技術分野と29条・36条の傾向
先日、審査官ラボさんが発表した一発特許査定率のグラフを見た。
一発特許査定は少数派だ。つまり審査請求された出願のうちの大半は、何かしらの拒絶理由が通知される。
拒絶理由と一言でいっても様々あるが、どういったものが打たれているのだろうか? 例えば新規性・進歩性か、記載要件かで、拒絶理由の性格も違えば受けたときの対応も違う。ここでは、29条系と36条系の拒絶理由の通知率を調べてみた。
対象は2015年1月1日以降の出願に対する、最初の拒絶理由通知とした。調査日は2022年11月下旬の某日である。調査日より後に出された拒絶理由通知をカバーできていないことはご容赦願う。
29条系とは29条柱書、同1項、同2項、29条の2である。調査手段の都合で、発明該当性も入ってしまった。「新規性・進歩性か、記載要件か」と言いつつ調べたのが「29条系」となっているのはこのせいである。
36条系とは36条4項1号、36条6項1号、同2号である。
まず、全体を見ると78%が29条系、46%が36条系を含む。ご感想はどうだろうか。私の感想は「ほうほう」といったところだ。
これで終わるのは少々寂しい。
次に、筆頭のIPCセクションごとの割合を見てみた。
ほうほうほう。
目立つのがC(化学;冶金)である。29条系では、他が70台後半~80台後半%のところ、一つ70%を下回る勢い。36条系では、逆に他が50%未満にとどまる中一つだけ60%を上回った。
なぜだろうか? ここからは想像である。
C(化学;冶金)の36条系のうち、多いのはサポート要件違反だろうか? (個別に調べれば一発でわかることだがこれも調査手段の関係というやつである。)化学分野の明細書といえば素材や構造のオプションの列挙が凄まじい。機電系など他の分野でも列挙するが凄まじさが違うと感じる。また実施例がほぼ必ずある。しかも構成の条件を振りながら10も20もあったりする。これは、サポート要件を満たすための武装であり、裏を返せばそれだけサポート要件違反の指摘を受けやすい環境なのではあるまいか。
29条系の方はどうだろうか。化学系は構造を化学式、元素名、物質名などでカッチリ規定するものが多く、新規性の判断は明確な気がする。違うとなれば進歩性、つまりそう違えることが容易想到かどうかが問題になる。当然ケースバイケースであるが、阻害要因や異質顕著な効果は化学系で見られやすい気はする。
次に目立つのはA(生活必需品)か。29条系、36条系ともに全体より割合が低い。なぜだろうか?
冬休みに考えてみるのも面白いかもしれない。
各自の答えを八女までお知らせいただけたら幸いである。
(八女)