嘘つき
注意:LGBTQネタが苦手な方は見ないことをおすすめします。
今日も1つ嘘をついた。
というか多分社会生活を送るようになってから毎日何かしら嘘をついて生きている。
何か誘われれば嘘の予定を言って断るし、今どこにいるのかと聞かれても適当に繕う。趣味もあえて深くまでは説明しない。週末の予定も誤魔化すし、好きな番組やユーチューブの動画もわりとよくその辺の人気なやつを言ったりもする。
そんな日常を送っているが罪悪感を感じたことは多分ない。いつの間にか自然に嘘をつくことを習得して、今に至るまでずっと息を吐くように嘘をつき続けている。
嘘つきは泥棒の始まりとよく言うけれど、こんな嘘に塗れた自分は世紀の大快盗も素足で逃げ出す最低な人間なのではないだろうか。
半分くらい冗談ではあるが、多分クローゼットの人間は往々にしてそんな生活をしていると思う。
飲み会で聞かれる結婚しないのかと言う言葉を躱すため偽りの恋人を捏造し、友達からの誘いもマッチングアプリで出会った人とデートと被っていると適当に別の言い訳を探して断る。たまにオネエタレントの話を出されたときには一緒になって笑うし、結婚しないことを怪しまれて「もしかしてそっちなんじゃないの?」と言われた日には全力でLGBTQの存在ごと否定する。
器用な人は色んな人にそれぞれの嘘を語る事ができると思うが自分の場合は瞬間的に嘘をつくと辻褄が合わなくなるため、以下のような嘘の設定を作り上げている。
最近の設定は、
・大学時代の同級生と付き合っていたが、最近になって結婚間近で振られ婚活に勤しむ三十路男。
・タイプは有村架純
・好きなユーチューブチャンネルは写真のハウツー系、あまりお笑い系は見ない
・趣味は写真。
・最近は婚活のためにダイエットでジムに通っている。
・ミュージカル映画をよく見る。
・読書はわりと純文学が多めetc.
いかにもその辺にいそうな純朴そうなアラサー男子のプロフィールである。
実像としては
・結婚は諦めている。
・最近振られてマッチングアプリで出会いを日々求めてる
・好きなタイプは西島秀俊。
・ユーチューブはゲイ当事者の動画が多い
・趣味は写真だったが、最近はマッチングアプリで知り合った人と食事や飲みに行くのがほぼ趣味と化している。美味しいお店巡りが楽しい。
・ゲイ界隈でモテるためにダイエット兼筋トレのために運動に勤しんでいる。
・好きな映画はミュージカルだが、話題のクイア映画を見ては自己投影をすることが多い。
・読書は純文学を読まなくもないが、どっちかと言うとBL漫画が多いetc.
書き出してみると思ったよりも広範囲で嘘をついてたことに気づいた。そんな嘘で固められたもう一人の自分が常にいて、その虚像をひたすらに演じているのである。
辛いかと問われると、それが当たり前なのでよくわからないと答えると思う。
ただ存在が嘘っぽくならないためにノンケ(異性愛者)向けのサービスのリサーチをして話を合わせられるようにする。辻褄を合わせてるために嘘をつく時は細心の注意を払ってもいるし、酔っ払っていても嘘をつけるように常に心のバリアは張っている状態を保っている。
これだけやっていれば、多分無意識のうちに摩耗というか疲弊はしている気がするのも頷ける。
ならカミングアウトすればいいのではと言うかもしれないが、直接的な脅威としての差別が少ない日本であっても日々感じるマイクロアグレッションから家族や職場で偏見が0であるなんてことはありえないし、アウティングなんてされた日には立ち直ることもできないだろう。そんなリスクなんて犯したくない。
また何より自分が一番ゲイであることに後ろめたさを感じているのでバレてはいけないという脅迫観念が常に頭の中にあったりする。そんな自分はおそらく死ぬまでカミングアウトはできないと思っている。
とはいえ昨今ニュースなどで、半数以上が同性婚賛成という統計が出ていたりLGBTQに対して寛容になりつつあるという記事をよく見たり、結婚の自由をすべての人に訴訟も違憲・違憲状態判決が相次いでいることもあり社会全体が変わりつつあるのかなと思ったりもしている。
いつか完全にLGBTQが存在していいとされる社会になって、いつかLGBTQであることすらカミングアウトすることすらナンセンスになれば、その時には自分の古い価値観に基づく後ろめたさも日々嘘をつく意味も消える気がしている。
そんな日を夢見ながら、明日も嘘をつく。
プライド月間なので少し根暗なお気持ち表明をしました。