できたらあなた方を認めましょう。
島田諭吉 総務さんそれはあまりにも・・・。
総務諭吉 やらないなら今すぐ辞めて下さい。
三船諭吉 ・・・やってやるよ!
必ず10連勝してやる!
そうすれば少しはこの組織への貢献になるじゃねぇか。
やろうぜ、リーダー。
島田諭吉 で、でも。
小杉諭吉 僕もやりますよ。
生意気な同期を見返してやりたいですから。
岡本諭吉 どの道このままここにいてもいつか辞めさせられるだけ。
やるしかないでしょう、島田リーダー。
島田諭吉 わかりました。
仲間を増やしながら10連勝してみせます。
総務さん、その代わり達成したら、ここにいる全員に謝って下さい!
総務諭吉 いいですよ。そんなことが本当にできたら組織への貢献も相当なものです。
土下座でもなんでもしましょう。
まぁ無能なあなた方にできるわけはありませんが。
そう言い残し、総務諭吉は部屋を出ていった。
中山3レース
⑧ショウナンカホウ 横山武
2021.4.2 post
4月3日土曜日の夜です。
ついに新企画スタート!
・・・だったのですが、まさかの第一話にして最終話?w
やはり落ちこぼれ達は這い上がることなどできないのか。
苦し紛れの想定外の結末をどうぞお楽しみあれ。
【やっぱり落ちこぼれ】
島田諭吉 総務に啖呵を切ったのは良いとして具体的にはどうしようか。
三船諭吉 もともとケンカを売っちまったのは俺だ。
俺に戦わせてくれ、島田リーダー。
(三船諭吉はかつて諭吉隊にいた。そう、もともと彼はエリートだったのだ。
年齢と共に諭吉隊で第一線を張ることがきつくなってきた頃に、組織から彼には後進を育てる道が用意されたのだが、彼はそれを良しとしなかった。
まだまだ第一線で戦える。若い奴らなんかに負けるかというプライドが強かったのだ。
組織は彼の意を酌み現役続行を許可したが、やはり衰えてなお活躍できるほどこの世界は甘くはなかった。
とうとう彼は結果を出すことができなくなり、ここへやってくることとなったのだ。)
島田諭吉 わかりました。まずは三船さん、あなたにお任せしましょう。
小杉諭吉 ちょっと待ってくださいよ!
三船さんは諭吉隊で結果が出せなくなってここへ来た人だ。
そんな人が今更指揮を執って結果なんて出せないでしょう。
三船諭吉 なんだと!
ガキは黙ってろ。
小杉諭吉 事実でしょう?
それにこの戦いはここにいる全員で戦わないといけない。
負けたら即終了なんですよ。言いたいことは言わせてもらいます。
島田諭吉 小杉くん、気持ちは分かった。
だが、それでもここは三船さんに任せたいと私は思う。
小杉諭吉 どうして・・・
島田諭吉 総務さんとの約束はここにいる全員で10連勝することだ。
つまり、ここにいる全員が代わる代わる指揮を執り、勝っていかないといけない。
もちろん君が指揮を執る日も必ず来る。
だからまず大事な初戦は経験豊富な三船さんに任せたいと思っているんだ。
わかってくれるね?
小杉諭吉 まぁ、最終的にはリーダーが決めることですから。
島田諭吉 ありがとう。
みんなも理解して欲しい。
そして必ずそれぞれに今後指揮を執ってもらうことになる。
だからこそこのチームは一丸となって頑張っていこう!
チーム全員 ・・・。
(室内には重たい空気が流れている。
それもそうだ。ここにいる者はみな、一度組織から×をつけられた諭吉達の集まり。
そう簡単に一枚岩になどなれるはずもない。
だが、それでもこのメンバーで戦っていかねばならない。)
島田諭吉 それでは改めて。
今週は三船さんよろしくお願いします。
三船諭吉 あぁ。任せてくれ。
初戦はきっちり俺が皆を勝たせてやる!
