丸山 着物でDJパフォーマンスをされたり、パリコレのオーディトリアムでも着物を纏まとったり。ユリアさんのスタイリッシュな姿をいつも楽しく拝見しております。着物に惹かれるようになったきっかけを教えてください。
ユリア ルーツは、祖母や母にあります。祖母は石川県で美容室を経営し、婚礼の着付けや花嫁さんの髪結いを手がけていました。その薫陶を受けた母は、ファッションのスタイリストを経て現在は着付け講師をしています。幼少期から着物に触れながらも、海外のカルチャーに憧れ、20代の初めは洋服の世界に身を置いていました。
丸山 ファッション業界で流行を追いかけていたのですね。
ユリア 個人的には好きなものが変わらなかったので、移り変わりの激しいファッションの世界に、次第に違和感を持つようになりました。それに対して、着物は形も定型で、文様も千年以上前のものが現代まで受け継がれています。海外での活動が増えるに従い、日本を客観的に見つめるように。自国の文化を学びたい気持ちが高まり、20代後半に京都芸術大学に入学して、明治時代の日本文学を学びました。そこから、グッと着物への興味が深まりました。丸山さんが、着物に惹かれた理由は何でしょう。
丸山 私の母や祖母の時代は、着物が日常。やはり20代の後半に、親戚中の着物簞笥が私の手元に集まった際、大正時代に新聞記者をしていた女傑とも言える祖母の姉の泥大島に釘付けに。今でも新鮮に感じられるほど、その柄行きのモダンさに魅了されました。祖母の姉から祖母へ、そこから母を経
て私へ。4代にもわたって受け継がれるなんて、洋服では考えられません。そのときに「着物って面白い!」と感じ、すっかり引き込まれてしまいました。
ユリア 明治・大正時代の着物はハイカラな柄行きが多いですよね。私も明治文学の流れから、アンティーク着物に心酔。色と色がせめぎ合う独特の配色や、車やバレリーナといった意表を突く西洋のモチーフ使いなど。エネルギッシュな文明開化の息吹が、着物をキャンバスとして、遊び心たっぷりに
描かれている表現力に圧倒されました。
丸山 その時代は、建築業界も同じことが言えます。〝擬洋風"と呼ばれ、見た目は洋館なのに、スケールやディテールに日本の職人ならではの繊細な細工や手技が用いられていました。違和感を持つけれど、それが妙に可愛らしく心惹かれます……。
ユリア 江戸の人が西洋のいいところを見よう見まねでつくった感があります。頑張ったけど、どこか変という感覚ですよね(笑)。
丸山 そうです、そうです(笑)。
ユリア 洋をベースに和の要素を秘めているケースもあれば、その逆もある。時代がドラスティックに変わる文明開化のミックス感は、現代にも通じるものがあると共感を覚えます。