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特別


わたしの職場はホワイトなので
会議がない日はみんな17時に退勤する

そんななかわたしはひとり残業をする

他に誰もいない空間でお菓子を食べながら
明日の自分が少しでも楽を出来るように
仕事を片付ける時間が少しだけ好きだ

1時間ほど残業をして
この日はいつもとは違う時間の電車、バスに乗った

たった1時間ではいつもと変わらず
仕事帰りの疲れた人間たちが
箱のなかに敷き詰められていた

最寄駅から自宅付近まで、バスに揺られながら
青春について考えていた

突然頭のなかに
少女漫画のキラキラ男子が浮かんできた

彼は主人公の女子のことを
名前ではなく名字で呼んでいた

そういえばこの歳になると
名字呼び捨てで呼ばれる機会なんてほとんどないなあ

わたしの職場はホワイトなので(大事)
上司も部下のことを呼び捨てにしないし
高校大学時代の友人は名前かあだなで呼んでくれるし
転校の多い子供だったので
中学以前の友人は
SNSでかろうじて繋がっているくらいで
会ったり話したりすることはないし

昔は名前で呼ばれることが特別だったのに
今では名字で呼ばれることの方が特別になっている

戻りたくても戻れない過去に
青春は当たり前のように存在していた

そんなことに気が付いて
少しだけ悲しい気持ちになった

それでもやっぱり
好きなひとに名字ではなく
名前で呼ばれることは嬉しいし
仕事や友人関係で落ち込んでいても
名前を呼ばれるだけで元気になる

だからわたしは過去の思い出にとらわれず
未来の青春に期待して
今の生活を大切にしていこうと思った

わたしの職場はホワイトなので(圧)
今年もひとりで残業、頑張ろう

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