中山3レース
⑧ショウナンカホウ 横山武
三船諭吉 (小杉が言うことはわかる。)
三船諭吉 (そりゃ、こんなピークを過ぎた諭吉になんか任せられねぇよな。)
三船諭吉 (でもな。
俺だってかつてはあの諭吉隊で特攻隊長を任されたこともある諭吉だぜ。)
三船諭吉 (衰えたとは言え、まず1つ勝つことくらいは造作もない。)
三船諭吉 あれ・・・。
三船諭吉 うわぁぁぁあああぁ。
メンバー全員 ぐわぁぁぁあああー
やはり私たちは落ちこぼれだった。
こんな諭吉たちで10連勝もするなど夢のまた夢だったのだ。
そもそもそんな芸当ができるならここにいる誰もこんなところにはいないだろう。
仕方ない。
仕方ない、か。
いつからこの言葉が口癖になっていたのだろう。
・・・悔しいなぁ。
終
総務諭吉 はっはっはっはっは
あのゴミ共、あっさりここから出て行ってくれました。
しかしまさか、最初のレースであっさり負けるとは。
実にダメ諭吉らしい結果ではありませんか。
これであの「ゴミチーム」全員を辞めさせるという私の業務は終わりですね。
最初からこうやっとけば良かったですね~
ね?大友さん?
大友諭吉 ・・・。
総務諭吉 さ、仕事も終わりましたし飲みにでもいきましょう!
大友諭吉 ちょっと行ってくる。
総務諭吉 え?どちらへ?
大友諭吉 諭吉隊の俺が行くところと言ったら1つしかないだろ。
総務諭吉 あ、あなたまさか・・・!
中山11レース ダービー卿CT(G3)
②ボンセルヴィーソ 木幡巧
島田諭吉 結局私たちはこの組織にいらない人間だ。
そのことがよくわかった。あとはひっそりとここで死を待とう。
大友諭吉 おい。
てめぇら何あっさり負けてやがんだ。やっぱりだせぇな。
小杉諭吉 え?お前まさか俺たちを助けに来てくれたのか?
大友諭吉 は?
何勘違いしてやがんだ。なぜ諭吉隊の俺がお前らみたいなクズを助けないといけないんだ。
三船諭吉 ではなんでここにいるんだ。
大友諭吉 俺は諭吉隊だと言っただろ。
諭吉を増やせるチャンスがあるなら戦う。
諭吉隊として当たり前のことだ。
大友諭吉 勝てるレースにお前らがたまたまいた。
それだけのことだ。勘違いすんじゃねぇ。
島田諭吉 大友さん・・・。
それでも。
ありがとう、ありがとう。
大友諭吉 しけた面してんじゃねぇよ。
負け犬ども。
悔しかったら来週に備えろ。
もう次はこんな「たまたま」起こらねぇぞ。
三船諭吉 やはりあいつは諭吉隊にいるだけのことはある。
くそ生意気だが、俺たち全員を救出した上に、2名の諭吉までも諭吉隊に連れて帰りやがった。
小杉諭吉 悔しいなぁ。
あいつほんとに同期なのか。あいつが諭吉隊にいる理由が少しわかった気がします。
島田諭吉 みんな。
救われた命だ。一度死んだ命。
儲けたと思って今度こそ頑張ってみないか?
クズにはクズの戦い方もあるはずだ。
今度こそ勝って総務を見返してやろうじゃないか!
岡村諭吉 そうですね。
これでやらなきゃ諭吉じゃないです。
小杉諭吉 僕も。
もう一度諭吉隊を目指したいって改めて思いました。
落ちこぼれ達のどうしようもない空気の中に少しだけ。
ほんの少しだけだが、今確かに少しの熱気が吹き抜けた。
負けたら終わりの一発勝負と言っておきながら、情けない限りだがせっかく繋がった命。
来週からもう一度だけ仕切り直しをさせて欲しい。
よろしくお願いします。
2021.4.3 島田諭吉
現在、
諭吉強化メンバー <0勝>
2021.4.3 post
いつもご支援ありがとうです! おかげで今日もわしのつまみが一品増えます。 乾杯🍻